●SUMMER VACATION 〜SOUL〜 1●
ハタチの時――ずっと好きだった進藤に告白した
「好きなんだ」
ポカンとした彼の顔。
突然なに?て顔。
しばらく間が開いた後に、クスっと笑われた。
「冗談だろ?」
「え……」
「ごめん、オレ忙しいんだ。これから彼女とデートだし」
僕の告白を軽く流して、彼はそのまま碁会所を後にした―――
「はは……冗談?冗談……」
涙が止まらなかった。
悔しかった。
悲しかった。
ふざけるな。
僕は冗談で人に好き嫌いを言える人間じゃない。
僕は本気だよ?
本気でキミが好きなんだ。
分かった。
キミがそういう態度を取るのなら、僕にだって考えがある。
さっきの言葉、絶対に後悔させてやる―――
「楽しかったよな〜」
帰国後翌日―――向こうで撮りまくった写真を早速現像してきた進藤は、見返しながらあーだこーだ思い出を語っていた。
「お。これすっげー上手く撮れてる」
「どれ?」
覗き込むと、それは僕の頬にキスしてる彼との自分撮り写真だった。
不意打ちだったから笑ったままの僕の顔。
まるで彼にキスされて喜んでるみたいで恥ずかしかった。
(いや、実際嬉しかったんだけど)
「お。次はもっと最高だな♪」
次の写真はなんと僕と進藤のキスシーン。
こんな写真を現像したカメラ屋さんに見られたのかと思うと、もう穴があったら入りたかった。
「今度和谷や伊角さんに自慢しよっと♪」
「やめてくれ…恥ずかしい」
「やだ。オマエとの婚前旅行の思い出を見せびらかしたいもん」
「旅行じゃない、僕は仕事だ」
「気持ちの問題だろ?」
「……」
あれは婚前旅行だと言い張る彼に、プロポーズされたのはほんの数日前。
半分逃避、半分復讐の為にCAに転職した僕は、このロンドンのフライトで進藤に再会した。
僕の告白を冗談で片付けたことを、何度も謝られた。
ついでに告白されて…プロポーズまでされた。
もちろん今でもずっと彼のことが好きな僕が、それを拒むことは出来なかったけど……
本当に?
本当に僕のことが好きなのか?
と、今でも進藤の気持ちを疑ってしまう。
自信が持てない。
「塔矢〜次のフライトって韓国だった?」
「え?ああ…よく知ってるね。明後日の午後便でソウルの仁川だけど…」
「ふーん…ソウルね。ふーん」
ニヤッと笑った彼は、何やら携帯をいじりだした。
まさかとは思うけど………
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