●SLAVE U 6●






翌朝――目が覚めると進藤の腕の中だった。


僕を抱きしめたまま、まだ眠っている彼。

寝顔…すごく可愛い、と僕はうっとりと眺めてしまっていた。



「…
……」

「…あ、起きた?」

「………塔矢?」

「おはよう」

「………」


ボーッと僕を見つめてくる。


しばらくすると思い出したかのように

「あ、そっか。オレ塔矢の奴隷になったんだった…」

と言ってきた。

だから、奴隷じゃなくて彼氏だから。



「体…だる。まだ起きたくない…」

「でももう10時だよ?」

「マジで?やば…昼から和谷んとこの研究会があるのに…」

「サボっちゃえば?僕ともっと打とう」

「…オマエなぁ」


大きな溜め息をつかれた。


「ダメ?」

「……分かったよ。和谷にはメールしておく」

「本当?!」


嬉しくて目を輝かせた僕を見て、進藤がまた溜め息をついた。


「何だかなぁ…」

「なに?」

「別にー。何かオマエにいいように操られる気がして、ちょっとブルーになってるだけ」

「別に僕は操ってなんか…」

「でもオレが反発したら『会長に』って脅す気だろ?あーあ、オレの人生これからお先真っ暗だぜ」

「……」



起き上がった進藤は「シャワー借りるな」と言って、一人お風呂場に向かってしまった。

僕も起きて身支度する。

あと…洗濯も。

昨日僕らが体を合わせた布団は、血やら何やらで大変なことになってしまっていた。

この血は…僕が初めてだった証。

大事な大事な僕のバージンを、大好きな彼に捧げることが出来て…本当によかったと思う。


「――…っ」


思うのに………涙が溢れてくるのはなぜなんだろう…。

進藤に見られたらきっと

「泣きたいのはこっちだぜ」

って言われるんだろう。

脅して彼女と無理矢理別れさせて、自分の彼氏にしたんだから……それは仕方のないことなんだろう。

だけど……


「塔矢〜、腹減った。なんか食わせて」


進藤が帰ってきたので、僕は慌ててその涙を拭った。

でも、拭っても拭ってもどんどん出てくる。

涙が止まらない…


「塔矢…?」

「ごめん……ちょっと……」

「………」


僕の涙に気付いた彼。

「泣きたいのはこっちだ」

と言われると思っていた…のに―――


ポンッ


と頭に手を乗せられた。

撫で撫でされる……


「泣くなよ…」

「だって…」

「オレも男だからさ、女の涙には弱いんだよ」

「でも、止まらないんだ…っ」

「分かった。止めてやる」




――え…?




彼の手が、腕が、僕を包み込んできた。

ぎゅっと抱きしめられたことに驚いた僕の頭は、途端に涙を出すことを忘れる――


「進ど…う」

「止まった?」

「う…ん」

「そっか。よかった」

「………」


進藤が年上のお姉様方にどうして受け入れられたのか…何だか少し分かった気がした。

でも、僕は彼女達みたいに進藤を一時の遊び相手だとは思っていない。

生涯を共にしたいと思っている。



「進藤…」

「ん?」

「好きだ…」

「……」

「好き…進藤…」

「うん…」



オレも、と返してくれる日は果たしてやってくるのだろうか―――








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