●SLAVE U 7●
塔矢と付き合い始めた数日後。
後援会主催の忘年会が棋院近くの料亭で行われた。
もちろんオレも会長も、そして藍子さんも出席。
別れてから初めて会う彼女に、正直いってオレの心臓はドキドキだった。
「来年も頑張ってくれよ、進藤君。目指せ二冠だな」
「はい、頑張ります」
オレと話す会長の横で、にこにこと付き添ってるこの彼女を。
後で別室に呼び出して、この前のメールを弁解して、謝って。
もう一度付き合ってもらおう…なんてことを、全く考えていなかったと言えば嘘になる。
でも……オレはしなかった。
いや、出来なかったと言う方が正しいかもしれない。
会長の横にいる彼女の顔が、前より晴れやかな気がして。
そしてやっぱり会長と藍子さんは年相応でお似合いで……オレとでは絶対に作れない雰囲気を作っていて。
何かもう…邪魔しちゃ悪いなって気になった。
でもオレがそう思えるのは、オレにも余裕があるからだと思う。
他に傍にいてくれる人がいるからだ―――
忘年会終了後、酔ったままオレは塔矢ん家に直行した。
「お酒臭い」
といって拒否する彼女を無理矢理抱きしめて…キスをして。
「……今日、会長夫人に会ったんだろう?何か話した?」
「何かって〜?」
「よりを戻そうとか…言ったんじゃないだろうな?」
「はは…言うわけないじゃーん。オレにはオマエがいるのに」
「…え……?」
塔矢が驚いた顔を向けてきた。
そりゃ、驚く…よな。
「何か…もう不倫とか面倒くさいし。オマエでいいや…」
「オマエでいいって、なにその投げやり…」
「うるせーなぁ…不満なのかよ?」
「当たり前だ!」
「じゃあ、オマエを好きになった、愛してる、とでも言えばいいのかよ?」
「別に…まだそこまでは望んでないけど…」
まだ、ね。
そうだな…オレも今はまだ言えないな。
言ったら嘘になる。
でも、何となくだけど……この塔矢になら、いずれ言える日が来そうな気がしてならなかった。
いつかは分からないけど――
「な。エッチしよ、塔矢」
「え…」
「何だよ、嫌なのかよ?オレのこと好きなんだろ?」
「好き…だけど、明日は大事な対局があるから寝不足は避けたいんだ」
「うわ、オレより碁の方が大事なんだな?」
「そういうわけじゃないけど…」
「じゃ、一回だけ♪一回ならいいだろ?な?」
「…本当に一回だけだからな?」
「おう♪」
翌朝――目の下に大きなクマを作った彼女がオレを怒鳴ってきた。
何だよ〜、止まらなかったのはお互い様だろ?
ちなみに、避妊なんて言葉は最初から存在しないオレらだから、塔矢のお腹の中に新しい命が芽生えるのには時間はかからなかった。
「結婚…してくれる?」
「え〜どうしよっかな〜」
悩むそぶりを見せたオレに、塔矢が涙を潤ませてきた。
「うわ、ごめん!冗談だって!泣くなよ!結婚くらいいくらでもしてやるから!」
「うん…」
何だかもう立場逆転?
今はもう奴隷だとは思わない。
先生達に挨拶を済ませた翌月には、晴れて夫婦――対等な立場になったオレらがいた。
―END―
以上、奴隷話・逆バージョンでした〜。
最初は何だかアキラの方が押してましたが、いつの間にか逆に…?
というか何だかいちゃいちゃしてるだけになってしまった><
無自覚いちゃいちゃですが。
本人達、いちゃいちゃしてるとは思っていません。
気持ちは最後まで微妙にずれたままでしたが、ラブラブになる日も近いんじゃないでしょうか?(笑)
何だかんだでこのヒカル君、めちゃくちゃ子供可愛がりそうだしね!