●SLAVE U 4●




何とか進藤を僕のものにした。

何とか彼と付き合うことになった。

彼との情事を終えた後、僕はシャワーを浴びながら…我ながら上手くいったとグッと拳を握りしめていた。



ずっと好きだった進藤。

でも彼の付き合う人はいつも年上ばかり。

同い年の僕になんかちっとも振り向いてくれない。

だからずっとこの時を狙ってたんだ。

彼の熟女好きが高じて、いつか人妻に手を出してくれることを。

浮気は立派な犯罪だ。

相手が既婚者なら尚重罪。

そうなったら別れさすのも脅すのも簡単だと思った。

上手くいってよかった。

あとは…この調子で彼と関係を持ち続けて、身篭るのを待つだけだ。

一生彼を僕だけのものにする為に―――









「…何してるんだ?」


部屋に戻ると、進藤は僕のパソコンをいじっていた。

どうせ例のデータを探していたんだろうけど。


「くそっ!無いっ!」

と叫んだ後、バンッとキーボードを叩いた。


「…もう諦めろ。往生際が悪いぞ」

「誰がオマエの奴隷なんかに…」

「失礼な。僕は彼氏って言わなかったか?奴隷じゃない」

「変わんねーよ!」

「…僕にそんな口、聞いていいと思ってるのか?」

「……」


うがー!!と髪を掻きむしった彼は、「やっぱり奴隷じゃん!」と叫んでいた。




「今日泊まっていくだろう?」

「はいはい…もう仰せの通りに」

「せっかくだから一局打とうか」

「…はいはい」



再び居間に戻り、僕らは碁盤を挟んで向き合った。

目が合ったのでニッコリと微笑んでやると、怪訝そうに眉間にシワを寄せてきた。

はぁ…と大きな溜め息をつかれる。

…ちょっと寂しい。


「…一つだけ聞いてもいい?」

「何だよ?」

「キミは…子供が出来る心配がないから、年上の人が好きだったのか…?」

「別に。藍子さんがそうだっただけで、前付き合ってた奴は30代だったし…普通に付けてたよ」

「……」

「甘えられる女が好きなんだ。楽だし。だから年上とばっか付き合ってるのかも」

「……僕に甘えてくれてもいいよ?」

「ハッ」

鼻で笑われた。

「ぼ、僕だって…キミに奴隷とか思われたくない。キミにちゃんと好きになってもらいたいんだ!」

「ふーん…オマエって本当にオレのことが好きなんだな」

「好きだよ…ずっと前から」

「普通恋愛は惚れた方が負けなのにな。何でオレが負けてんだろ。情けない話だぜ」

「人妻に手を出すキミが悪いんだ。自業自得だ」

「…そうなのかもな」


あれ?

あっさり認めちゃった。


そういえば昨日…盗聴してた時も何だかんだで言い争ってたもんな。

会長の奥さんは、会長への罪悪感と進藤の為を思って…別れたいって言ってたみたいだった。

羨ましい話だ。

進藤に愛されてるなんて…ずるい。







「…僕の1目半負けだ」

「へへ♪やりぃ」


打ち終わった頃にはもう11時で、僕らは寝ることにした。

…もちろん同じ布団で。

でも、今度は命令も脅迫もしなかった。

彼の左腕に抱き着いて…目を閉じる。


「……なぁ、オレ寝ちまってもいいのか?」

「ん…いいよ」

「…ふーん。じゃあ遠慮なく」

「うん…おやすみ」

「………」


しばらくの沈黙の後、僕が絡めてた腕を強引に剥がされた。

「う――」

腕ぐらいいいじゃないか!と言おうとしたその時―――進藤が体を反転させて僕の上に被さってきた。

両手首を掴まれる――


「……進藤?」

「…あのな、寝ろって言われても寝れるわけねぇだろ」



え……?











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