●SLAVE U 1●
「もう会うのやめましょう」
「何で?オレ、藍子さんのこと本気だよ?愛してる。藍子さんがいないと生きていけないんだ」
「でも…」
キミはこんな臭い台詞をはく奴だったのか…、と半分関心し半分羨ましいと思い。
そして半分呆れ笑った夜。
僕はついに掴んだライバルの浮気現場を、彼の死角になる場所から盗撮盗聴していた。
彼を彼女から引き離す為に。
そして彼を手に入れる為に―――
「進藤、今日の帰り僕の家に寄ってもらってもいい?見せたいものがあるんだ」
「いいけど…何?面白い棋譜とか?」
「見れば分かるよ」
翌日――僕は彼を自分の家に招いた。
もちろん昨日撮った彼の浮気現場の映像を見せる為に。
何も知らず、ちょっと面倒くさそうについてきた。
「これなんだ♪」
とDVDを彼の目にチラつかせてみせる。
「何?韓国のタイトル戦のDVDか?」
「だから見れば分かるって」
デッキに入れて、再生。
映し出された自分の映像を見た途端に――彼の顔から笑顔が消えた。
というか一気に血の気が引いてる。
「お…オマ…っ!何だよこれ!!いつ撮ったんだ?!」
ふふ、焦ってる焦ってる。
「この女の人、キミの後援会の会長夫人だよね?なに人妻に手出してるの?キミ」
「う…うるせーよ!オマエには関係ないだろ!!」
即座にデッキからDVDを取り出した進藤は、パリンッと真っ二つに割った。
ま、意味ないんだけど。
それ、焼いたやつだし。
「どうせ他にもあるんだろ?全部出せよ…」
「嫌だ。今から会長に見せに行くんだもん」
「はぁ??正気かオマエ?!」
「ああ」
「んなことしたら…オレ…」
「棋士生命の危機だね。お疲れ様でした」
「塔矢…」
「彼女だって離婚だろうね。可哀相に」
「……っ」
既に半泣きの進藤。
泣いたって無駄だよ。
それに自業自得じゃないか。
既婚の女性に手を出すなんて最低だ。
しかも40代…いや、もう50歳近い人だろう?
熟女好きにもほどがあるぞ。
自分の母親より年上の人を好きになるなんてどうかしてる!
キミには似合わない!
「頼むよ塔矢…それだけは勘弁して…。何でもするから…」
「何でも?」
「ああ」
「じゃあ、彼女と別れてくれ」
「……分かったよ」
「もう二度と会うな」
「……分かった」
「でもって、僕と付き合って」
「………は?」
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