●SEINA V 2●





カチャ…



寝室のドアを開け、ドキドキしながら中に入った。

ダブルサイズのこの大きなベッドは、彼が一人暮らしを始めた時に購入したものだ。

もちろん一緒に選んだ。

あくまで「一人暮らし」なのに、普通にダブルのサイズを購入しようとしたあの時の彼は可笑しかった。








『誰かに見られても知らないから』

『人の家の寝室にズカズカ入り込んで来る非常識な知り合いはいないから大丈夫だよ』

『彩とか』

『彩かぁ……入って来そうだな』

『ね』


二人で苦笑いしてしまった。


『ま、彩ならいいよ。京田さんだってダブルだしな』

『あ、そうなんだ?』

『最初はセミダブルだったらしいんだけど、あまりにも彩が遊びに来るから買い替えたらしいよ』

『へぇ…』


確かに彩は私達では考えられないくらい京田さんちに入り浸っていた。

ほぼ毎日。

まるで日課のように放課後彼の部屋に押しかけていた。

もちろん毎回飽きずに体も合わせてるらしい。

(そりゃベッド買い替えたくなるよねぇ…)








ベッドに上がり、私はごそごそとシーツの中に入った。

このベッドには枕はもちろん2つある。

(というかホテルみたいに4つある)

私はいつも通り、この左側の枕に頭を預けて横になった。



この4年間、彼の部屋に遊びに来た時は99%お泊まりしていた私。

このベッドでは何回くらいエッチしたんだろう。

150…いや、200回くらいだろうか?

でも、今までの回数なんてきっとあっという間に抜いちゃうんだろうな。



それが結婚―― 一緒に住んで、これからは毎日一緒に寝るということ。


(エッチも毎日するのかな……)



夫婦って一体どのくらいの間隔で体を合わせているものなんだろう。

新婚の夫婦はやっぱりしばらくは毎日なのかな?

子供が出来るまで?

私はもちろん子供が欲しい。

佐為の赤ちゃんが欲しい。


(佐為は…どう思ってるんだろう……)





「精菜」


呼ばれて顔を上げると、パジャマ姿な彼がいた。

「お待たせ」

と彼もベッドに上がってくる。


「は、早かったね…」

「そりゃもう、早く精菜を抱きたくて」


私の髪に手を伸ばした彼が、チュッと毛先にキスをしてきた。

続いて頬にも、額にも、優しく口付けてくる。


「……ねぇ、佐為…」

「なに…?」

「佐為は……早く子供が欲しい?」

「子供は欲しいよ。でも、ゆっくりでいいんじゃないかな。しばらくは新婚気分も味わいたいし…」

「…そだね。でも、それじゃしばらく避妊する?」

「どうしようか。でも結婚式まではした方がいいかもな。海外だし、もし妊娠したら飛行機辛いだろ」

「そうだね。じゃあ式までは付けようか…」

「了解」――と耳許で囁かれる。

甘噛みされるとゾクリと体が震えた。


「……ぁ……」


直ぐ様彼が私の上に覆い被さって来て……唇にキスを落とされる。


「――…ん…、…んん……」


啄まれ、優しく重ねるキスは一瞬だけ。

すぐに舌が入ってきて、私のものと絡み合う濃厚なキスになる。

と同時に彼の右手が胸に伸びてきて、もみもみと優しく揉まれる。


「……ん………」


早から自分の体が熱く火照っていくのが分かった。

(気持ちいい……)

キスも、胸も、彼に触れられてる体の全部が…心地いい。

今日からは彼氏の佐為と触れあっているわけではない。

自分の旦那様と触れあっているのだ。



(佐為が旦那様……)



想像以上にジン…と来る。

やっと本当の意味で手に入れた。

もう離さない。

一生傍にいる。

私は彼の首の後ろに手を回して…ぎゅっと抱き締めた。


「……は……精菜…」

「佐…為……」


唇を離した私達は、どちらともなく見つめあった。


「私達……結婚したんだね……」

「うん……今日から夫婦だな」

「今夜は……初夜だね」

「何か照れるな…」

「明日はオフだし、いっぱいしよう…?」


佐為にフッ…と笑われる。

でもって、

「寝かせないからな…」

と再びキスされたのだった――








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