●GO!GO!SANA 15●
進藤杯、決勝。
私は蓮君と碁盤を挟んで向かい合った。
一回戦でお父さんに、二回戦で翔の弟の凉一君に、そして準決勝でアキラおばあちゃんに勝利した蓮君。
「ありがとう」
とニギりながらお礼を言われる。
「…え?」
「名人と打てたの、誘ってくれた進藤さんのお陰だよ。すっげぇ嬉しかった」
「よかったね。でも勝ちは譲らないから」
「うん。お互い全力でいこうぜ」
私が先手と決まり、同時に頭を下げた。
「「お願いします」」
決勝戦にもなると、もう外は真っ暗な時刻だ。
私達が打ってる間、大人達はもうお酒を飲み始めてるし、他の子供達は携帯ゲームしたり、テレビを見たりしていた。
誠は無事加賀先生の弟子になれたみたいで、昭彦おじさんと先生がこれからのことについて話し合っているのが聞こえた。
奨励会の試験は夏だから、それまで加賀先生の元で勉強しながら、将棋連盟の研修会に通うらしい。
もちろん、全ては中学受験が終わってからの話だ。
誠も航も第一志望は超難関私立。
受かったら今日の賞金でお祝いでも買ってあげようかなぁ。
「……負けました」
一時間後、蓮君が頭を下げてきた。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました…」
私にこれで三連敗な蓮君は滅茶苦茶悔しそうだった。
「おめでとう、佐菜ちゃん」
と主催のヒカルおじいちゃんから賞金を貰う。
(やったー!10万ゲット!)
もちろん準決勝の蓮君にも。
3位のアキラおばあちゃんにも。
(ヒカルおじいちゃんが「オマエ空気読めよ…」と嫌そうに渡していた)
4位の航にも。
以下8位までの皆にも、それぞれ賞金が渡された。
表彰式が終わったら翔の家族と蓮君は帰ることになった。
翔には「また新学期でね」と別れを告げて。
蓮君には「新初段シリーズ見に行くね」と告げた。
そして残りのメンバーで夕飯をいただくことにする。
「進藤の孫だって言うからかなり不安だったけど、普通に賢そうな子で安心したぜ」
と加賀先生がヒカルおじいちゃんに話しかけた。
「だろ〜?誠はオレに似て超賢いからな!」
「んなわけねーだろ。婿の血だろうが」
「はは、まぁな〜」
その横では社先生が奏おじさんに
「奏君はまだ結婚せんの?」
と私が滅茶苦茶気になってたことを聞いてくれていた。
「結婚って…俺まだ23なんですけど。同級生も独身だらけですよ」
「あれ?進藤家は皆早いから奏君もそろそろかと思ってたわ」
「そんなわけないですよ。(特に両親と)一緒にしないで下さい」
「でも彼女はおるんやろ?」
「……まぁ、一応」
「付き合って長いん?」
「……まぁ、6年くらいですけど」
「お、いい頃合いやん。そろそろ覚悟決めたら?」
「……もう6年くらい付き合ってから考えます」
「あらら」
あと6年も付き合ったら29歳だよ〜〜??
杏さんがちょっと可哀想な気がした。
(まぁ杏さんも結婚願望無さそうな性格だけど…)
その横では
「精菜もうすぐだねー」
と彩おばさんがお母さんのお腹をなでなでしていた。
「いいな〜赤ちゃん。私も早く出来ないかなぁ」
「彩も3人目考えてるの?」
「えへへ、実はそうなの」
「出来るといいね」
「うん!」
彩おばさんは隣に座ってる昭彦おじさんに、こっそり
「今夜も頑張ろうねv」
と耳打ちしていた。
もちろん昭彦おじさんは飲んでたお茶で噎せていた。
「京田さん大丈夫ですか?」
とお父さんが尋ねる。
「う…うん」
「あ、次の研究会いつにしますか?」
「いつでもいいよ。進藤君は手合い何日から?」
「7日です。碁聖の2回戦で母と」
「そうなんだ。じゃあ研究会は8日にする?検討も出来るし」
「そうですね」
おじいちゃんの研究会なのに、弟子二人が勝手に日程を決めていた。
相変わらず進藤門下の決定権はお父さんにあるみたいだった。
私は横に座っているアキラおばあちゃんに
「お父さんと7日にあたるの?」
と尋ねた。
「うん。楽しみだよ」
「私は誰と新初段シリーズあたるのかなぁ…」
「誰がいい?」
「うーん…まぁ誰でもいいけどね」
「僕でも?」
「――え?」
アキラおばあちゃんがにこりと笑った。
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