●ROOM SHARE 5●
「聞いた?和谷と伊角と進藤と塔矢が一緒に住み始めたって話」
オレ達のルームシェアはたちまち棋院中の噂になった。
こう見えても結構個々に人気があるオレら。
「塔矢さんと住んでるなんて羨ましすぎ」
と何人もの奴らに言われたし、同じように塔矢も女流の人達から言われてるみたい。
「お風呂場でバッタリとかありました?」
「は?」
「だから〜、塔矢さんがお風呂に入ってるの知らなくて、ドア開けてビックリみたいなやつ」
「あ…あるわけねーだろ」
とか否定しながらも、オレの心臓はバクバク。
この前のあの塔矢の胸の感触をまた思い出してしまった。
すごく柔らかくて弾力があって温かくて…。
毎晩風呂に入ってパジャマに着替えてからオレの部屋に打ちにやってくるアイツ。
パジャマの隙間から見えるあの胸を、見る度に触りたいって思ってた。
それがまさかアイツの方から………
思い出すだけで体が反応してしまうので、慌てて頭を振って卑猥な妄想を消し去った。
「進藤〜」
「ああ、和谷か。なに?」
「今夜なんだけどさ、森下先生のとこに泊まるかも。明日のイベントの準備を今夜するらしいんだよ」
「ふーん?」
「でさ、伊角さんも今日桜野さん家に泊まるみたいなんだよな」
「ああ…あの年上の彼女ね」
ん?
待てよ?
それじゃあ……
和谷がオレを引っ張って耳打ちしてくる。
「だからさ、この前の続き、遠慮なく出来るぜ?」
たちまち顔が熱くなる――
「ば…っ、な…っ、んなの、出来るわけねーだろっ!」
「この前はお楽しみのとこ邪魔して悪かったなーて思ってたんだよな」
「だから、オレら別にそんな関係じゃないから!」
「じゃあどんな関係だよ。言っておくけど、普通のライバルは体を触りあったりしないからな」
「知るかよ!あれは塔矢の方が勝手に―――」
「ふーん。じゃあ塔矢はお前に気があるんだな。まぁ一目瞭然だけど」
え……?
「いいじゃん。塔矢が誘ってきたのならきたで、ラッキーだと思って楽しんじゃえば?俺や伊角さんがいる時にそれやられたら迷惑極まりないけど、いない時ならお前らがどーなろうと関係ないから」
「……」
塔矢がオレのことを好き…?
そうなのか?
一目瞭然…って、オレはちっとも分かんなかったけど……
でも、嫌い奴に胸を触らせたりしないよな?
やっぱりオレに気があるのか?
どうなんだろ。
今夜、聞いてみようかな。
「塔矢ってオレのこと好きなの?」って―――
「別に」って言われたら「あ。そう」で終わりだし。
「好き」って言われたら……………どうしよう。
チラッとエレベーター横の自販機前で、芦原さんと楽しそうに話してる彼女を見た。
また……笑ってる。
「………」
オレ、最近変だ。
塔矢が笑ってる所を見るとなんかムカムカする。
笑うな!て思う。
オレにだけ笑顔を見せてほしいと思う。
そんなの、ただのライバルじゃない?
オレも……アイツのこと好きなのかな………
「じゃ、進藤今夜頑張れよー。あ、薬局で例のやつ買うの忘れずにな」
「は…?」
一瞬何のことだか分かんなかったけど、分かった途端にまた顔が熱くなった。
ありえねーよ!何勝手に想像してんだよ!と思いながらも、帰宅途中にある薬局前で足が止まった。
一応?
念のため?
別に今夜は使わなくても、これからの人生いつかは絶対使うものだし?
買っておいて損はないかも…………と手が伸びた。
レジの時なんて皆どうやって手に入れてるんだろうと思うぐらい死ぬほど恥ずかしかった。
でも、とりあえずは準備万端…かな?
あとはなるようになれ!
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