●TIME LIMIT〜再会編〜 4●
お風呂からあがると既に7時を回っていた。
「すごーい!ベッドふかふか〜」
「楽しいね!」
美鈴ちゃんとぴょんぴょんベッドの上で跳ねた。
お母さんはそれをソファから見て笑ってる。
「お母さん、お父さん…何時頃に着くかなぁ?」
「さぁ…。今日中には来るって言ってたけどね」
「今日中…」
お父さんが来てくれるのはすごく楽しみ。
……でも
恐い……
お父さんは普段優しい分…怒ったら昔からすごく恐いんだ…。
滅多に怒らない分…余計に…。
「大丈夫…」
お母さんが頭を優しく撫でてくれた。
「大丈夫…?」
「うん…。きっとお父さんも千明ちゃんの気持ちは分かってくれてるから…」
「……うん」
ピンポーン
9時半。
ついにお父さんが着いたみたいでお母さんがドアを開けに行った。
私は壁に隠れてこそっと覗いてみる。
「進藤…いらっしゃい」
「塔矢…」
「8年と…半年ぶりだね」
「…ああ」
気まずそうに二人が見つめ合った。
「…キミ、あんまり変わってないね」
「オマエもな…。ちょっと髪伸びた…?」
「伸ばしてるんだ…」
「…そっか」
お父さんがお母さんの髪に触れた。
優しく…愛おしむように指で撫でてる。
「……で?千明は?」
名前を出された瞬間、肩がビクッとなった。
「奥に…」
顔を上げたお父さんは表情が変わっていた。
やっぱりすごく怒ってる…。
「千明…」
「ご…ごめんなさい…」
目があった瞬間…思わず後退りをしてしまった。
お父さんがこっちに来る。
「お前…どれだけオレが心配したと思ってんだ…」
「……」
「こんな所まで勝手に来て…、おまけに美鈴ちゃんまで巻き込みやがって…」
「……」
「美鈴ちゃんのお母さんもすごく心配してたんだぞ…」
「ごめん…なさい」
お父さんが手を上げた。
叩かれる…!
思わずぎゅっと目を瞑った――
…え…?
「お父さん…?」
張り手の変わりに…お父さんが私を抱き締めてきた…―
「…よかった…無事で…」
頬に…お父さんの涙が落ちてきた。
「お前までいなくなったら…どうしようかと思った…」
「お父さん…」
「千明…オレはお前がいなきゃ…生きていけないんだ…」
「……」
「もう二度と…勝手な真似するなよ…」
「うん…ごめん…ごめんなさい…―」
お父さんが震えながらキツく抱き締めてきた―。
お父さん…ごめんなさい…。
もう絶対どこにも行かない…。
ずっと…お父さんの側にいるからね…―
「…千明、家に帰ろう…」
「うん…」
私を抱き抱えて、直ぐさま部屋を出て行こうとするお父さん。
そして…それを阻止する為にドアに立ちはだかったのがお母さんだった――
「帰さない…」
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