●TIME LIMIT〜再会編〜 3●
「二人とも今日は疲れたでしょ?今夜はもうこっちで泊まっていくといいよ」
「お母さんのお家?」
「ううん、それはまた今度。今夜はホテルに泊まろうね」
カフェを出た私たちは、すぐにタクシーに乗ってそのホテルに向かった。
「千明ちゃん!東京タワーが見えるよ!」
「わぁー…きれーい」
夜のライトアップされた東京タワー。
夜の東京。
信じられないぐらい建物があって、お店があって、人が、車がうじゃうじゃいる。
私が住んでる町とは大違いだ…。
ここがお母さんの住んでる街…。
そしてここがお父さんの住んでた街…――
その繁華街を過ぎて、タクシーが入って行ったのは大きなビル街。
ここはあんまり人はいないけど…綺麗な建物がいっぱいだ。
「…お母さん、ここがホテルなの?」
「うん。ちょっと待っててね」
エレベーターでかなり上の階まで上った後、お母さんがフロントと書かれてある場所に行ってしまった。
「私ホテルって初めて…」
「すごくキレイなホテルだね!東京ってすごーい」
二人でキョロキョロしてると、何やらお兄さんを引き連れてお母さんが帰って来た。
「ご案内します」
とお兄さんが言ったので、案内係なのかな?
エレベーターもキレイ…。
廊下もキレイ…。
そして…――
「わぁ…」
部屋も信じられないぐらいすごくキレイだ…。
「千明ちゃん見て!窓からまた東京タワーが見えるよ!」
「本当だ!」
窓からは夜の東京が一望出来た。
「こちらのドアで隣りと繋がっておりますので」
「はい、分かりました」
お兄さんがお母さんに何やら説明してる。
そのドアの向こうにはまたしても同じような部屋があった。
「この部屋は千明ちゃんと美鈴ちゃんが使ってね」
「お母さんの部屋がそっち?」
「うん」
一緒に寝れないのは残念だけど、でも今夜はすぐ隣りにお母さんがいてくれる。
もうすぐお父さんも来てくれる。
初めて家族が揃う。
すっごく楽しみだ…―
「お腹すいてない?」
「うん。さっきのお店でずっとジュース飲んでたから大丈夫」
「そう。もしすいたらルームサービス取ってあげるから言ってね。冷蔵庫の飲み物も好きに飲んでいいから」
「うん。ありがとうお母さん」
お母さんがニッコリ笑ってくれた。
笑うと…お母さんすごく可愛い…。
「…あ、家に連絡しておかなくちゃ」
お母さんが携帯を取り出した。
「どこにかけるの?」
「お母さんの家だよ。千明ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんが住んでる…ね」
「本当?!私もおじいちゃん達に会いたい!」
「今度一緒に行こうね」
「うん!」
お母さんがボタンを押しで電話をかけ始めた。
「あ、お母さん?アキラです。今日は帰りませんので」
「ホテルです。明日は…まだ分かりません」
「はい。じゃあお休みなさい」
ピッ
「千明ちゃん!お風呂場もすごいよ〜!」
「本当?!」
美鈴ちゃんがお風呂場から叫んだので慌ててそっちに走って行ってみる。
「わー…ピカピカだー」
「千明ちゃん、一緒にお風呂に入ろ!」
「うん!」
「二人とも使い方分かる?」
お母さんがお風呂の使い方を説明してくれた。
「着替えの浴衣はここに置いておくから」
「はーい!」
ドアがバタンと閉まった後、美鈴ちゃんが耳打ちしてきた。
「千明ちゃんのお母さん、千明ちゃんにそっくりだね」
「うん」
「千明ちゃんも大きくなったらあんな感じになるのかな?」
「なれるといいな…」
「でもお父さん似でもいいよね!千明ちゃんのお父さん、すっごくカッコいいもん!」
「…お父さん…怒ってないかな…?」
「……あ」
ウソついて…
勝手にこんな所まで来て…
おまけに美鈴ちゃんまで巻き込んで…。
きっと…怒られる…
覚悟しとかなきゃ…―
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