●RESORT WEDDING 2●





食事会は教会横のゲストハウスで、披露宴代わりに行われた。

新郎新婦が改めて参列者一人一人にお礼を言ったり、近況を話したり、お喋りをするこの時間。

リゾートウェディングはこういうところがいい。

普通の披露宴だと、ゆっくりゲストと話をする暇もないからね。



「へー、進藤君はプロの囲碁棋士なんですか」

「ヒカルは本因坊のタイトルも取ったことがあるのよ」

「…どうせ今は持ってませんよーだ」

去年防衛に失敗した進藤が、痛い思い出を思い出したかのように口を尖らせた。


「俺は囲碁なんて触ったこともないからなぁ」

「今度私が教えてあげる♪」

「ヘッポコに教わってもねぇ?」

さっきのお返しと言わんばかりの台詞に、今度は藤崎さんが口を膨らます。

「ヒカルの意地悪っ!」

「はは」



続いて新郎新婦は隣の僕のところにやってきた。


「えっと、奨さん。彼女がヒカルと同じ棋士の塔矢アキラさん。しかも名人と王座のニ冠なのよ」

「へぇ、女性なのにすごいですね」

「…どうも」


『女性なのに』という所にピクッと反応してしまった。

悪気はないんだろうけど、僕が一番嫌いな言われ方だから…。


「で、ヒカルの彼女なの」





………は?





「「違う違う違うっ!!」」


つい二人でハモって否定してしまった。


「おい、あかり!いつの話してんだよ!もうとっくの前に別れたって!」

「え?嘘…」

藤崎さんは知らなかったみたいで、大きな目を更に大きく見開いている。

確かに彼女が進藤に告白した17歳の時、僕は彼と交際していた。

彼女に断る時の台詞も、

『塔矢と付き合ってるから』

だったみたいだ。

だけど、結局僕らは二年持たなかったのかな?

僕の19歳の誕生日を待たずに、喧嘩してそのまま別れてしまった。

以来僕は誰とも付き合っていない。

進藤の方はどうだか知らないけど…。


ともかく、どうやら藤崎さんは今も僕らが付き合っていると思い込んでたらしく、だからあまり接点がない僕まで結婚式に招待したみたいだった。

やっと謎が解けた。



「そうだったんだ…。でもヒカル……今も塔矢さんのこと…好きだよね?」




え……?




「は…はぁあ??す、好きなわけねーじゃん!誰がこんな囲碁馬鹿女っ」

「囲碁馬鹿女で悪かったな!キミだって囲碁馬鹿男じゃないか!」

「なにおぅ?」


僕らがいがみ合ってる横で、藤崎さんと旦那さんは困ったように顔を見合わせていた。

…なに?


「あ、あのねヒカル。私てっきり…今もそうだと思って、今日泊まるホテルの部屋割…塔矢さんと同室にしちゃったの…」

「え……マジで?」

「でもすぐに変えてもらうよう手配するから!ごめんね!」

「あー…いいよ。自分でする。お前この後もどうせ写真とか着替えで忙しいんだろ?」

「う…ん。ごめんね…」

「いいって」










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