●REBORN 2●




――眠っていた2年半…私はずっと夢を見ていた――



碁盤に宿っていた私。

だけどヒカルと出会ったことで、それからは彼と行動を共にした。

最初は囲碁に興味のなかったヒカルを、私がその世界に導いた―。

…だけど彼をあすこまで囲碁に熱中させたのは、彼女の存在があったからだろう。

『塔矢アキラ』

神の一手に最も近いと言われていた、あの塔矢行洋の娘。

最初は彼女の方がヒカルを追いかけていましたよね。

私の碁をヒカルのものだと勘違いして―。

けれど真実を知った塔矢は思いっきりヒカルを見下した。

それからは立場が逆転。

今度はヒカルが塔矢のことを追いかけて追いかけて――院生になり、そしてプロにまでなった―。

さぁ、これから!というところで私とヒカルの別れ。

あの者との一局で満足したからではない。

ようやく…理解したからだ。

囲碁には終わりがないということを―。

ずっと繋がってるということを―。

私がヒカルの為に存在したのなら…きっとヒカルも誰かの為に存在して…、そうやってまた何百年何千年と受け継がれて行くのだろうということを…――



――けれど

私はまたしても現世にいる――



藤原佐為としての千年間の記憶を持ったまま――六条楓としての家族と、友人と、過ごした8年間の記憶と共に―。

これが生まれ変わるということなのだろうか…。


でも矛盾している点もある。

私はずっと碁盤の中にいた。

それなのにその期間…楓としても生きていたことになる。

ヒカルと別れた後――成仏した後で生まれ変わるなら理にかなっているが……一体どういうことなのだろうか。

それともその重複していることにも何か理由があるのか…。

気になる…が、それより今は先にすることがある。



「お母さん、今日って…何年の何月何日?」

「平成13年、2001年の5月8日よ」

「8日…」

私がヒカルと別れたのが5日。

まだ3日しか経ってない。

ヒカルとまた会える可能性は十分にある。


「お母さん、週刊碁が読みたいな」

「え?なぁに?それ…」

「毎週発売される囲碁の新聞なの」

「へぇ…。じゃあ後で買ってきてあげるわ」

「うん!」


突然私が囲碁囲碁言い出したから、両親は少々不思議そうな顔をして戸惑っている。

それもそのはず。

事故にあうまで、私は遊びやおしゃれにしか興味のない、ごく普通の女の子だったんだから。

もちろん藤原佐為としての記憶もなかった。

でも思い出してしまった今となっては、もう過去のことなんかどうでもいい。

早くまた碁が打ちたい。


またしても与えられた未来を、チャンスを、精一杯に生かしたい――






「はい、週刊碁よ。本屋に行く前にコンビニに寄ったらね、何とそこでも売ってたのよ。結構メジャーなのね」

「わーい!ありがとう、お母さん!」


週刊碁。

これに囲碁界の近況全てが載ってることを私は知ってる。

昔…よくヒカルと一緒に読んだから。


ヒカルはあれから頑張ってるのだろうか…。

私が消えた後も、棋士としてちゃんとやっていけてるのだろうか…。



















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