●PROPOSE 2●





「――……ん……」



夜9時。

僕らはベッドの上でキスをし始めた。

お互いお風呂も入って既にパジャマ姿。

後は一週間ぶりの逢瀬を楽しんで眠るだけだ。


今日の精菜はすごく積極的で、押し倒されてしまった。


「ん…っ、ん……っ、ん……」


上から熱烈な口付けをされて、僕のパジャマに手をかけてくる。

もちろん僕の方も負けじと胸に手を伸ばして、彼女の豊満な乳房を揉んだ。

濃厚なキスを続けると、もちろんその気になってくる。

当然下半身も変化してくる。

彼女が大きくなったソレに触れてくる。

最初はパジャマ越しに、そして直に――



「……は……精菜……、あんまり…触るなって…」

「出ちゃう?いいよ…」


精菜が自分で自分のパジャマを脱いで、裸になった。

もちろん僕も全て脱がされて裸にされる。

再び抱きついてきて、キスをして、体を密着させてくる。



僕は知っている――こういう時の精菜は危険だ。



何が危険かって、それはもちろん――彼女は自分で挿れようとしてくるのだ。

もちろん、付けずに。


「精菜駄目だよ…ちゃんと付けないと」

「いいじゃない…佐為だってナマでするの好きでしょ?」

「それは…そうだけど」


理性が欲望に負けて、今までも何度か付けずにしたことがある。

付けるのと付けないのとじゃ気持ちよさは何倍も違う、それは僕も認める。

それがどういう結果に繋がるのかも、もちろん分かってる。


「大丈夫だよ……今日安全日だから」

「……へぇ」


絶対嘘だ、むしろ危険日だろう――と頭では疑ってるのに、体は言うことを聞いてくれない。

付けずにそのまま挿れられて、激しく動いてくる。

あまりの気持ちよさに僕はもちろん、あっけなく到達する。


「……は……」

「ふふ、佐為…気持ち良かった?」

「精菜……」

「ねぇ佐為…、私佐為の赤ちゃん欲しいな」

「……」


きっとこれが彼女の本音なんだろうと思う。

僕と早く結婚して、家庭を持ちたいと。

僕がいつまでも決断しないなら、強行手段に出るから――と。



「精菜…棋士を辞めたいのか?」

「佐為、私の夢はね…棋士で成功することじゃないの」

「……」

「辞めたら勿体ないって思ってくれてるんだよね?皆そう言うと思う」

「……うん」

「でも私の夢はね、好きな人のお嫁さんになって、その人を支えていくことだよ。昔からずっとそう」

「……」

「佐為だってそういう人を求めてるでしょ?私、知ってるんだから」

「……そうだな、僕は精菜に支えてもらいたい。今までももちろん支えて貰ってたけど…」

「プロじゃなくても碁は打てるよ。私の中では碁はそれで十分なの。佐為がたまに打ってくれたら、それで十分」

「そうか……」



それが本当の精菜の幸せなら――僕にもう迷いはない。



僕は体を起こして、サイドボードの引き出しを開けた。

実は精菜がハタチになった日には用意出来ていたソレを――彼女の左手薬指の9年前にあげた指輪と入れ替えた。


「佐為…これ…」

「約束したもんな。将来ちゃんとしたのを贈るって…」


名人リーグ一期分の手合料のエンゲージリング。

もちろん、現名人の僕はリーグ戦には出ないけれど。


「精菜、結婚しよう。これからは妻として一生僕の傍にいてくれる?」

「……」


精菜の瞳から涙が溢れてくる。

僕は9年前と同じように、その涙を舌で掬ってみた。

そして耳元で「返事は?」と促した。


「うん…もちろん。もちろんずっと傍にいるよ、一生…」

僕らはぎゅっと抱きしめあった。

「精菜……愛してる」

「私も……」


そして今度は僕が彼女をベッドに押し倒した。



「じゃ、子作りでもしてみようか」

「うん――」

「今夜は寝かせないからな」

「ふふ…寝不足で十段戦負けちゃうよ?」

「負けるわけないよ、精菜が傍にいてくれるから」



もちろん本当に寝ないわけじゃない。

何回かした後、僕らは抱き締め合って眠りについた――












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