●WILLFUL PRINCE 1●


進藤は矛盾してると思う。


「男の部屋には行くな」

て言ったくせに、自分の部屋には誘ってくる。


「女は好きな奴とだけするべきだ」

て言ったくせに、僕を何度も抱いてくるんだ―。






「今日はこのくらいにするか。キリもいいし」

「そうだね」

時計を見ると、まだ10時過ぎだった。

どうしようかな…。


「帰るなんて冷たいこと言うなよ?」

「……」

進藤が僕の思ってることを見越したように、先に言ってきた。

帰って棋譜整理でもしたかったんだけどな…。


「な、一緒に風呂入らねェ?」

「何をバカなこと…あんな狭いお風呂に二人も入れるわけないじゃないかっ」

「だからイイんじゃん。密着度高くて♪」

「……」


…なんか最近進藤が変わった気がする。

前はあんなにウルサくダメダメ言ってたくせに、今は自分から誘ってくる―。




「いい眺め♪」

先に浴槽に浸かった進藤が、後からバスルームに入ってきた僕の体を、下から眺めながら言った。

「でももうちょっと隠すか羞じらってくれた方が、そそるんだけどな〜」

「今更隠す間柄じゃないだろ。ほら、つめてよ」

「横に二人入るのは無理だって。オレの脚に座ってくれていいから」

「もうっ」

しぶしぶ言われた通りに脚の上に乗ると、彼は後ろからお腹に手を回して、ぎゅっと抱き締めてきた。

「…やっぱ水ん中だと全然重たくねーな」

「僕は元々軽いからね」

「んなこと知ってる―」


……そりゃ知ってるよね。

僕はベッドで何度もキミに跨がったことがあるんだから―。


進藤が僕の首筋に唇を押しつけて、同時に胸を揉み始めてきた―。

「…ぁ…―」

その動きに感じて、彼の胸板の感触に安堵する僕がいる―。


――そう

僕は進藤とこういうことをするのが嫌いじゃない。

むしろ好きだ。


今まで体を合わせるなんて行為は、愛し合ってる二人がするものだと思ってた。

だけど進藤と実際にしてみて、別に愛がなくてもあんなに気持ちよくなれるし、満たされることが出来るんだって初めて分かった。

男は女なら誰でもいいってキミは言うけれど、女だって別に好きな人が相手じゃなくても全然問題ないじゃないか。


でもそれってよく考えてみれば当然だよね。

だって昔のお姫様は政略結婚で、好きでもない男のところに嫁がされていたんだろう?

全員が全員ってわけじゃないと思うけど、その中には僕みたいに感じてたお姫様もいたはずだし―。

でもね、僕は肉体的以外に、精神的にも満たされてる気がする―。


「塔矢…」

彼の手が僕の頬に触れて…、そっと軽く唇を合わせてきた―。

「…ん…―」


そうそうこのキス。

そう思うのはこのキスのせいかもしれない。

彼は無駄にキスしてくるんだ。

付けなくてもいい痕もたくさん付けてくる。

そして――


「…はぁ…」

唇を離した後、耳元で囁いてくるんだ―。

「―…塔矢、好きだ…」


これ。

これを言われると僕は胸がきゅんとなって、すごく幸せな気分になるんだよ。

もちろん彼がこれを言ってくるのはしてる最中か、その前後だけ。

つまり好きなのは僕の体ってことだよね?

だけど僕が精神的に満たされることには変わりないし、体を求められて嫌な気はしない。

それにね、彼と体を合わせるのはすごく勉強になる。

僕ってそっちの方面の知識がかなり欠如していたみたいで、普通というものがよく分かってなかったし。

普通はそうなの!こうなの!ああなの!って彼に何度言われたことか。

彼に教えられるのは屈辱的だけど、これに関してだけは別。

何でも素直に受け入れれる。

おかげで初めてした時は固まっていただけの僕だけど、今は結構自分からも動けるようになったと思う。

慣らしてさえくれたら自分でも挿れれるしね。

でも彼のあれを触るのは今でもちょっと抵抗がある。

初めて

「フェラして?」

って言われた時には驚いた。

いや、驚くことも出来なかったな。

だって僕はフェラという言葉を知らなかったんだ。

だから彼がどういうものなのかはもちろん、やり方も一から教えてくれた。

それの応用とかいって69もやらされた。

あれはかなり恥ずかしかったし、全然する方に集中出来なかったから…もう二度としないと思う。

あとはそう…体位だな。初めてした時のような格好を正常位って言うんだって。

後ろから入れられたこともあるけど、やっぱり僕は前からがいい。

彼の顔が見れるし、抱き付けるし、体力的にも楽だしね。


「…塔矢、ベッド行こっか」

「…うん」

まだ髪も体も洗ってないのに、早くも進藤が出ようと言ってきた。

なぜかは分かる…。

だってさっきから固いものが腰やお尻にあたってるんだもの。

このお風呂場でしないのは、僕がベッド以外でするのを極端に嫌うことを彼は知ってるから―。

適当に体を拭かれた後、裸のまますぐに連れて行かれ――深いキスをされながら…ベッドに押しつけられた―。


「―…んっ…ん…っ」

口の中を探られ…舌を絡められる一方で、胸をまさぐってくる―。

そういえばこの胸も前より大きくなった気がする…。

遠征とかがない限り、ほぼ毎日彼に揉まれているせいかな…?

そう、その遠征が曲者なんだ。

普段は一回やそこらで体を離してくれる彼も、遠征から帰ってきた後にする時は…ほぼ不眠になるぐらい求めてくるんだよね。

次の日も手合いのあった時なんてたまったもんじゃない。

だけどその間出来なかったのは僕も同じだから……そんな彼を受け止めてしまう。

おかしいよね…。

進藤とし出してから、出来ない日があるとすごく寂しい気分になるんだ…。

だからと言って他の男でその寂しさを紛らわそうなんて思わない。

ただ単に彼に次会える日を待ち焦がれてるだけ。

そしてね、何より嬉しいのが彼も同じだということ―。

僕に会えない時は他の女の子で満たされればいいのに…。

彼はモテるから誘えばいくらでも相手はいるだろうに―。

でも…しないんだって。

彼女も作らないんだって。


…何で?


どうして彼女を作らないんだ?

前はたくさんいたらしいじゃないか。

噂で何度も聞いたことあるよ?

また作ればいいのに―。

そしたら僕もこの関係を終われるし…。

終わりたくないけど…。

でもやっぱりこの関係は変だよ…。

いくら碁のついででも、やっぱりおかしいよ…。











NEXT