●PRETTY WOMAN 4●




「行ってきます」

「気をつけてね。進藤さんによろしく」


母に見送られて玄関を出ると、既に進藤の車が停まっていた。


「おはよ、塔矢。いよいよだなー」

「おはよう。ごめんね、送ってもらって」



ついに今日から始まる囲碁セミナー。

僕達は進藤の車で一緒に向かうことになった。



「草津まで2時間ちょいかなー?ま、ドライブがてらのんびり行こうぜ♪集合は13時だしな」

「あんまり飛ばさないでね?」

「おう!」


と、いつも返事だけはいい。

首都高に入ったら140キロとかそれ以上とか平気で出すくせに。

捕まってもしらないから。






「塔矢も事務で部屋割もらった?」

「うん。私は奈瀬さんと林さんと一緒だった」

「オレは同期同士和谷と越智と一緒だった」


社が目当てだとか言ってた林さん。

一人部屋じゃないのにどうやってモノにするんだろう。

でも毎度のことだけど、誰かの部屋が二次会部屋になるんだよね。

皆でそこに集まって飲みまくる。

打ちまくる。

だからその間は結構空き部屋が出来る。

そこを狙うのかな…。


――て!何を考えてるんだ僕は!






「…な、塔矢」

「え?」

「今夜さぁ…一緒に抜け出さねぇ?」

「は?」

「星がきれいに見えるスポットがあるんだって。オレ行ってみたくて…」

「星?うん、いいよ」

「やった!じゃあ解散のあと誘いに行くから」

「うん」


星だなんて、意外とロマンチストなんだな。

あ。だから車で行こうって言い出したのかな?

移動がしやすいし。


でも……嬉しいな。

夜も一緒にいられる。

もしかしてチャンスなのかな?



先手を打つ――













「進藤!塔矢!」


2時間半後――会場に着くと、関西棋院の集団からヒョコっと顔を出した社が僕らに近づいてきた。


「何や何や〜車で来たんかお前ら」

「ああ。社は?」

「新幹線と電車。駅からここまでは送迎があったからまだいいけど、それでも6時間近くかかってもた」

「マジ?」

「帰りは東京までお前に送ってもらおうかな」

「残念、オレの車二人乗りなんだよな〜。後部座席狭くて死ぬぜ?」


スポーツカータイプの進藤の車。

緒方さんの車みたいに座高が低くて僕はあんまり好きじゃない。

本人達はこれがカッコイイと思ってるから何も言えないけど…。


「あ、ちなみに助手席は女しか乗せないから」

「塔矢しか、の間違いやろ?相変わらずやなぁお前ら」


僕しか?

僕だけ?

嬉しくてドキドキしながらも、進藤と社は男同士すぐコソコソ何やら話し出すので少し寂しい気持ちになる。

仕方ないので先に会場に向かおうと振り返ると―――女流の方々が睨んでいた














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