●PLEASE 2●
進藤が信じられないものを見るような目で僕を見た。
何かおかしなこと言ったかな…?
「何がってオマエ………」
進藤が無意味にゴホゴホ咳払いし始めた。
「…別に女のオマエが興味を持つことなんて書いてねーよ。つか大半が写真だし」
「写真…?女の人が裸の…?」
「そっ!」
進藤が半分ヤケになって答え始めた。
イライラしたように腕を組んで、指をトントンしている。
「そうか…、確かに僕はそんなものには興味ないな…。毎日見てるし―」
「だろ?」
「他には?写真の他に何が書いてるんだ?」
「そりゃあ………色々。マンガもあるし…」
「マンガ?」
それは一体どんなマンガなんだ?
僕はマンガ自体あんまり読まないからな…。
少女マンガでさえほとんど読んだことがない…。
でも男の人がその為に読むマンガなんだから、きっと……ものすごいんだろな。
よく分からないけど…。
「……僕も読んでみたい…」
「はぁ??」
ボソリと呟くと、進藤が大声で聞き返してきた。
「な、何言ってんだオマエっ!あんなもんオマエが読むもんじゃねーよっ!引くから!マジで引くぞ!つか別にオレが買ったわけじゃねーしっ!友達から回ってきたっていうか、無理やり押しつけられたっていうか―」
発言量がやけに多いぞ、進藤。
パニクってるのか?
「別にそれで構わないよ。見せて」
「ええ?!」
勘弁してー…と言わんばかりに頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
あーとか、うーとか考えこんでしまったので、だんだん僕の方もイライラしてきて、つい―
「見せてくれるまで帰らないからっ」
とか言ってしまった。
当然進藤は更に頭を抱え込んだ。
「…マジで引くぞ?」
「だから構わないって!無理だと思ったら読まなきゃいいわけだし」
「……はぁ」
進藤は大きく溜め息を吐いて、机の引き出しを開けた。
え?
そんな所に置いてあったのか?!
「んー…、じゃあ可愛い系のやつな」
は?
可愛い系?
何だそれは??
「絵が可愛いからさ…少女マンガテイストで女でも読めないこともない…と思う」
「ふーん」
進藤が渡してくれたのは確かに可愛い絵で、パッと見では普通の少女マンガ雑誌と変わらなかった。
月刊という所も同じだ。
毎月発売されるのか?
開けるのにちょっと戸惑ったが、恐る恐るそうっと捲ってみた。
進藤はもうやだ…っとベッドに撃沈している。
ふーん…。
可愛い絵だな。
普通にストーリーになってるし、続き物じゃないから内容も理解しやすい。
「……」
「……」
ふ
ふ…
ふ……
「ふざけるなっ!!」
僕は大声で叫んで進藤の元に詰め寄った。
「何だこれは!卑怯じゃないかっ!大勢で寄ってたかって一人の女性をいたぶるなんてっ!!」
「熱くなるなよっ!たかがマンガじゃんっ!」
「くそっ!もっとまともな話はないのか?!」
僕は最後まで読まずにどんどんページを捲っていった。
「こんなもの入れられたら死ぬぞ!?」
「これじゃあ近親相姦じゃないかっ!!」
「何てものを飲ませるんだっ!」
僕がいちいちギャーギャー喚いていたので、進藤は耳を塞いで枕に潜ってしまっていた。
「お。進藤進藤」
「んー?」
引きつった顔でこっちを向いてくれる。
「これ結構まともな話。いい感じだよ」
「あー、それな。ちょっと物足りないないけど、話的にはいいよな」
「うん。ライバルで恋人って素敵」
「……」
進藤が真っ赤な顔して下を向いてしまった。
はっ!
そうか。
この話……最初はライバルってところは僕達と同じなんだ…。
そう思うと途端に僕の顔も真っ赤になった。
「あ…次はどんな話かな…」
気まずく次の話に飛ぶと、また怪しげなコスプレネタで僕はまた悲鳴をあげた。
「……塔矢、もうその辺にしといた方がいいぜ?」
「え?何で…?勉強になるし、最後まで読んじゃうよ」
「いや、その…さ」
「ん?」
「女でもそういう本読むと…多少は感じちゃうだろ?ほどほどにしといた方がいいって」
「え……」
感じちゃう…?
何が…?
「僕は別に……普通だよ?」
「ふーん…。なら別にいいけど、さ」
進藤はベッドから起き上がって先ほど入れたコーヒーを飲み始めた。
僕はまた本に目を戻した。
なんだろうな…。
たいていは気持ちを無視した強姦まがいの話が多いんだけど……すごく興味深い。
この子達…無理やりされてるのにどうしてこんなにアンアン喘いでるんだろう…。
痛くないのかな…?
それとも…ものすごく気持ちのいいことなのか…?これって…。
僕はしたことがないから分かんない…。
「進藤…セックスってこんなに無理やりされても…気持ちのいいものなのか?」
「オレに聞かれても…。オレは女じゃねーし」
「そう…」
そりゃ進藤は知らないよな…。
本当はどうなんだろう…。
そんなにいいのかな…?
このマンガの子達並に気持ちよくなれるんだろうか…。
思わず唾を飲み込んでしまう。
「塔矢…もしかしてセックスしたくなった?」
「え?あー……うん、そうだね…。本当にこんな風になれるのか気にはなるね…」
「ふーん…」
進藤が意味ありげに頷いた。
「じゃあさ…試してみたら?」
「え…?」
それって…どういう…
「協力してやってもいいけど…?」
え…?
それって…
まさか…
「進藤それって……キミが…僕に…?」
「うん…。オマエがしたいんだったら…さ、オレので良ければ挿れてやるよ…」
「……」
一気に顔が真っ赤になってしまった。
どうしよう…。
ものすごく興味はある…。
どんなものなのか…。
本当にあれぐらい気持ちよくなれるのか…。
だけど僕には彼氏がいないし、しばらくは作る気がないから……このチャンスを逃したら何年もそれを経験出来ないかも…。
そんなの耐えられない…。
僕は疑問に思ったことはすぐに解決しなくちゃ気がすまないんだっ!
「……ん、じゃあ…お願いしようかな…」
「オッケー。じゃあさ、他のはどうする?」
「え?」
「そりゃ挿れるだけなら速攻だけどさ、前戯も楽しみたいならしてやるけど…?」
「前戯…?」
「うん。胸揉んだり…ヤる前の色々なコト」
かぁぁっとますます顔が熱くなるのが分かった。
確かにいきなり入れられるのはちょっと…。
あの本ではそれ以前の行為でもみんな結構感じていたし…。
僕も……してほしい、かも。
でもそしたら体中を進藤に触られることになるんだよな…?
それはちょっと…。
「えっとね…胸はいいから、下だけお願いします」
何か僕…本来の目的忘れてないか…?
本当は碁をお願いしなきゃならないのに!
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