●PARK WHITE 5●
「ご宿泊でしょうか?」
駐車場に車を止めて、エレベーターでフロントのある階に行くと――メインロビーに入った途端ホテルスタッフが近付いてきた。
一流ホテルになればなるほどサービスが(鬱陶しいほど)しっかりしてて、後は案内されるままに行動すればいい。
楽なことは楽なんだけど……未だにこういうサービス慣れしてないオレにとっては、部屋に入るまでのほんの数分がとてつもなく憂鬱だ。
だいたい外資系って大阪でも名古屋でも利用する度に思うけど………日本であって日本じゃないんだよな。
立地のせいだからか?
平日だからか?
とにかく………日本人がいない。
このホテルは過去最高に酷い。
フロントでチェックインしてる間、右も左も外国人。
フロントスタッフでさえ半分は外国人だったことに溜め息を着いたオレを見て……塔矢が笑ってきた。
「キミがここを選ぶなんてびっくりした。ここって新旧御三家の中でも一番外国人利用が多いんだよ」
「え……マジ?」
「何せ周りがオフィスだらけだからね。たぶん平日だと8割近くそうじゃないかな」
「…他のとこにすりゃ良かった…」
とはいえ、日本大好き日本語オンリーのオレと違って、塔矢は数ヶ国語を操る外国大好き女なので……喜んでくれてるみたいで良かった。
「お部屋の方は43階の4308号室になります」
「あ、はい」
「こちらが朝食券でして、ジランドールがバイキング、他では洋定食をお召し上がりになれます。ルームサービスや昼食にも変更出来ますし、デリカテッセンにて3千円利用券としても利用可能になっております」
「へぇ…」
「プール・フィットネスジムは無料ですのでぜひご利用になってみてください」
「はぁ…」
「何かご不明な点はございますか?」
「あ、いえ…大丈夫です」
「ではベルが案内させて頂きます」
案内されて部屋に着いた後、ベルが帰った途端――終わった…と安堵の溜め息を吐いたオレを見て、また塔矢がクスクス笑う。
「笑うなって。苦手なんだよ…」
「でも嬉しいよ。キミが僕の為に我慢してくれてるのかと思うと」
「塔矢…」
「素敵な部屋だね。ありがとう」
頬に軽くキスされてしまい……思わず鼓動が早くなる。
「いや…オマエが喜んでくれるならこの位なんともねぇけど…」
「で?キミはどっちで寝る?」
「え…?どっちって…」
塔矢の視線の先を見ると――比較的大きなセミダブルベッドが二つ並んでいた。
まぁツインの部屋を予約したから当たり前と言えば当たり前なんだけど……
「キミのことだからてっきりダブルの部屋を取るのかと思ってたんだけど……ツインにしたんだな」
「え?!ダブルでも良かったのか?」
「………」
途端に顔を真っ赤にして黙ってしまった彼女の横に直ぐさま近寄り――肩を抱いた。
「オマエがいいなら……片方使わねぇけど…?」
「狭くない…?」
「全然っ!むしろ密着度が高くなって最高っていうか………………夜まで待てないんだけど」
「うん…」
「うんってオマエ……していいの?」
塔矢が肩に回したオレの手に…優しく手を重ねてくれた。
「キミがホテルに泊まろうって言ってきた時点で…覚悟は出来てるよ。嫌ならあの時断った…」
「嫌じゃ…ないんだ?」
「僕が嫌がると思ったから…ツインにしたのか?」
「…うん。もし拒まれてもさ…、ベッドが別なら……我慢出来るかなって思って…」
はは…っと苦笑いするオレに――塔矢の方からそっと口付けてくれた―。
「……ん…――」
温かくて……柔らかくて……優しいキスに……今すぐにでも理性が飛びそうになる―。
今にもベッドに押しつけちまいそう―。
……いや、ダメだダメだ。
先に風呂入るか…せめてシャワー浴びねぇと…。
あー…でも今の甘い雰囲気を壊したくないかも…。
それなら…――
「…塔矢…」
「ん…?」
唇を離したオレは……ドキドキしながら彼女の耳元でそっと囁いた―。
「一緒に…風呂入らねぇ?」
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