●PARK WHITE 4●



3/14―――ホワイトデー当日。


何でこの歳で彼女とのデートにスーツなんか着なきゃなんねーんだ!…とブツブツ言いながらオレは車で塔矢家に向かった。

スーツを着ること自体は慣れてる。

最近じゃあ手合いはほとんどそうだし、イベントだって取材だって当然のように着用必須だ。

だけど休日の彼女とのデートまでこれだと思うと……溜め息が出る。








「おはよう進藤」

「おはよ…」


だけど塔矢家に到着し、門の前で待っていてくれた彼女の格好をみて……考えを改めた。

いつも以上にご機嫌の塔矢は、いつも以上に華やかで綺麗なワンピースドレス。

髪も上げて、メイクもバッチリだ。

普段着のオレだと……今の彼女の横には並べない気がする。


「塔矢…キレイ」

「ありがとう。お化粧は母にしてもらったんだ」

「へぇ…」

車に乗り込んだ塔矢に思わずキスしたくなったけど、そんな隙も雰囲気も与えてくれず――目をキラキラさせて聞いてきた。

「で?結局どのホテルにしたんだ?」

「ああ…新宿の…――」


結局オレが選んだのは新宿にある新御三家のホテル。

男って見栄っ張りだよな〜って今回どこにするか選んでて、つくづくそう思った。


――そう

今回選んだ基準は

『オレが行ったことがあって、塔矢が行ったことのないホテル』

だ――


都心に住んでるオレらが都心のホテルに泊まることは滅多にない。

だけど泊まることはなくても、式典やら会食やらイベントで大ホールや宴会場を利用する機会はかなり多い。

そして一度行けば入口はもちろんのこと、フロントやエレベーター、化粧室やレストランの場所はだいたい把握出来るんだ。

つまり場所が分からなくてオドオドすることはまずないってこと。

初めての彼女をエスコート出来るホテルってのはかなりオイシイ存在。


まぁこれが緒方さんなら、あまりに熟知しすぎてたりすると

『前に他の女と泊まったことがあるんじゃ…』

と彼女を反って不安にさせる所だけど、オレの身の潔白のことは塔矢も知ってるし。


このホテルは先月、後援会の集まりで利用したばかり。

ちょうど良かったよな〜。



「…にしても、オマエがホテル好きだったなんてすげぇ意外」

「そう?キミは嫌いなの?」

「あんまり…。肩こるし寝れねぇし高いし、今まで仕事関係でしか利用したことないから、いいイメージがねーんだよな」

「プライベートでもいい思い出を作れば、好きになるんじゃないか?」

「いい思い出………」


……って、それは今夜作ってもいいってことか?

確かにもし成功すれば…目茶苦茶好きになっちゃうかも!

もう週一でも週二でも泊まっていいかも!


――って、それはホテルを好きになると言うよりは……塔矢とヤれるから好きってことになるんじゃ……


…つーかホントに今夜出来るのか?

コイツの様子見てたら……何か全然そんな雰囲気じゃねぇんだけど…。


いやいやいや!

塔矢には押し押し作戦でいくと決めたはず!

オマエにその気がなくても、付き合ってる男女が同じ部屋に泊まるってことはそういうことも付き物なの!ってことを分からせないとな!


何がなんでも今夜決めてやるぜ!

















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