●PARK WHITE 1●




「うーん…」



3月に入って暖かさが一層増してきた頃、オレは頭を抱え込んで悩んでいた。

3月14日――つまりホワイトデーに、塔矢にどんなお返しをしようか…と。


こういう時女側って羨ましい。

バレンタインデーはイコール=チョコレートって決まってるようなもんだし。

ホワイトデーにも決まった物があればいいのに…。




「な〜和谷〜、ホワイトデーって何返したらいいと思う〜?」

「は?お前って今まで返したことなかったのか?」

「あるよ。今年も母さんには花を贈るつもり」

「母親以外は?」

「うーん…ファンの子達は無視同然だし、女流仲間には毎年誰かが集金に来て、まとめて返しといてくれるじゃん?それより彼女に、だよ。オレ今まで彼女なんかいなかったからサッパリ分かんねぇんだけど…」

「この前ようやく念願の塔矢をゲットしたばかりだもんな、お前」

「おう!」



ずっと前から好きだった彼女に、オレは先月のバレンタインデーで告白された。

あの

『好きだ』

と書かれたメッセージカードは一生の宝物だ。

死ぬまで取っておこう。

(いや、死んでも一緒にお墓に入れてもらおう)



あれから毎日のように一緒に帰って…休みの時はデートして…ついでにキスもして…を繰り返してるオレら。

そりゃ喧嘩も日常茶飯事だけど、でもまぁそれは付き合う前からそうだったし。

それよりあの塔矢がオレを好きで…オレだけのものになったってことがすげぇ嬉しい!

やっぱり今年のバレンタイン、ネバりにネバってよかった。

くれるまで帰らない作戦が効いたな♪

今度からも塔矢には押し押しの強引作戦でいこう!




「和谷〜、ホワイトデーにオレら初エッチ出来ると思う〜?」

「知るか!つーかお前が貰ってどうすんだよ!お前はあげる側だろ!」

「だからオレの体を…」

「ばーか。男は貞操をあげるって言わねぇの。捨てるって言うんだよ」

「どっちでも一緒じゃん」

「それよりプレゼントの話だろ?ちゃんとモノをやれよな」

「モノねぇ…モノ…」


鞄?

財布?

時計?

アクセサリー?

花束?


…うーん。

一体塔矢はどれが一番貰って嬉しいんだろ…。



「和谷は彼女に何やるの?」

「んー…たぶん財布。でも金欠だからなぁ…2万が限度かも」

「2万で財布って厳しくねぇ?」

「お前はいいよなー。年末に王座取って今潤ってんじゃねぇのか?」

「へへー♪去年は早碁の大会二つ共優勝したし、AK杯はクジ順が良かったよな〜。ま、竜星の決勝で緒方さんに勝ったのは実力だけど」

「あ、塔矢のことならその緒方さんに聞くのが一番なんじゃねぇのか?」

「え?」

「塔矢のこと小さい頃から知ってるんだろ?趣味とか好みも熟知してんじゃねぇの?」

「まぁ…そうだけど、さ」


そういうこと…あんまり聞きたくないんだよな。

彼氏のオレより塔矢のことよく知ってるなんて……何か嫌だ。

負けた気がする。


…ま、仕方ないか。

実際知らないんだもんな。

付き合ってまだ一ヶ月だもんな…。


よし。

早速明日にでも聞いてこよう。










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