●DO-SHITSU 2●


「なぁ…飲み物買って来ていい?さっきから喉渇いちゃってさ」

「いいよ」

「オマエは?何かいるか?」

「僕はさっきまでお茶飲んでたから…」

んじゃオレの分だけでいいか。

ちょっと乾燥してるのかな?と湿度調節しに行った塔矢を背に、自販機に向かった。



「うわ、高っ!」

普通の缶ジュース1本150円かよ。

やっぱこういう所って高いよなー。

かと言って浴衣のまま外に行く訳にはいかねーし。

着替えるのも面倒だし。

ここのでいいか…。

「やっぱスポーツドリンク系かなぁ…」

そう思ってお金を入れようとした時、隣の自販機に目が行った―。

「…こっちにしよ」



「ただ今〜」

「お帰り。何買ってきたの…って、えぇ?!」

オレの手の中にあるものを見て塔矢が目を丸くする。

「ビールじゃないか!何考えてるんだキミは!まだ16のくせに!」

「うるせーな、何飲もうがオレの勝手だろ」

「しかも4本も…」

はぁ…と溜め息をつかれた。

「オマエも飲む?」

「いらない。明日二日酔いになっても知らないからな」

いいもん、別に。

こうでもしないと今日寝れるか!

碁盤の横にご丁寧に二つ並べられている布団を見て溜め息をついた。

勘弁してくれ…。



…にしてもビール飲みながら打つってのもなかなかいいもんだな。

「あー上手ぇー!」

最高ー!

我ながらオヤジくさいなと思うけど、そんなの気にしてる余裕はない。

塔矢がちょっと欲しそうにこっちをチラチラ見てる。

ははは〜

「やっぱオマエも飲む?」

そういって差し出すとちょっと顔を赤めた。

「い、いらない」

「遠慮するなって。オレよく考えたら4本も飲めないし」

ちょっとためらって、恐る恐る手に取った。

「じゃあ…1本だけ…」

横髪を耳にかけながら、ごくりと飲み始める。

…なかなか仕草が色っぽい…。

オレの方も唾をごくりと飲み込んだ。

「うん…おいしいな」

「だろ?」

二人でビールを飲みながら打つってのもまた楽しい。

あのピリピリした感じがなくなるし、自然といい一手が出てくる。

ミスも増えるけど…。




にしても―

塔矢のやつ、ちょっと飲むスピード早すぎねぇか?

意外とザルなのかな…。

いつの間にかオレの分も飲み始めてるし。

1本だけって言ったくせに…。

「塔矢…大丈夫か?ピッチ早すぎじゃねぇ?」

「進藤っ!!」

「な、何だよ」

いきなり大声を出されてビクっとした。

「足りない…」

「は?」

気付いたら缶がすべて空になってる。

いつの間に…。

「買ってくる…」

ふらふらしながら塔矢が立ち上がった。

「え?オマエ今誰かに見られたらヤバいって。オレが買ってくるから」

「…うん」

塔矢を座らせて買いに向かう。


―待てよ、これ以上飲ませたらヤバいんじゃ…。

水の方が良くねぇか?

塔矢怒らねぇかな…。

いや、塔矢の体の方が大事だ。

やっぱりミネラルウォーターにしよう。



「塔矢ー、買って来たぜー」

「んー…?」

布団に俯せに倒れこんでる。

「ほら、もう水にしとけよ」

「んー…」

かろうじて体を動かし、仰向けにさせた。

うわっ…すげー目の毒。

浴衣が乱れて、胸が少し見えてる。

ここで襲ったら…明日の朝…自滅するな。

我に返った塔矢が怒り狂う姿が目に浮かぶ。

下手したら…絶交だ…。

そう考えると…和谷達が羨ましい―。

アイツら付き合ってんだろうな…。

両思いなんだ…。

いいな…。

オレが塔矢を手に入れられる日は果たして来るんだろうか…。

髪を少し撫でてみる。

「すげーサラサラ…、柔らけぇ…」

その手をガシっと掴まれた。

「え…あ…ごめん、勝手に触って…」

塔矢の目がオレの方をじっと見つめている。

「進藤…」

「ん?何?水飲むか?」

「しようか…」

「何を?」

塔矢の目が微笑みながら答える。

「セックス…」




え…?




「な、何言ってんだお前!」

一気に血が顔に集まってきたかのように熱くなった。

「嫌…?」

「い、嫌じゃねーよ!ただ…」

「―僕じゃ…やっぱり不服なのか…?」

「えぇ?!いや、そうじゃなくて…」

突然のことに考えが追いつかない。

「いいんだ…分かってる…。キミは僕なんかより…和谷君達の方がいいんだ…」

「え…えぇ?!」

何言ってんだこいつ…。

「キミは僕に冷た過ぎる…!…ぅ」

今度は泣き出した。

「いっつも他の子と楽しくして、僕のことなんか後回しだ!たまに打ちに来てくれたかと思うと、すぐ怒って帰ってしまう…し」

「塔矢…」

更に泣きながら続ける。

「キミ…は、ちっとも僕に触ってくれない…し、触らせてもくれない…」

それは…触ると抑えが効かなくなるから…。

「もう嫌だ…こんなの…」

「塔矢…」

涙が布団の上に落ちていく。

…少しためらったけど…抱き締めてみた―。

「オマエ…オレに触ってほしいのか…?」

「うん…」

塔矢が抱き締め返してきて―即答する。

「抱いても…いいんだ…?」

「うん…」

「明日の朝…怒らねぇ?」

「どうして怒るんだい?僕はキミが好きなのに…」



え…



「本当…に?」

塔矢がにっこりと笑う。

「うん…大好き」

そう言いながら、またオレの胸にしがみ付いて来た。


「……」

どうしよう…。

こいつ今明らかに酔ってる…。

たぶん…こんなこと言ってるけど、正気に戻ったら絶対に怒る。

怒る…所じゃすまないかも…。

でもこの好きだと言ってくれてる気持ちは…嘘じゃないと思う。

出来れば正気の時に抱きたいけど…


でも…


もう…


止まらねぇ…!


「オレも好きだよ…塔矢」

「本当?嬉しい…」

「オレも…」

そのままキスをして…塔矢を布団に押しつけた―。


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