●OH!MY GODLESS 7●



目覚めてから早数ヶ月。

筋肉がようやく付いてきて、生活に影響が出ないぐらいにまで回復することが出来た。

アキラや子供達を抱き締めてやることも今や容易いこと。


もちろんアキラを抱くことも…――










「―……ん…」


子供達を寝かし着けた後、寝室に戻って来たアキラをベッドに押しつけながら…キスをした―。


「キミが動いてるなんて…まだ夢みたい」

「ええ?!一体起きてから何ヶ月経ってると思ってんだよ」

「でもキミの寝顔を見る度に…今でも少し不安になるんだ」

「あー…それでたまに夜中に起こしてくれちゃってる訳ね」

「…ごめん」

上目遣いで謝ってくるアキラが可愛くて、もう一度キスをした―。


「んじゃ今夜は一晩中相手してもらおっかな〜」

「明日棋聖戦なのに?」

「平気平気♪」


…とか言いつつ、内心ちょっと冷や冷やものだったりする。

明日は棋聖の二次予選。

相手はまだ四段の奴なのにな。

十年前は本因坊のタイトルも持ってて、他のリーグ戦も当たり前のように残留出来るレベルだったオレでも……十年のブランクは正直言ってかなりキツい。

今や名人・王座のアキラには勝てた試しがない。

一人で子育てしながらだったのに……ホントすげぇよな、塔矢アキラって。

(今は入籍して進藤アキラだけど)




「…そういやオマエってさ、もしかしなくても…経験ナシで子供産んだんだよな」

「聖母マリアみたいだろう?」


ふふっと笑った彼女は…聖母というよりは一人の女の顔。

じゃあ聖女?

いやいや、オレが汚しちゃったからもう聖女じゃないよな。

まだ足りないけど。

もっともっと…オレの手で汚したい…――



「オレも…まだ夢みたいかも。オマエを抱いてるなんてさ…」

「そう?でももしキミが刺されなかったら、僕達はあの晩に…結ばれてたと思うよ?」

「だよなー。あーあ、何で刺されちまったんだろ。惜しいことしたぜ」

「僕を…庇ってくれたんだよね?ありがとう…」

「十年も眠ってたら感謝される立場じゃねぇけどな…」


それでもやっぱり…刺されたのがオレで良かったと思う。

アキラを守れて良かった。

オレはコイツみたいに強くないから……もし逆に刺されたのがアキラだったら…

眠りについたのがアキラだったら…

絶対に自分を責めて責めまくって……嫌な結果になってた気がする。

オレで良かった…。






「ママぁ…パパぁ…」


その声に二人でバッと振り返ると――娘が涙目を擦りながら立っていた。


「こわいゆめ…みた…の」

アキラが素早くパジャマを着て、即座に娘を抱き上げて…よしよしと頭を擦ってやってる。


「もう大丈夫だよ。今夜はパパとママと一緒に寝ようね」

「うん…」


いいよね?とアキラがオレに視線を向けて来たので、口許を少し緩めてそれを承諾した。

…本当はいい訳ねぇけど。




「パパ…おやすみなさい」

「お休み」


それでもオレとアキラの間で安心して眠りにつく娘の姿を見ると……いつの間にか気持ちの高ぶりは萎えてくる。

今まで構ってやれなかった分、たまには夜も父親面するのも悪くないかな。

チュッと娘の額にキスをして…優しく髪を撫でてやった。


「…神夜はホントお前にそっくりだよな〜」

「そうだね。煕はキミにそっくりだけど」

「次…産まれてくる子はどっちだろな」

「………」

少し赤くなったアキラの額にも…同じように口付けた―。


好きだよ…アキラ。

人生って何が起こるか分かんねぇし、作れるうちにいっぱい頑張っておこうな…――














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