●OH!MY GODLESS 8●


ヒカルが目覚めてから早一年。

僕は酷い悪阻に悩まされていた――



「…気持ち悪い…」



リビングのソファでぐったりしていると、娘が心配そうに近寄ってきた。


「ママ…だいじょうぶ?」

「うん…平気。この悪阻はね、ママにとっては嬉しいことだから」

「あかちゃん?」

「うん」

もうすぐ四ヶ月目に入る僕のお腹を、娘が興味津々そうに撫で始めた―。


初めての自然妊娠。

ヒカルと愛を育んだ上で出来た子供。

世間一般ではごく普通なことが……僕にとってはすごく嬉しい。



「アキラ〜神夜〜、ご飯出来たぞ〜」

「うんっ!」


小走りでダイニングに急ぐ娘を見送った後、ヒカルが僕に近付いて来た。


「大丈夫か?」

「うん…何とかね。今夜のメニューは何?」

「カレーだけど、オマエは食べれないだろうから別メニューな」

「そう…助かるよ」


完全に体が回復したヒカルに、今度は僕の方が気遣われている。

食事も掃除も子供達の相手も、彼は進んでしてくれるからすごく助かる。

十年間…諦めずに待ってて良かったって、彼の優しさや今の幸せを感じながら…つくづくそう思う。










「煕は来年もう小学校に行くんだよな〜」

「うんっ!パパ、はやくランドセルかって!」

「来年になったらな」

「カグヤも!」

「神楽はランドセルの前に幼稚園用の鞄だろ?」

「うんっ!スミレちゃんとマナブくんといっしょにいくのっ」


澄莉ちゃんも学君も近所に住んでる、神夜と同い年の友達の名前。

早いもので神夜はこの四月から幼稚園、煕も来年には小学校だ。

夏頃には今お腹にいる子も産まれて…、これから我が家はもっともっと慌ただしくなっていくんだろうなって思う。



「ママ。スミレちゃんはね、パパのこと『おにいちゃん』ってよぶんだよ」

「へぇ…」

「はは、オレってば見方によってはまだ十代に見えるからな〜♪」

「全く、キミの童顔はいい迷惑だよ。『年の差カップル』だとか『年上女房』だとか、棋院でも近所でも噂されまくりなんだから!」

「ホントはオレの方が3ヶ月年上なのにな〜」


十年間眠っていたヒカルの顔は、相変わらずシワ一つシミ一つないキレイな顔。

反対に僕の方は…子育て疲れた酷い有様。

でも僕は年相応の顔だと思う。

変なのはヒカルの方だ。


「でもアキラだってさ、見方によっては二十代半ばに見えるぜ?」

「…そう?」

「おう!一年前より断然キレイだぜお前」

「うん!ママきれ〜い」

「キレ〜イ!」

「…ありがとう」


ヒカルにも子供達にもそう言われて…ちょっと嬉しくなった。


だけど子供達が食べ終わって子供部屋に行ってしまった後、ヒカルが現実的なことを言ってくる――



「やっぱこの一年でいいエッチいっぱいしたもんな〜。オマエの体も若返るよな♪」

「え…?」

「知らねぇの?いいエッチすればする程どんどんホルモンが分泌されるからさ、その分肌がツルツルになってくんだぜ?」

「そ…そうなんだ?」

「うん。だからさ、産まれたらまたいっぱいしような♪」

「…うん」

「じゃ…今は取りあえず――」


キスだけ…と、僕達はゆっくり唇を合わせた――


舌も入れられて…口内を貪られるようなこの激しいキスに…うっとりとなる。

キミが寝てる間に僕が勝手にしてたキスとは全然違う。

キミが起きてる証拠。

キミが目覚めてる証拠。



どうかこの幸せが…永遠に続きますように…――














―END―















以上、聖母マリアならぬ聖母アキラ話でした〜(笑)
たまたまキリスト系の本を読んでまして、処女で子供を〜というのをヒカアキラ子に転換してみたのが今回のお話。
神でなくても現代の医学を駆使すればそれも可能よ!…と。
(だから題がGODLESSなんです…)
色々…色々痛い話でゴメンなさい(汗)
そもそもヒカル…何で刺されたぐらいで十年も眠ってんだよ…。
(たぶん夢の中で佐為に再び会えたのが嬉しくて、どんどん続きを!…てな感じでずるずる?)
そしてこんなにヒカルのことをけなげにずっと想ってるアキラを書いたのも初めてで……何だかすごく新鮮でした(笑)
五年が限界だったみたいですが…。
ヒカルの二十代が寝てる間に終わったっていうんなら、アキラの二十代はお見舞いで終わりってことでしょうか。
(後半は子育てで現実逃避に走りましたが)
話はかーなーりシンミリした話になってしまいましたが、最初っからデキあがってるヒカアキを書くのはすごく楽しかったです!