●OH!MY GODLESS 6●




夢を見ていた。



それは塔矢とも佐為とも出会ってなかった頃から始まった…長い夢。

一日一日がすごく鮮明で…まるでオレの人生をリプレイされてるみたいだった。


遊びまくってた小学校の頃。

佐為と出会って…塔矢と出会って……囲碁を知った瞬間から全てが変わった。


そのうち院生になって…プロになって……

佐為が消えて…

北斗杯に出て…

塔矢と付き合い始めて…

本因坊取って…

プロポーズして…

また同じように刺されて…


そして――





――目が覚めたら病院のベッドの上だった――













真っ白な見たことのない天井。

一瞬で病院だと分かったのは、オレの腕に点滴のような針が刺さってたから。

あの男に刺された後…病院に運ばれたのかな?

生きてるってことは…そんなに大したことのないケガだったのかも。

その証拠に既に痛みが全くない。


ふと視線を左に移すと―――小さなオレがいた。

その横に更に小さな塔矢。




「………」




…まだ夢の中なのか…?





「進藤っっ!!」

「え…?」

そのガキ共の後ろにいた女性が、オレに抱き付いてきた。

「進藤っ!進藤っ!!進藤っっ!!!」


この声…


この顔…


もしかして……


「と…うや?」

「そうだよ!僕だよ!分かる?!良かっ…た…」


そう言って嬉し涙を流す塔矢は……オレの知ってる塔矢と少し容姿が違う…気がする。



「オマエ…老けた?」


バチンッ


思いっきり張り手が飛んで来た。



「…ってー…」

「あ、ごめん。キミが余計なことを言うからつい…」

「いや、オレも悪かった。老けた…じゃなくて、大人っぽくなった、だよな」


お互い少し笑ってしまった――





「それより塔矢…何か体に力が入りずらいんだけど…」

「そりゃそうだよ。10年も眠ってたら筋肉もなくなる。まだ話せるだけマシだ」

「…え?」


起きるのを手伝ってくれながら塔矢が発した台詞に…耳を疑った――



「じゅ…う年?」

「ああ」

「え…何それ。有り得ないって…オマエ冗談キツ過ぎ…」

「嘘じゃない。レストランで刺されたことは覚えてる?」

「う、うん…」

「あの日からもう10年経ってしまったんだよ。今年は2017年だ」

「……マジ?」

「ああ」

「……」



…てことは


オレ……もしかして……さささ


「30さ…い?」

「計算早いな。その通りだ、キミも僕ももう三十路だよ」



……うっ…そ……


オレの華の二十代…寝てる間に終わっちまったのか?!







「あ、先生呼ばないと。キミの両親にも…。電話してくるから、二人共ここで大人しくパパと待ってるんだよ?」

「「うん」」



「??!」



塔矢が放った言葉に…またしても耳を疑ってしまった。


「と、塔矢、この子供……オマエの…?」

「あ、ごめん。紹介が遅れてしまったな。僕らの子供の熙と神夜だよ」




は?




「オマエと…誰のって?」

「キミ」

「…って言われてもオレ…、オマエと子作りした覚えねぇんだけど…。…まさか寝ながら…オマエを襲っちまった…?」

「まさか」


塔矢がプッと吹き出した。


「ごめんね…、キミの了解も得ず勝手に作って…。もちろんキミの両親は合意の上だけど…」

「勝手に…って……どうやって…?」

「知りたい?」

「…う、うん…一応…」

「キミの精子を少し拝借してね…体外受精したんだ」



体外…受精…?



「それって……試験管で何とかっていう…アレ?」

「うん…そうなるかな」

「………」


再び子供の顔を見ると……塔矢の言ってることが本当だって…嫌でも分かる。

男の子の方なんてオレと瓜二つだし…。

でもこんなこと…オレの承諾抜きで勝手にしていいことなのか?

そういう関係の法律ってなかったっか?


…って今更何言ってももう遅いけどさ…――




「――ごめん」

「………」


眉間にシワを寄せてるオレを見てか、塔矢がもう一度謝ってきた。

目には…涙が溢れてる…――


「一人じゃ…耐えられなかったんだ…。ただひたすら待ち続けることが辛くて…、もう二度と目覚めないんじゃないかって不安ばかりが募っていってしまって…」

「塔矢…」


涙を零してる彼女の下半身に、子供達がぎゅっと抱き付いた――


「ママをおこらないで!ママ、パパのことがスキなだけだもん!」

「カグヤもサビしかったもん!」


ビクビクしながらオレの反応をみてる塔矢とオレの子供達。

別に怒らないよ?

怒るわけがない。


むしろ…すげぇ嬉しい。


塔矢が十年間もオレを待っててくれたことが。

変わらず好きでいてくれたことが。



「オレの方こそごめんな…。もっと早く起きてやれなくて…」


首をフルフルと横に振ってくれて、動かないオレの体に塔矢の方から抱き付いてきてくれた――


「すごく嬉しいよ…。やっと、やっと起きてくれた…」

「パパっ!」

「パパぁ!」

子供達も続けて抱き付いてきた。


…可愛いな。

今日初めて会ったのに、塔矢との子供っていうだけで…抵抗なく受け入れれる気がする。

愛情を注げそうな気がする。


早く体を元に戻そう。

んでもって、今度はオレの方から…塔矢や子供達を抱き締めてやるんだ――















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