●OH!MY GODLESS 4●


進藤が眠りについてから早5年。

25歳になった僕は、両家合意の元――ついにそれを実行することにした。



――体外受精…だ――



やり方は至って簡単。

採取した精子と卵子を一度外で受精させてから、再び子宮の中に戻すという不妊治療でもお馴染みの方法。

人工授精よりも確実。


そうやって妊娠した僕を…キミはどう思う?

きっと起きたらびっくりするだろうね。

結局一度も抱き合わなかった僕らの間に子供が出来るなんて……変な話だよね。

僕だって出来れば普通にキミと体の上でも結ばれて……普通に身ごもりたかった。



でも…もう限界なんだ。


5年がもう限界点。

少しくらい現実逃避してもいいだろう?

寂しさと…満たされない想いを……この子が救ってくれるんだ。

今にも気が狂い出しそうな僕に…安らぎを与えてくれるんだ――










「塔矢!」


産休届を事務に出しに行った帰り、一階のロビーで和谷君と伊角さんに呼び止められた。


「しばらく休むんだってな」

「うん」

「今何ヶ月目なんだ?」

「8ヶ月かな」

「男の子なんだってな」

「そうだよ」


次々に質問してくる彼らが僕のお腹を興味深そうに見て来る。

キミらだってもう子持ちだし、このお腹の大きさは珍しくも何ともないはず。

だけどこの子の父親が進藤だと知ってる彼らは……正直複雑な気分なんだと思う。

……口には出さないけど。



「…進藤に似た子が産まれるといいな」

「うん…そうだね」

「一人で心細いと思うけど、頑張れよ」

「いいや、進藤だってきっと寝ながら応援してると思うぜ」

「…うん」


自分の為にこんな身勝手なことをしようとしてる僕に……彼らは優しい言葉をかけてくれる。


嬉しさで…涙が零れる…――



「塔矢…」

伊角さんが僕を撫でるように…優しく頭に手を置いてくれた――

「塔矢、お前は間違ってないよ」

「………」

「5年もずっと耐えて来たんだ。進藤だってきっと分かってくれる」

「そうそう。子供の一人ぐらい貰わないとやってられねぇよな!」

ハハっと和谷君が軽く笑う。

でもその軽さが…今の僕を救ってくれる――


「一人と言わずいっぱい作っちゃえよ。んでアイツが起きた時に驚かせてやんの」

「ははは。そのシーンぜひ拝みたいなぁ」

僕もその様子を想像して…思わず少し苦笑いしてしまった。


進藤…。

キミはいい友人をたくさん持ってるんだね。

皆…キミがいつかは起きると思い込んでるよ。

待ってるよ。


僕も……待ってるから。

もうすぐ産まれるこのこと一緒に…ずっと待ってるからね。


ずっとずっと…これからも――










――そうしてそれから約2ヶ月後


僕は進藤似の元気な男の子を出産した――














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