●OBESITY MISUNDERSTANDING 2●
「どうしよう!和谷!」
塔矢とのデートから数日後。
新年初の研究会の日に、オレは真っ青な顔で和谷に詰め寄った――
「どうかしたのか?」
「塔矢が…塔矢が…」
「塔矢が?」
「…妊娠しちゃったかも…」
「はぁああ?!」
オレの告白に大声をあげてきた和谷の口を慌てて塞いで、無人の検討室に押し込んだ。
「どうしよう…」
「どうしようってお前…避妊してなかったのかよ?」
「外には出してた…」
「ばーか、それは避妊って言わねぇの」
「危険日はちゃんと付けてたよっ」
「あのなぁ、聞いた話だと10代20代は危険日もずれやすいらしいぜ?」
「んな大事なことは先に言って…」
お互いハァ…と大きな溜め息を吐いてしまった。
「どうしよ…オレまだ17なのに」
「塔矢は何て?」
「まだ話してない…」
「ていうか本当に妊娠してるのか?」
「分かんない…。でもアイツ…グレープフルーツ飲んでたし…」
「は?」
「食欲もないみたいだし…、エッチもしたくないって…」
「…ヤバいな」
「だろっ?!」
思わず頭を抱えて蹲ってしまった。
あー…マジでどうしよう。
新年そうそう悪夢だ。
オレまだ子供なんて欲しくない。
父親なんて重苦しくて責任重大なものになりたくない。
まだまだ自由でいたい。
塔矢だって嫌だろ?!
囲碁だって今が一番伸び盛りで、波に乗ってるのに――
「ていうかお前ら…喧嘩ばかりしてんのかと思ってたけど、やることもちゃんとやってたんだな」
「ったり前じゃん…。付き合ってもう2年だし…」
エッチなんかもう何十回何百回としてる…。
上手く切り抜けてきたつもりだったのに……
とうとうやっちゃったのかな…オレ。
「マジでどうしよ…」
「どうしようも何も、まずは塔矢と話し合ってこいって」
「塔矢が産みたいって言ったらどうしよ…」
「お前はおろして欲しいわけ?」
「当たり前じゃん!誰がこの歳で親になんか…」
「じゃあちゃんとそう塔矢に言えよ」
「でも言ったら……確実にフラれる」
「塔矢と別れたくはないんだ?」
「ったり前だろ!アイツのこと……好きだもん」
誰よりも好き。
一番大事。
だからもし二十歳過ぎてこの状況になったらさ、オレも覚悟を決めれる…と思う。
だけど現実は17…。
まだ結婚も出来ないただのガキだし…。
「和谷なら…どうする?」
「彼女が妊娠したら?」
「うん」
「んー…取りあえず彼女の意見優先だな。産みたいって言ってきたら結婚してもいいし」
「いいよな18歳は…」
「お前だってあと8ヶ月もすれば18だろ?ちょうどいいじゃん。誕生日と同時に結婚して責任取れば?」
「簡単に言うなよ…」
「だって仕方ないだろ?それだけのことをお前はしでかしちまったんだから」
「そりゃ…そうだけどさ…」
簡単に彼女の意見優先って言える和谷はすごいと思う。
オレには無理。
やっぱり自分を優先しちまう。
だけど塔矢は大事。
絶対に別れたくない。
出来ることなら……アイツのしたいようにさせてやりたい。
塔矢…。
オマエはどうしたい?
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