●7 DAYS LOVERS 5●
「…ん…」
徐々に深く合わさって…、また頭の中が朦朧としてくる…。
…昨日からもう何回目になるんだろう…。
だいぶ…慣れてきた気がする…。
「…あ…、はぁ…」
少し唇が離されて、進藤の熱い息を感じとる。
「…塔矢」
「ん…?」
「明日…手合いあるけど…、してもいい…?」
一応手合いのことは分かってはいるんだな。
明日は天元戦の2次予選…。
僕の相手は失礼だがそんなに大したことはない。
普通に打ったらまず負けない。
大丈夫…。
「…負けたら…君のせいだからな…」
負ける気はしないが、わざとそう言って進藤の肩に顔を乗せてみる。
「うん…、オレのせいだな…」
ちょっと嬉しそうに答えて、髪にキスをしてきた。
「え…?」
ぎゅっと抱き締められた体をそのまま押し倒そうとしてきたので、急いでストップをかける。
「ちょ、ちょっと待って進藤!キミ、まさか今からするつもりじゃ…」
「え?ダメ?」
冗談じゃない!
「まだ食事の途中じゃないか!それに、まだ6時だ!」
「だから?」
「だ、だから、ちゃんと食べ終わって、片付けもして、もう1、2局打って、お風呂に入って、…それからだ!」
「え〜〜〜〜〜っ」
マジかよ、とブツブツ言ってくる。
「でないとヤらせないからな」
「ちぇっ…、分かったよ」
そう言ってしぶしぶ夕ご飯の続きを食べ始めた。
今は塔矢を食べたいのに、とか、まぁ楽しみは後に取っておくか、とか、ずいぶん失礼なことを色々呟いていたが、無視だ。
「あ、そうだ。塔矢、一緒に風呂入ろうぜ♪」
バシャ
食事の後、一息つくために飲んでいたお茶を思わず零してしまった。
「ったく何やってんだよ」
「き、君がふざけたこというから!」
一気に顔が真っ赤になっていくのが分かる。
「ふざけてなんかねーよ。なぁ一緒に入ろうぜ〜」
「絶対、嫌だ!」
全く冗談じゃない。
今度は風呂だ?
どうせまたイヤらしいことを考えているんだろう。
お風呂の後でちゃんとするって言ったのに、なんで風呂でまでしたがるんだ?
「な〜塔矢〜」
「断る」
「ちぇっ…、何だよ風呂ぐらいいいじゃん。同じ男なんだし、恥ずかしいがることねーのに。お前って女みてぇ」
そう言うと、むくれて向こうを向いてしまった。
恥ずかしいとか恥ずかしくないとか、それは男女の違いではなくて性格の問題だと思うんだけど…。
それにしても進藤は盛りすぎだ。
きっと僕が止めなければ1日中ヤっていたいのに違いない。
…そう思うと…
かなり落ち込む…。
ご、碁は…?
進藤にとってこの家でする目的はそれしかないのだろうか。
僕が君に求めるのが碁ばかりなのと同じように…、君が僕に求めるのは…。
今更ながら何でそんな進藤を家にあげてしまったのかと、ちょっと後悔する…。
…まぁこれから寝るまでの間はちゃんと打ってくれるのだったら…、それでいいけど…。
君と打てないよりかは…マシかな…。
「…ほんとオマエが女だったら良かったのに…」
―はい?
僕が悩んでることとは裏腹に、また進藤の方はくだらないことを言い出した。
正直頭が痛くなる。
「…そしたら、こんなに悩むこともねーのに…」
「え…?」
机の上に寝そべってそう呟いた進藤の目は意外にも真剣だ。
「…もし、お前が女だったらさ…、普通に告白して、付き合って…、プロポーズして…結婚して…、子供も作れんのに…」
勝手になに人の人生決めてるんだ、と少々呆れたけど…、嫌な気はしなかった。
「お前似の女の子とか、すんげー可愛いだろうな…」
「…悪かったな、男で」
どうせ僕は子供なんて産めないよ。
「ううん、悪くねーよ」
拗ねたように言った僕の方を見て、少し進藤が笑った。
「オレ、お前が女だったら絶対ここまで来てねーもん。プロにもなってないかも…。お前がずっとオレの前に立ち塞がって、ライバルだったからここまで来たんだ。女だったら本当のライバルにはならねぇよ…。口では何とでも言えても、どこかで甘さが出る」
「そうだね…」
いくらライバルライバル言ってても、男女の場合、それが恋愛感情に変わればそこで終わりだ。
夫婦同士の棋士は上手くいかないことが多い…。
敵襲心がなくなる、って誰かが言ってたっけ。
本気の対局がしたくても出来なくなるって…。
結局は碁も、その感情も両方ダメになってしまう―。
「お前のことは好きだけど、それでも対局にひびかないのは…やっぱりお前が男でどこか割り切ってる部分があるから…かな…」
どんなに望んでもいつかは絶対…。
「…じゃあ、もうこんなこと…やめない?」
「嫌だ」
どうせ終わりが来るんだから、この際やめにして碁だけに専念しよう、という意味で言った言葉を即答で断られる。
「まだ1回しかしてねーし、全然足らねぇ。それに俺、一生この生活でもいいや」
…さっき言ってたことと全然違うじゃないか…。
「全くキミは…本当に…」
呆れる…。
「だから一緒に風呂入ろうぜ?」
「関係ないだろ…それとは…」
結局、嫌嫌言いながらも流される自分に嫌気がさした。
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