●NEVER 1●






今年のバレンタインに、僕は長年想い続けてきた進藤ヒカルに好きだと告白された。


「付き合ってほしい」

そう言われて僕の気持ちは一気に天にのぼり――

「断ったらもう二度とオマエと打たないからな」

そして一気に地に堕ちた――


プライベートのみならず公式戦でも二度と打たない。

オマエとあたった時は全部不戦敗にしてやる。


そう言い放った彼の目は本気だった。

そう脅せば、僕が断ることはないと思ったのだろう。

それ程本気で僕が欲しいんだ――そう思うと嬉しかった。


「…分かった。キミと付き合うよ」


こうして僕らは恋人同士になった。








あれから一ヶ月。

今日はホワイトデー。

いつもの待ち合わせ場所である駅前のカフェで、僕は彼を待っていた。

…溜め息をつきながら。



やっぱり最初の始まりがそもそも悪かったのだ。

この一ヶ月、彼は事あるごとに

「拒否したら打たないからな」

と僕を脅し続けてきた。


別にそんな必要ないのに。

僕だってキミのことが好きなのに。

デートだって喜んでするし。

手を繋ぐのだって、キスだって、セックスだって。

何だって喜んで受け入れるのに。


でも彼はそんな僕の気持ちを知らないから。

知らないから脅し続けてくる。

その度に…胸が苦しくて仕方ない。

打たないと言われることがどれだけ僕にとって辛いことか…。

何回も何十回も言われ続けて、僕は正直参ってきていた。



疲れた……



彼と恋人同士になれてあんなに嬉しかったはずなのに……今はもう別れたいとさえ思う……




そして極めつけはつい先週のあのやりとりだ。

思い出すと…自然と涙が滲んでくる。



「今日泊まってけよな」

彼の部屋でいつものように打っていた時だった。

「あ…、泊まりたいんだけど、今日は…その…」

「拒否したらもう打たないって言ったよな?」

まだ途中の石を彼が片付けようとした。

「違うんだ!今日は…その、生理中で…」

「え?」

ああ…そうなんだ、と一瞬頬を赤めて諦めてくれた彼がいた。

でも、次の瞬間――


「…シたくないから、んな嘘ついてんじゃねぇだろうな?」

「…え?なに言って…。そんなわけ…」

「ふーん…じゃあ今日は風呂場でしようぜ。それなら汚れても平気だし」

「…冗談だろう?」

「拒否ったらどうなるか分かってるよな?」

「……っ」


最悪なことに、特に多い日だった。

それを進藤に見られること自体…恥ずかしくて死にそうだった。

おまけに生理中はそんな気分にはならない。

ならないのに、無理矢理挿れられて。

悔しいことに…血がローション代わりになって。


血だらけになっていく下半身を見て、僕は、こんなの、もう恋人同士じゃない!と思った。

人権なんかない。

こんなの…ただの奴隷じゃないか―――









「塔矢、お待たせ。待った?」

「…ううん」


今日はホワイトデー。

ちょうどいい…その名の通り白黒つけようじゃないか。

キミがこれからも今のような態度を取るというのなら。

僕を脅し続けるというのなら。

もう…別れてやる――











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