●MY VIRGIN 1●
和谷の研究会は若い奴らが多い。
面倒見のいい和谷が、次々に低段者や院生の奴らを誘ってくるからだ。
でも何故か女流の奴は一人もいない。
…だから嫌なんだよな。
研究会が終わった後、野郎ばかり大勢で泊まると……必ずそっちの話になるから―。
大半が中高生なこの研究会は、女性経験のない奴らが多い。
で、そいつらは冴木さんを筆頭とする大人の先輩達に色々教えてもらうわけだ。
女を喜ばすプレゼントやらデートスポットから始まって――
正しいキスの仕方だとか――
上手くホテルに誘うコツだとか――
ベッドに押し倒す時のポイントだとか――
その先のもろもろの重要な箇所を――。
そしてそのうち
「進藤さんも何かいい情報あったら教えて下さいよ〜」
と、部屋の角で一人雑誌を読んでるオレにも声がかかる。
既に彼女と付き合って3年以上経ってるオレは、当然のように経験豊富だと思われてるらしい。
「んー…別にそんなにいい情報とかないし」
といつも適当に流してる。
…本当のことなんか言えねーし…。
まだ童貞…だなんてさ…。
オレは塔矢と付き合って既に3年だ。
3年と言えば一通りのことは既にし終わって、むしろ飽きが入り始めるぐらいの年数だ。
だけど…オレらはまだ一度もしたことない。
キスだって軽く触れる程度のしかしたことない。
言っておくが、別にオレは奥手ってわけじゃないからな!
する度胸がないわけじゃない!
原因は相手にあるんだ!
――そう
原因は塔矢にある――
塔矢は生まれてくる年代を間違ったんじゃねーのか?と思う程、古い考えを持つ女だ。
修道院育ちか?って思う程の潔癖性。
当然セックスなんてものは結婚してから!が彼女の中での常識だ。
おかげで今まで指一つ触れさせてもらったことがない。
2年経とうが3年経とうが清い関係のまま。
じゃあもう18だし結婚しようぜ!と言ったこともあるが、最低でも20歳までは嫌だって…。
…つまり少なくともあと二年はお預けってことだ。
くそっ!
結婚したら覚えてろよっ!
「進藤っ!やる気あるのか?!」
「…なーい」
適当に打ってたら、塔矢がついに声をあげた。
ゴロンと畳に寝そべって天井を見つめてみる―。
「はぁ…。じゃあもう今日はやめておこうか」
ガチャガチャと碁石を素早く片付け、パソコンの画面に向かい始めた。
「何すんの…?」
「棋譜整理。今週分のが堪ってるんだ」
「…オレが来てるのに?」
「だってキミはもう打つ気がないんだろ?」
おいおい…。
碁以外でオレとしたいことはないみたいな言い草だな…。
「外に遊びに行かねぇ?」
「こんなに暑いのにか?日射病になる」
「……」
体を起こして、塔矢に後ろから体重をかけてみた―。
「…なに?進藤、重いんだけど…」
髪にキスをして、耳元で囁く―。
「…なぁ、ちょっとだけスキンシップしねぇ?」
「また?この前キスしたばかりじゃないか」
それいつの話だよ…。
つかどうよ、この考え…。
本当に現代の18歳か??!
「ダメ。あんなの全然足らねぇもん」
「……仕方ないな」
溜め息をつきながらそう言うと、後ろに振り返って――目を閉じてくれた―。
「……ん…―」
…だけど、ただ唇を合わせるだけのキス―。
物足りねぇ…―。
「んっ…、ん―」
少しついばんで、いつもよりちょっとだけ長いキスをしてみた―。
「――…ぁ…はぁ…」
唇を離すと、塔矢は目をゆっくり開けて…そのまま少しぼんやりしている―。
「…な、舌入れてもいい?」
「舌…?そんなもの…どうして…?」
「いいから、ちょっとだけ…―」
もう一度キスをして、そのすき間からゆっくり中へ忍ばせた―。
「…ふ…、…んっ…―」
口内を探って――絡めるように塔矢の舌に触れてみる―。
「―…んっ…、ぁ…―」
極限まで唇を押しつけて、息の続く限り貪ってみた――。
「―…はぁ…、は…ぁ―」
口を離すと、塔矢は凭れかかるようにオレの肩に顔を埋めてきた。
「…塔矢」
耳と髪に同時にキスをしながら…体をぎゅっと抱き締めた―。
「少し…触ってもいい?」
と聞きながらも、服の上から胸に触れてみた―。
「だめだよ…。言っただろ…?結婚するまでそういうのは無しだって―」
触ってるオレの手首を掴んで、離そうとしてくる。
「いいじゃん、服の上からぐらい…。ちょっとだけ――」
「………」
困ったような顔をしながらも、掴んでた手を離してくれたので…そのまま続けてみる―。
真っ赤な顔をして視点を合わさない目でぼーっとそれを見つめてる。
たまにビクっとなって目を瞑るのは、感じてる証拠かな…?
直に触ったら怒るかな…。
「塔矢…―」
もう一度口に深めのキスをして――手を服のすき間から入れてみた―。
「…やっ…―」
すぐにキスも解かれ、手を剥しにかかり始めた―。
「進藤の嘘つき…っ!服の上からだけだって言ったくせにっ」
「オレ嘘つきだもん。知らなかった?」
「……知ってる」
呆れたようにオレを睨みつけてきた。
「いいじゃん触るぐらい。別に減るもんじゃねーし」
「でも…」
戸惑ってる塔矢の頬に軽くキスをして、体をイスから下ろした―。
いつもの正座じゃなくて、足がくずれてる格好がまた堪んねぇよな…。
眉を傾けながらも恥ずかしそうに下を向いてる塔矢を、ゆっくり抱き締めてみた―。
「塔矢…好きだよ―」
「……ありがとう」
耳元でそう囁くと、観念したように目を瞑って体の力を緩めてくれた―。
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