●MUKO 2●
「一緒に飲まないか」
塔矢に宅飲みを誘われた時、絶対何かあるなと思った。
知らないフリ、何も気付かないバカな男のフリして彼女を部屋に招き、一緒に楽しくお酒を飲む。
進め方が異常だったから、ああ…オレを酔わせたいんだなってすぐに理解した。
ビール3缶、酎ハイ2缶、ワイン1瓶……このくらい飲んだら酔っ払ってもおかしくないか?
頭は全くの正常だったけど、生まれつきオレは肌が白いから。
顔が赤くなって酔ってるように見えるらしい。
「進藤?大丈夫か?」
「んー…」
塔矢が肩を貸してオレをベッドまで運んでくれる。
オレを寝かせようとして、自分もベッドに倒れてる。
「進藤…」
手を回されてキスされた時には、
(やべぇ…オレ、今夜塔矢を抱けるんだ…)
と興奮した。
頭はますますアドレナリン出まくりでバッチリ目覚めた。
「塔矢…」
「…ぁ…っ…」
どういうつもりで彼女がオレを求めてるのか分からなかったけど――オレは塔矢が好きだ。
ずっと言えなかったけど昔からずっと好きだったから(だから囲碁サロンにも足蹴なく通ってたんだぜ!)、この状況が嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「――…ぁ…ん…っ」
身体中を愛撫して、身体で彼女に愛を伝える。
キスも何度もして、丁寧に下半身も施していく。
「…は…ぁ…」
「…挿れてもいい?」
「ん…」
塔矢と初めて繋がって驚いたのは、彼女が初めてだったということ。
マジか。
でも何で初めてなのに、こんなただの酔っぱらいに襲われるっていう残念なシチュエーションを選んだんだろう。
単に処女を捨てたかったのか――それとも――
「あぁ…っ――」
「塔矢…っ――」
お互い達してまたキスをしながら息を整える。
あくまで酔ってるテイだから、もちろんオレは付けてない。
思いっきり中に溢れさせたのに彼女は何も言わなかった。
(もしかして、それが目的か…?)
終わった頃にはもちろん終電は終わっていて、オレらはそのまま狭いシングルベッドで肌を密着させて眠りについた。
翌朝――5時。
まだ日が昇る前に塔矢が体を起こした。
そのまま帰ろうとしたところを――オレは彼女の腕を掴んで阻止した。
「…待てよ。どこ行くんだよ?」
「え?あ…起きたのか…」
「オマエどういうつもり?」
「え…?」
「どういうつもりで、オレとあんなことした訳?」
「……別に」
「別に?オマエ初めてだったじゃん。初めてなのに、アレでいいのかよ?」
「か…構わない。ちょっと興味があっただけだ。じゃあ、」
帰るから――と手を振りほどこうとしたから、オレは更に力を込めて自分の方に抱きよせ、再び彼女を組敷いた。
「進…藤…?」
「へぇ、塔矢でもセックスに興味があるんだ?じゃ、もう一回しようぜ」
「え…?」
「一回目なんて痛いだけだろ。次はもっとよくしてやるよ」
「……」
「嫌?」
「……嫌じゃない」
赤くなって、視線を逸らすように横を向く。
その首筋にオレは吸い付いて、舌でもなぞっていった。
「あ…っ、進ど…ぉ…」
胸にまで到達した舌は先端の突起に吸い付き更に弄っていく。
塔矢の息が荒くなってきた。
オレの愛撫で感じてくれるんだと思ったら嬉しくて。
でも同時にもっと気持ちよくしてやろう、もっと苛めてやろうって気になった。
「――…ぁ…っ、やだ…っ」
彼女の脚を開いて、一番大事な部分に舌を這わす。
指でも弄っていく。
オレが昨日出したやつと彼女の愛液で既にぐちょぐちょ。
白濁色の液体が彼女の中から出てくる所を見て思わず舌舐めずり。
(やっべぇ…超エロい)
我慢出来ず、直ぐ様オレは自分の息子をその穴に押し込んだ。
「ぁ…っ、んっ、ぁん…っ」
出し入れして、腰を沈め、打ち付けていく。
昨日より彼女の声は明らかに高く、感じてくれてるのが分かった。
敢えて聞いてみる。
「は…、塔矢、気持ちいい?」
「ん…、いい…よ、すごく…っ」
「また出していい?」
「うん…いいよ、ぁ…っ」
ふぅん…いいんだ。
コイツやっぱり、これが目的か?
「塔矢…好きだ」
「進……っ、ん…――」
繋がったままキスして、キスして、キスして。
どさくさに紛れて告白する。
もちろん塔矢は半分聞いてないし、今の彼女にそんな余裕はない。
ベッドの中だけの戯れ言だと思われてるかもしれない。
それでもオレの口は何度でも勝手に愛を囁き続ける。
「塔矢…っ、好きだ…っ」
「ぁ…ん、は…進…ど…」
「も…無理、…は…っ」
「あぁ…っ――」
お互い上り詰めた後、またキスをする。
もう何度目になるのか分からない口付けに、オレらってもしかして両想いなんじゃ…と思えてきた。
「塔矢…オレと付き合ってみる?」
一世一代の告白のつもりだったのに。
塔矢にフッと笑われた。
「勘違いしないでくれ」
「え?」
「僕は今まで経験がなかったからちょっとしてみたくなって、手っ取り早くキミを誘ったたけだ」
「手っ取り早く…?」
「彼女いないって前に言ってたし、キミも溜まってるんじゃないかって思って。だから拒否しないだろうって踏んでた」
「…誰でも良かったってことか?」
「あ…いや、それは違う。キミじゃないと駄目だ」
「……」
オレの一世一代の告白のつもりだったのに。
よく分からないけどフラれたらしい。
オレが不満そうな顔をしてると、塔矢は慌ててフォローしてきた。
「で、でも、予想通りキミとのセックスはすごく良かった。だから…」
「…だから?」
「だから、またしよう!」
「……今から?」
「いや、今日はもう棋院で指導碁の予定が入ってるから、無理だけど。また、今度囲碁サロンの帰りとか…」
「ふぅん…」
それって、何か…セフレ?
何だかなぁ…。
ま、いいや。
オレが囲碁サロンに寄るのって、結構な頻度だし。
その度に今日みたいなエッチしてたら、そのうち子供出来るだろうし。
そしたらもういきなりプロポーズしよう。
その作戦でいこう。
「分かった。碁会所で打った後な。約束だからな?」
「うん、いいよ」
それがちょうど一年前。
あれ以降、オレらは馬鹿真面目に囲碁サロン?夕飯?オレん家でエッチを繰り返している。
そして今、目の前で一緒に飯を食ってた彼女の様子が明らかにおかしい。
さっきまでとは一点、調子が悪そうなのだ。
敢えてオレは聞いてみる。
「塔矢、オレんち寄ってくよな?」
「あ…いや、今日はちょっと…止めておくよ」
「ふーん、そっか。分かった」
(キターーー!!!)
これはマジでキタかも知れない。
彼氏にはなれなかったが、夫には絶対になりたい。
その為にどうプロポーズするか、オレは次の一手を長考することにしたのだった――
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