●MEIJIN 8●





ずっと不満だった。

私が部屋に遊びに行っても、彼はいつも碁盤の前かパソコンの前から動こうとしない。

それか囲碁関係の本をずっと読んでいる。

勉強熱心、仕事熱心なのは確かにいいことだけど……


でも――


「京田さん♪」

と彼にまとわりついて、誘うのはいつも私ばかりだ。

「ね、しよ?」

「……いいよ」


いつもこんな感じの会話でスタートする。

京田さんは絶対に拒否はしないけど、でも本当は別にしたくないんじゃないだろうかと不安になるくらい、彼の方から求めてくることはなかった。

だから、意地悪した。

この状況で私からは言い出さなかった。


今夜は絶対にそっちから求めて貰うんだから…!!






「――…んん、…ん、……んっ」


私に跨がって、強引にキスしてくる彼に、内心キャーvvとなった。

胸にも伸びてきた手が嬉しくて堪らない。


「……は…ぁ、…彩ちゃん…」

「京田さん……」

「ごめん。でも俺……したい。いいかな…?」


別に了解なんて取らなくていいのに。

このまま強引に抱いてくれて構わないのに。

真面目な彼にクスリと笑いがこみあげる。

私は背中に手を回してぎゅっと抱きついた。


「もちろんいいよ!京田さんがそう言ってくれるの、私待ってたんだから!」

「彩ちゃん…」


やっと言ってくれた。

したいって彼の方から言ってくれた。

求められて、愛されてるとやっと感じることが出来た瞬間だ――




「……ぁ……」


首筋に口が移動する。

あちこちにキスが落とされる。

そして帯を探られて、ほどかれて……顕になった肌にも口付けてきた。


浴衣姿の京田さんもすごくカッコよくて惚れ惚れするけど。

でも私は知ってる。

彼は裸でもすごくカッコいいのだ。


「京田さんも脱いで…?」

「うん…」


一旦体を起こして、浴衣を脱ぎ出した。

下着一枚になった彼が、肌を重ねるようにぎゅっと抱き締めて体重をかけてくる。

この重みがすごく心地いい。

もちろん肌の温かさもすごく気持ちいい。


「……ぁ……」


先端を口に含まれる。

舌で弄られる。

と同時に反対側の胸も揉まれる。


でもこの3ヶ月間、結構な回数と時間揉んでもらったけど、一向に大きくなる気配がない私の胸。

申し訳なく思う。


「ごめんね…」

「何が…?」

京田さんが顔を上げてきた。

「小さくて…」

「え?ああ…大丈夫だよ」


何が大丈夫なんだろうか。

私が疑いの目を向けると、京田さんが苦笑してくる。


「彩ちゃんは気にしすぎだって」

「だって…」

「胸が大きい彩ちゃんは将来の楽しみにとっておくから大丈夫」

「将来大きくなる保証はどこにもないと思うけど…?」

「え?大きくなるだろ?子供生んだら」




へ…っ?!




途端に私の顔はもうあり得ないくらいに真っ赤になった。


ここここ子供って…!!

そそそそりゃあオッパイあげ出したら確かに大きくなるとは思うけど…!!

きょ、京田さん、自分が何言ってるのか本当に分かってるの?!

下手したらプロポーズだよ?!



「きょ、京田さん……本気なの?」

「え?」

「本気で私のこと、そんな遠い未来まで考えてくれてるの…?」

「……彩ちゃんは考えてないんだ?」

「……ううん、考えてる。いつか京田さんのお嫁さんになりたい…」

「俺もだよ。言ったよな?初めてした時に。一生大事にするからって…」

「京田さん……」


嬉しくて涙が出そうになった。

同時に反省した。

今日試すようなことをしてごめんなさい。

ちょっと京田さんの方から求められないからって何を拗ねてたんだろう。

こんなにも愛されてるのに。

きっと私の方が節操なしにしようしよう言い過ぎてたんだ。

私が言わなかったら、きっと今までだって彼の方から求めてくれてた。

私が彼に言う隙を与えてなかっただけだ。


「京田さん大好き!」

私はぎゅっと下から彼に抱き付いた。

「大好き大好き大好き!」

「俺も大好きだよ…」

「ずっと一緒にいようね!」

「そうだな…」




その晩、私達はいつも以上に激しく絡み合った。

初めて彼の部屋以外でしたせいもあるのかもしれない。

温泉旅館という雰囲気のせいかもしれない。

そもそもベッドじゃなくて布団だったせい?

とにかくいつも以上に盛り上がって…お互い止まらなかった。




「さすがにそろそろ寝ないとマズイよね…」

「そうだな…」


そうお互い我に返ったのは朝の3時。

抱き締め合って私達は眠りについた――








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