●MEIJIN 6●





「じゃあまた後でねー」



男性陣と別れて、私達女3人は女湯の暖簾をくぐった。

夏休みとはいえ、平日だからか脱衣場はガランとしていた。


彩とは小さい頃からまぁまぁ一緒にお風呂に入ったけど、中学に上がって以降は一度もない。

もちろん一緒に温泉になんか入ったこともない。

ちょっとドキドキしながら浴衣を脱いだ。




「わぁ〜、広〜い!」

「ねー」


中も結構空いていて、見渡す限りでは露天風呂にお婆さんが2人くらいいるだけだった。

体を流して、早速3人仲良く湯船に浸かる。


「あー…幸せ。精菜、誘ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

「それにしても…」


ジーっと彩が私の胸の辺りを見てくる。

金森さんも見てくる。

え?え?


「精菜、胸大きすぎじゃない?脱いだらヤバいよ?脱がなくてもヤバかったけど」

「え?そ、そうかな…?」

「昔はそんなに大きくなかったよね?やっぱお兄ちゃんに揉まれまくったせい?」

「さ、さぁ…?」

彩が不満そうに自分の胸に手をあてた。

「私も京田さんにいっぱい揉ませてるけど、全然変わらないもん」

「揉ませてるって…彩」

彩が今度は金森さんの胸を凝視する。

「金森さんはCくらいですか?」

「うん…」

「どうですか?西条さんと付き合って大きくなりました?」

「ううん…あんまり変わらない。ずっとCだし」

「うーん、じゃああんまり揉んでも意味ないのかな?」


彩が首を捻っている。

私にとっては胸の大きさより、彩、あなたの胸の上に見えてるキスマークの方が気になるよ……

私がじっと見つめていたら、彩も気付いたみたいで慌てて隠してきた。


「彩…最近したんだ?」

「え?う、うん……一昨日かな?」


彩と京田さんも私達とほぼ同時期に一線を越えたわけだけど、今では私達よりよっぽど充実した恋人同士の時間を送っているらしかった。

やっぱり京田さんが一人暮らしな点が大きい。

佐為情報によると、仕事がない土日は昼間ほとんど彼の家で過ごしてるとか…いないとか。

今は夏休みだから、もう毎日のように遊びに行ってるとか…いないとか。

しかも合カギまで貰ってるらしいとか…ないとか。


「彩…京田さんから合カギ貰ったの?」

「え?!な、何で知ってるの?!」


やっぱり貰っていたらしい。

いいなぁ…。

佐為も一人暮らしを始めたら、私にくれるんだろうか……


「金森さんは大学生なんですよね?実家暮らしですか?」

「うん、女子大。家から2キロくらいだからもちろん実家暮らしだよ」

「西条さんも実家暮らしですよね?じゃあいつもどこでしてるんですか?」

「え…っ」

私の直球な質問に、金森さんは顔を真っ赤にする。

「ほとんど悠一君の部屋…かなぁ?ご両親共働きだし、ちょくちょく大阪にも帰ってるみたいで結構留守にすること多くて…」

「そうなんですね…」

「あ、でもデートの最後にホテルに行くことも…たまに」

「ホテルって……そういうホテルですか?」

「う、うん…」


キャーvvと私も彩も思わず叫んでしまった。

私と佐為も過去2回ともホテルでした訳だけど、両方普通のシティホテルだ。

頭にラブが付く恋人達の為のホテルなんか入ったことがない。

というか、おそらくこれからも入らないと思う。

佐為は有名人だから、しょっちゅう記者に後を付けられてるらしいし。

だから私達は外でのデートすらあんまりしない。

(あんまりというか…さっぱりというか)

私とそんなホテルを利用してるなんて雑誌に載ってしまったら終わりだ。


佐為も高校卒業したら一人暮らしを始めるらしい。

早く卒業してくれないかなぁ…。



「ラブホってどんなとこなのかな?私も今度京田さんと行ってみようかなぁ…」

彩がボソリと呟く。

「彩…あんまり京田さん困らせちゃダメだよ?」

「困ってるのはこっちだよ!だって京田さん、私が誘わないと全然手を出して来ないんだよ?!」

「それは彩のことを大事に思ってるからでしょう?」

「いや、違うね。絶対私より碁の方が好きなんだよ。だって私が遊びに行ってもずっと碁盤の前に座ってるもん。それかパソコンの前!」

「仕事熱心でいいじゃない」

「でも私が横にいるんだよ?二人きりなんだよ?お兄ちゃんと精菜だったら絶対イチャイチャするでしょ?」

「…かもね。彩が遊びに行き過ぎなんじゃない?いつでも出来ると思われてるのかもよ?」

「え…っ」


まぁそんなことはないと思うんだけど。

彩のリア充ぶりが羨まし過ぎるので、ちょっと意地悪を言ってみる。


「そっか…私、遊びに行き過ぎたのか。確かに毎回相手にしてたら京田さんも体がもたないよね…」

まだ21歳の京田さんの体がもたなくなるほどって一体どんだけ入り浸ってるのよ、とちょっとツッコミたくなった。


「よし、何か悔しいから、今夜は私から求めないことにする!」

「え?」

「京田さんの方から求めて来るまで、今夜は絶対にしないんだから!!」


彩が燃えていた。

ちょっと京田さんが気の毒になった。









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