MEIJIN 42〜京田視点〜





(終わった……)


と思った。

彩ちゃんを部屋に泊めることになった後で、例のモノが無いことを思い出したからだ。

こんな山奥に薬局やコンビニなんてあるわけないし。

今夜はお預けかぁ…、浴衣姿の彩ちゃんが横にいて理性持つかなぁ…、と悶々としていたら。

「ハイっ」と彩ちゃんが紙袋を渡してくれたのだ。

しかも中には5箱も入っていて。

「全種類使ってもいいよ」と彼女は言う。

明日も朝から仕事なのでそれは流石に無理だと思うけど。

でも今夜と明日の夜も一緒に泊まるわけだから。

2日に分けたらイケるかも)

と密かに思ってしまったことは絶対に彩ちゃんには内緒だ――

 

 

 




『京田さんの高校は性教育の授業ってあった?』


数日前、いつものように学校帰りに俺んちに寄った彼女が、突然そんな質問をしてきた。

『海王ではね、高1で習うんだよ。主に避妊についてね』

『へぇ…、今日習ったんだ?』

『うん。ちょっと衝撃だった』


その講義ではちゃんと避妊をしなかったが為に妊娠してしまい、学校を辞めざるを得なかった女の子の末路をストーリー化したDVDを見せられたという。

男の方も結局は逃げてしまい、シングルマザーで学歴もないのに子育てしていかなければならないという、ちょっとリアルな内容だったとか。

俺が通ってたのは男子校で女子はいなかったけど、それでも同じような授業はあった。

もちろん当時は彼女どころか好きな人もいなかったから、というかプロ試験で頭がいっぱいだったから、その授業も半分聞いてるようで聞いていなかった。

自分には関係ないと思っていたのかもしれない。


でも――


『やべ、オレこの前彼女に中で出しちゃってたわ』

『マジで?』

授業の後、彼女持ちのクラスメートの一人がそんなことを大胆に友達に話しているのが聞こえてきた。

ゲラゲラそのダチも『羨まし〜』とか放いていた。


『アイツら最低だよな…』

と前に座っていた毛利が呟いた。

『きっとああいう奴らがいざ彼女が妊娠したら逃げるんだろな』と

同感だと思った。


確かに当時の俺には関係なかった。

でも、いつか俺にも好きな人が出来て、もし恋人同士になれたなら、俺は絶対に大事にしようと心に誓った。

どんな避妊方法でも100%は有り得ない。

もし彼女が妊娠したなら、もちろん受け入れようと思う。

一番不安なのは彼女だから。

絶対に不安にさせるような言動は取らないようにしようと――16歳ながら、俺はそんな決意をした。

 



でも俺の未来の恋人は意外に近くにいた。

その時も既に出会っていた。

毎週末行われる院生研修。


『やった!今月は私が1位だ!』


どう?京田さん悔しい?とわざわざ2位の俺に言いに来る嫌味な女の子。

進藤本因坊の娘、進藤彩。


「でも俺との対局は俺の方が勝ったじゃん」

そう反論すると、むう…、と彼女が剥れる。


(可愛いなぁ…)


顔も異常に可愛いが、性格も素直ですごく可愛い子だから俺は気に入っていた。

そんな彼女に告白されたのはそれから半年後のことだ。

付き合うのは年齢的なことから一旦保留にはしたけれど、それからは俺の頭の中は彼女一色になった――

 

 

 

 

 




「――…ん、…ん……」


彩ちゃんに押し倒されて、唇を奪われた。

舌を絡め取られて、俺達は濃厚なキスをかれこれ10分は続けていた。


「――…は…ぁ、京田さん…」

唇を離した彩ちゃんが、俺の名前を呼んでくる。

「好き…、大好き…」

ギュッと俺の胸に抱き着いてきた。

俺も抱きしめ返して…、上下入れ替え――今度は彼女を上から見下ろした。

チュッと耳にキスをして、「俺も好きだよ…」と甘ったるい声で囁く。

「京田さん…」

「大好きだよ…、彩ちゃん」


あの16歳の時の決意と今も俺の気持ちは変わらない。

絶対に一生大事にする。

彼女を不安になんて絶対にさせない。

のに、今日はこんな遠くまで俺に会いに来るほど、柏木さんのことで不安にさせてしまったんだろう。

ちゃんと決着を付けなきゃなと思う。


「――…ぁ…っ、…ぁ…」


彩ちゃんの体を探っていく。

浴衣の帯を解くとあっという間に素肌が露わになる。

その綺麗な肌に口付けて、少しばかり痕を付けていく。

俺のモノだという印を――


「も…、あんまり付けないで…?」

彩ちゃんが俺の髪を優しく引っ張ってくる。

「温泉で誰かに見られたら恥ずかしいから…」


箱根旅行の時も、緒方さん達に見られて恥ずかしかったらしい。

もちろんあの晩も更に付けた俺だけど、2日目の朝に再度皆で温泉に入りに行った時には、緒方さん達の肌にもたくさん付いていたらしい。

『お兄ちゃんの執着を感じたね』と彩ちゃんが笑いながら後で教えてくれた。

そういう俺ら男子も一緒に温泉に入ったわけだけど……

 


『京田さん…、昨日何時に寝ました?』

眠そうな顔で進藤君が聞いてきた。

3時かな…』

『やっぱりそれくらいですよね…』

『進藤君は?』

4時です…』

『今日は観光やめておこうか』

『そうですね…』


レストランで朝食バイキングを食べた後、チェックアウトまで各々部屋で過ごした俺ら。


『ねぇ京田さん、最後にもう一回しない?』

と彩ちゃんが可愛く誘ってきたものだから、再度始めてしまったのは言うまでもない――

 

 

 

 


「――…あ…っ」


下半身を探ると彩ちゃんの声が少し大きくなってきたので、俺は慌てて塞いだ――もちろんキスで。


「――…はぁ…、京田さん…」

「隣、関係者の部屋だから声我慢出来る?」

「あ…、そうだよね。やば」


彩ちゃんが手で口を覆う。

そんな彩ちゃんに意地悪するかのように俺は彼女の下半身に移動した。


「え?!…ぁ…、京田さ……」


秘部を舌で攻めてみる。

何で今なの?!と声を必死に我慢する彩ちゃんが涙目で俺に訴えてくる。

たまにしかしてくれないくせに、何で声が出せない今に限って、と


「…ん…、んんー…!」


指で中を掻き回しながら舌でクリを攻めると、たちまちイってしまったらしい彼女がグッタリと脱力していた。


「も…、京田さんの意地悪…」

「ごめん。我慢する彩ちゃんが可愛くてつい…」

「…私も舐めていい?」

「…いいよ」


今度は彩ちゃんが俺の下半身に移動する。

優しく握ってきて……扱かれる。

先端に口付けたと思ったら、舌で舐められ…、攻められる。

俺らはあんまりこの行為をしないけど、それでも初めてした時より彼女は確実に上手くなってると思う。

あっという間に襲ってくる射精感。

ヤバいと思った直前で彼女は口を離してきた。


「ダメだよ京田さん…、ちゃんと挿れてから、ね」

「あ…、うん」


紙袋の中から一箱適当に取り出した彩ちゃんが、包装のビニールを剥がし、中から1つ取り出した。


「私が付けてあげる」

「…いいけど」

「ちゃんと付け方も講義で習ったからね」

と言われてギョッとなる。


「え…、海王って実地まであるの?」

「そんなわけないじゃん。先生が模型に実際に付けてるところを見てただけ」

「へぇ…、それも充分すごいけど」

「でもそれを見たクラスメートの反応が一番面白かったよ」


経験済みか未経験か、一目で分かった瞬間だったという。


「精菜なんて欠伸してたもん」

「へぇ…」

「処女の友達は顔真っ赤にしてたし」

「はは…」

「あと絶対経験ないと思ってた子が意外と反応薄かったり、絶対遊んでるよねって思い込んでたイケメン男子がキョドってたり、人間観察してたら中々面白かった」

「ふーん…」

「京田さんは…、どっちの反応だった?」


もし高1の俺がその講義を目の当たりにしたら――


「キョドってたかもな…」

「やっぱそうだよね!京田さんハタチまで童貞だったもんね!」


可愛い、とゴムを付け終えた彩ちゃんが俺に抱きついてくる。


「ありがとう……私が大きくなるまで待ってくれて……」


死ぬほど嬉しかった――と。

「京田さんが他の女の子を抱いてる姿なんて想像したくもなかった…」

「…それはお互い様だから。俺だって彩ちゃんが他の奴に抱かれてる姿なんて…」


絶対に我慢出来ない。

「来て…」


脚を広げた彼女に誘導されて、俺は自分の分身を彼女の中に挿入した。

初めは馴染むように優しく…、次第に激しくスピードを上げていく


「――…ぁ…っ、あ…ん…、ぁ…」


俺の腕の中で喘ぐ彼女を見るだけで、俺は自分の選択が間違ってなかったことを実感する。

彼女の16歳の誕生日まで待ち続けたからこそ、今の幸せがある。

彩ちゃんとの未来があるのだ。


「…あ…、もう…、ダメ…、京田さん…」


一緒にイこう?と耳元で囁かれる。

「うん――」


ラストスパートをかける。

欲望のままに突き上げて、彼女が上り詰めるのを待つ。

イった瞬間に中が締まるから、俺自身もそれで敢なく撃沈した。


まだ付き合い始めて半年も経ってない俺らだけど、もう心は決まっている。

だから何があっても後悔しないし、決して後悔させたくない。


「はー…、気持ちよかった。京田さん大好き…」


満足気に抱きついてきた彼女に。

優しく頭にキスしながら、今日も同意するのだった。


「俺もだよ…」


俺も大好きだ――





 

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