●MEIJIN 3●
今日の棋聖リーグは芹澤先生が相手だったけど、割と序盤から上手く打ち回せたと思う。
持ち時間をお互い1時間も残した状態で、6時半頃には投了してきた先生。
やっぱり先日窪田さんにタイトルを取られたことが尾を引いてるんだろうか…。
そんなことを考えながら家に帰ると、リビングに彩がいた。
「お兄ちゃん帰ってくるの早っ!」
と驚いてくる。
「別にいいだろ、早くても」
「あー…私ちょっと出かけるから」
「今からか?」
「う、うん。じゃ、頑張ってねー!」
「……?」
何を頑張るんだろう?
既に頑張って来たんだが。
と首を捻りながら着替えに自分の部屋に向かった。
予定よりは早く終わったとはいえ、朝9時からずっと打っていた訳だから当然頭も体もヘトヘトだ。
こんな風に疲れてる時は無性に……精菜に会いたくなる。
彼女で癒されたくなる。
もう何日まともに会ってないんだろう。
3日前に偶然棋院のロビーで会ったけど、僕は撮影に向かう途中だったし、ぶっちゃけ1分も話していない。
実を言うと今日、もう耐えられなくなって、中座して6階に行ってしまった。
対局途中に何を考えてるんだろうと思うけど、今の僕はそれくらい切羽詰まっていた。
持ち時間を数分捨ててでも、一目でいいから、遠目でもいいから――とにかく彼女の顔が見たかった。
(後で電話しようかな……)
コーヒーでも入れるかとキッチンに立ったすぐ後、玄関のチャイムがピンポーンと鳴る。
彩が帰って来たんだろうか?
いや、当たり前だけどカギを持ってるからチャイムなんて鳴らさないはずだ。
宅配便か?とドアを開けると、そこに立っていたのは――精菜だった――
「精菜……」
「ん……」
彼女の体中にキスしていった。
と同時に痕を付けていく。
僕のものだという印だ。
でも精菜は既に正真正銘僕のものだ。
彼女の父、緒方先生と賭け碁をしたのは新初段シリーズの時だから、もう5年近く前の話だ。
でも、あの頃の方が今より彼女に会えてたし、触れてたし、よっぽど自由で充実していた気がする……
「…そういえば、今日泊まること、お父さんに話しちゃった…」
「……え?」
僕はキスするのを止めて顔を上げた。
「…緒方先生何て?」
「別に。私はもう佐為のものだから…好きにすればいいって」
「へぇ…ずいぶん寛容なんだな」
「うん…意外だった。外泊許してくれるなんて」
「……」
いいことを聞いた気がした。
緒方先生は外泊に反対じゃないらしい。
とはいえ、現状何も変わらないけど。
こんな風に両親が揃って留守なのはレアだし、彩がいつも協力的とは限らない。
(あんまり借りを作りたくないしな)
結局この家で精菜とこういうことはほぼ出来ないと言っても過言じゃない。
精菜の部屋も同じだ。
ホテルで出来たら一番いいんだけど、まだ15の彼女とそういう所に行くのは正直気が引ける。
(写真なんか撮られたら終わりだ)
でも緒方先生が外泊に寛容というなら、僕が一人暮らしを始めた後に、彼女を心置きなく泊めれる。
それは最高だ。
「精菜……」
「……ぁ…っ…」
首筋にキスをして、舐めていく。
いつもより彼女の味を強く感じる気がする。
きっとまだお風呂に入ってないからだろう。
湯上がりのいい匂いのする彼女ももちろんいいけど、彼女自身の香りが強く楽しめるお風呂前にするのも、かなりいいかもしれない。
「……ぁ……佐為…」
ついさっきエアコンを点けたばかりだから、まだちょっと暑いこの部屋。
暑さからか単に体が火照ってるからか、彼女の体も少し汗ばんでいる。
豊満過ぎる胸の谷間の汗を舐めてみた。
「ぁ……あんまり舐めないで…?お風呂入ってないし…汚いよ」
「僕は平気だよ」
「私は平気じゃない…」
「じゃあ…やっぱり先にお風呂入る?」
「うん…出来たら。入って来てもいい?」
「うん」
もちろんいいよ。
ただし――
「一緒に入ろうか」
NEXT(精菜視点)