●MEIJIN 12●〜精菜視点〜
佐為のファンは日本中どこに行ったっている。
「ねぇねぇ、アレ進藤佐為じゃない?」
芦ノ湖へ向かうロープウェイに乗った時、反対側にいた女の子の一
「えー?そう?メガネかけてるしマスクしてるし、全然分かんない
「絶対そうだよ。だって隣にいるの、京田七段と西条五段だもん」
「え?!ホントだ!じゃあマジで進藤十段?!」
しまった…と思った。
いくら佐為が変装していても、周りでファンは気付く。
隠し撮りを始める彼女達にバレないよう、私は移動して更に佐為と
「…今日観光中、全然一緒にいられなかったね…」
手を取ってお布団の上に移動した私達。
早速キスしようとしてきた彼に、私は思わず本音を愚痴ってしまっ
「ごめんな…」
「ううん…分かってるから。ただ、思い出の写真が1枚も撮れな
もちろん皆との集合写真はたくさん撮った。
彩や金森さんともいっぱい撮り合った。
でも、せっかく旅行に来てるのに、佐為とのツーショットが一枚も
常に10mは距離を取ってたからだ。
「精菜…」
「ごめんね、愚痴って。一緒にいるとこ見られて炎上する方が困る
佐為を困らせたいわけじゃないのに。
早くいちゃいちゃしたいのに。
落ち込む私に佐為は優しく頭を撫でてくれる。
「じゃあ…今からでもいいなら、撮るか?」
机に置きっぱなしになっていた私の携帯を、佐為が「はい」と渡し
でもって肩に手を回して抱き寄せ、顔を寄せてくる。
ツーショットを自撮り出来る近さだ。
え?
え?
いいの?
いきなりの展開に、私はドキドキしながらカメラ機能を立ち上げた
「と、撮るよ?」
「うん」
ファッション雑誌にもしょっちゅう表紙を飾ってる佐為。
撮影はもうお手の物なのか、見つめてくるアングルが良過ぎる。
流し目が最高すぎる。
しかも浴衣姿だ。
角度によっては胸元がはだけて見えて、カシャカシャ連写しながら
「満足した?」
と笑われる。
撮ったばかりの写真をプレビューすると、思った以上に上手にツー
「ありがとう…すっごく嬉しい。待ち受けにしちゃいたいぐらい
「してもいいけど…緒方先生には見られないように気を付けて
「ふふ、お父さんにバレたら卒倒されちゃうね…」
今回の旅行も彩と行ってくるとしか私は伝えていない。
バレたらどんな反応をするんだろう。
想像すると笑ってしまった。
「精菜……じゃあもう、いい?」
私が愚痴ったから据え膳を食べれなかった佐為は、もうこれ以上待て
「いいよ…」
OKすると、顔がさっき以上に近付いてきて――キスされた――
「――んん…っ、…ん…」
最初からそのつもりの深くて濃厚なキスは、旅館に着いた時にした
侵入してきた舌に私の舌は絡め取られ…吸われ、あまりの気持ちよ
と思ったら、一気に体重をかけられて、私達は布団の上に一緒に
「精菜……」
「…ぁ…っ…――」
首筋にも唇を落とされて、吸われて痕を付けられる。
「あ…やだ。明日の朝も温泉入りたいのに…」
「見せつけてやれば…」
そう言いながら次は胸元にも痕を付けてくる。
浴衣の帯は取らないまま、どんどん襟を広げられ暴かれていく。
今日の私は浴衣の下はブラ1枚だ。
あっという間にズラされて、彼の指が先端に触れてくる。
その周りに舌を這わしてくる。
「んん……」
気持ちいい。
佐為に触れられている箇所全てが気持ちいい。
上半身を触られれば触られるほど勝手に疼いてくる下半身。
早く下も触ってほしくなる。
「佐為……」
彼も分かってるんだろう。
浴衣の隙間から股に手を入れて、優しく下着の上から秘部を擦られ
「――…ぁん、…ぁ…っ」
どんどん乱れて、はだけていく浴衣。
でも佐為は一向に私の帯を取ろうとしてこなかった。
いい加減邪魔なんじゃないかと「もう取る…?」と聞いてみる
「いや…、もうちょっといいかな」
「え…?」
「はだけてる精菜、ものすごくエロくてそそられるから」
そんなこと笑顔で言われて、かあぁと顔が真っ赤になる。
でも…ちょっとだけ気持ちは理解できる。
佐為だって、裸でももちろんカッコいいのだけど、彼の少し乱れた
エッチ自体はまだ3回目な私達だけど、今までずっと触り合ってき
温泉や浴衣という、いつもと違う非日常感を楽しみたい彼の気持ち
「んん…、…ぁ…、は……佐…」
下着の隙間から侵入してきた指に、秘部を弄られ続けて、準備万端
そしてもうイキそうというタイミングで、指を離された。
「いい…?」
耳元で確認されて、コクコクと頷くと、彼はすぐさま私の中に押し
「――あぁっ」
「……精菜…っ」
最初から激しく突き上げられ、攻め立てられる。
気持ちよすぎてあっという間に達しそうになってしまう。
でも――思わずしがみついた時の感触に、私は違和感を感じずには
うっすらと目を開けると、彼は浴衣を着たままだった。
佐為の浴衣姿。
確かにカッコいいし、乱れてるところもイヤらしくて興奮するし、
それはそれでとてもいいものだけど……
「佐――」
「やっぱり脱ごうか」
私が口にしようとしたことを先に言われる。
私の帯を解いた彼に、浴衣をズラされて…脱がされた。
彼の方も躊躇なく脱いで、浴衣を横の布団に放っていた。
「精菜…」
裸になった佐為に抱き締められて、私達は肌で直に触れ合った。
ああ…やっぱりこれが一番心地いい。
この温かさが不思議なくらい安心出来る。
「ふふ…」
思わず笑みが零れる。
「好きだよ精菜…」
耳元で囁いてくる彼に「私も…」と返す。
「愛してる…」
「私も…」
「早く誰の目も気にしなくていい関係になりたいな…」
「うん…そうだね」
今は世間に隠して付き合ってる私達。
早く結婚して、一緒に外でいくらでも写真が撮りたい。
一緒に写ってても何も言われない関係になりたい。
「…あ、ぁ…んっ、ぁ…っ」
「――っは、…く…――」
動くのを再開してきた彼と、最後は一緒に果てる。
何度もキスをして。
何度も愛を囁きあって。
私達は一晩中体でも愛を確かめ合ったのだった――