●MARRIED COUPLE 3●





「因島のアレはアレでよかったよな〜♪」

「……バカ」

「でも今日は二人きりだし、タイトルホルダー用の無意味に広い部屋だし、いっぱい声だして乱れような♪」

「もう…好きにしてくれ」

「うん――」



改めて布団の上でキスをした。

啄んで、舌を挿入して…絡めて。

そして彼女の肌にも触れていく。

オレが大好きなアキラの浴衣姿。

布団に身体を倒すと、長い髪が四方に広がって、火照った表情で色っぽくオレを見つめてくる。


「ヒカル…」

「アキラ…めっちゃ可愛い」


額にも頬にも、チュッチュと口付けた。

こんなに可愛くて綺麗なアキラがオレのものだなんて嬉しすぎる。

幸せすぎる。

結婚してもう13年になるけど、やっぱりオレってアキラに恋してるんだなぁ…って実感する。


枯れるとかありえない。

奥様に興味なくなるとかありえないから。

きっとオレ、一生死ぬまでコイツを抱き続けるんだろうなって思う。



――でも


アキラはそれをどう思うんだろう――











**********





夕方。

大盤解説を終えたオレは、伊角さんと奈瀬と一緒に夕飯がてら飲みに出かけた。

院生の時からの付き合いの二人。

何でも遠慮なく話せる大事な仲間だ。



「そういえば佐為君、プロ試験合格おめでとう」

「サンキュー伊角さん」

「アンタと塔矢の息子が入段するなんてねぇ…。私も歳を取るはずよね」


奈瀬が溜め息を吐いた。


「で?実際塔矢とはどうなのよ?」

「どうって?」

「上手くいってんの?」

「…見ての通りだけど」

「結婚して13年なのに?」

「だから?」

「フツー13年も経ったら空気になっちゃわない?」

「空気?」

「なに?まさかアンタいまだに塔矢とシまくってんの?」


ストレートな台詞に、伊角さんが横で噎せていた。


「…悪いかよ」

「飽きないの?」

「オレから言わせてもらえば、飽きる奴の気持ちが分からないけど?」

「ふーん。だからまたデキちゃったワケね。しかも双子。塔矢も大変ね」


ムカ…


まあまあと伊角さんが仲裁に入ってくる。


「奈瀬もそのくらいにしておけよ。自分が惨めになるだけだ」

「だっておかしいでしょ。13年よ?私なんて5年でとっくに夫婦生活なんて終わったのに!」

「はっ。あんな年上の旦那選ぶからだって」

「はぁ?10歳くらい今どき普通でしょ!」

「まぁまぁまぁ、もういいだろ。色んな夫婦がいるさ」


フンっと、オレと奈瀬はお互い顔を反対側に向けた。



「…伊角さんは奥さんとどんな感じなの?」

「上手くいってると思うよ。向こうも働いてるから、家事育児分担して協力しあってる」

「……夫婦生活は?」

「あるよ。月に1回くらいだけどね」

「月イチ…」


オレには考えられない数字だ。

週イチですらオレにとっては有り得ない。

出来ることなら毎日だってしたい。

でもそれって、もしかしてオレの方が異常?



「自分達が幸せならそれでいいんじゃないかな。奈瀬も今の状態が不満ならちゃんと旦那さんと話し合うといい。進藤も、塔矢がそれで納得してくれてるなら、今のままでいいんじゃないかな」



……納得……



実際どうなんだろう。

アキラはどちらかと言うと性欲の薄い女だ。

きっと月イチどころか年イチだって構わないと本当は思ってる気がする。

オレの方ばかりが求めて虚しくなる時だってもちろんある。


でもオレが求めると絶対にアイツは優しく迎え入れてくれるから。

特に幽霊の佐為の話を打ち明けてから、アイツますます優しくなった。


でも、本当はどうなんだろう。

今のオレらをどう思ってるんだろう……



「ごめんな…奈瀬」

「私もごめん…」






二人とロビーで解散したオレは、とりあえず風呂に入って。

そして奥様の部屋を訪ねた。







**********








「アキラ……めっちゃ可愛い」


上からキスの雨を降らすオレを、アキラは頬を赤めて受け止めてくれていた。

まずは胸を触って弄って、彼女が一番感じる場所を攻めていく。


「――…ぁ…っ…」


帯をほどいて露になった肌に隅から隅まで口付けていく。

オレの方も脱いで、彼女の下着も全部剥がせて、また肌と肌を合わせてお互いの温もりを感じ合う。



……温かい……



しばらくぎゅっと抱き付いたままじっとしていると、アキラが

「…何かあった?」

と勘鋭く聞いてくる。


「ん……ちょっとな……」

「…さっき、伊角さん達とご飯食べに行ったんだろう?何か言われた…?」

「……」










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