●MARRIED COUPLE 2●





緒方先生がすぐ横に寝てる状況なのに。

いつ起きるか分からないのに。

それでもオレは今夜も身体を合わせることを我慢出来ない――





再びアキラの上に移動して、彼女の首筋にキスをする。


「ちょ…っ、…ぁ…っ」

「アキラ、声出しちゃダメだって…」

「だって……」


アキラが両手で口を押さえた。

浴衣の上から胸をモミモミ、そして隙間から手を差し入れ、直に揉んで弄っていく。

アキラが必死に声を我慢している。

下半身にも手を伸ばし、浴衣の隙間から下着の中に侵入してみた。

既に結構濡れている。

慣らさなくても指がするする入った。


「なに?オマエもう実は準備万端じゃん?」

「……うるさい」

「もう挿れていい?」

「…また生で?」

「いいじゃん。だってもうデキないんだろ?」

「それは…そうだけど」



双子を産んだときに、もうこれ以上デキないよう処置をしてしまったアキラ。

それを聞かされた時はオレもそりゃショックだったけど。

でもモノは考えようだ。

彩を産んでから今回この双子を授かるまでの約10年間。

オレはアキラに遠慮して毎回ゴムを付けていた。

アキラが女流タイトルのみならず、七大タイトルも取り始めたからだ。

せっかく棋士として波に乗ってきたところなのに、また妊娠してその波を止めてしまうのは申し訳ない気がしたのだ。

だから10年間、オレはずっと我慢していた。

でも今回、もう付けなくてもデキないとなったから、オレは今まで頑張ったご褒美を奥様に求めた。



「これからは生でしてもいい?」と――



いいだろ?

オレずっと我慢してたんだから。

今のオマエがあるのもオレの我慢のお陰だもんな?



「キミがしたいなら…別にいいよ」

「ホント?」

「確かにキミの言うことも一理あるから。キミが欲望のままにずっと僕を抱いていたら、きっと今の僕はいなかった」


もっと妊娠出産を繰り返していたことだろう。

こんなにタイトルが取れたのはキミの協力のお陰だ――そう真っ直ぐ目を見て言われた。


ありがとう、と――


でもそんなに感謝されると、やっぱりちょっとしずらくなるのが人間だ。


「まぁ一応ゴムも持ってるけど……付ける?」

アキラにクスッと笑われる。

「どっちでもいいよ…」

キミの好きにしてくれ、と。

「じゃ、悪いけど生でさせてもらうな。だって、こっちの方が何倍も気持ちいいし」

「そうだね…それは同感だ」


オレは直ぐ様彼女の秘部に自分自身を押し込んだ。


「――……!」


目をぎゅっと瞑って、声が出ないようひたすら我慢するアキラ。

オレの方も緒方先生の様子を伺いながら、どれだけ布団の中で音を立てないように動くか格闘する。

もちろん二人ともほぼ浴衣は着たままだ。

確かにこれはこれでそそるものもあるけど、お互いの肌と肌を合わせて絡み合うことの気持ちよさを知ってしまってるオレらにとっては、やっぱりちょっと物足りない。

でもいつ先生が起きるか分からないのに、素っ裸でいつもみたいに絡み合う勇気はさすがにない。


明日東京戻って、すぐまた兵庫で名人戦戦って。

そのまま韓国飛んで、帰ってくるのは来週の土曜日なのに。

また一週間アキラを抱けそうにないのに、こんな中途半端なセックス…なんかやだな。



「……ヒカル?!」


オレが彼女の腰紐をほどくと、驚いたように声をあげてきた。

浴衣の前を暴いて、露になった彼女の肌に口付けた。

もちろんオレ自身も浴衣を脱ぎ捨てる。


「アキラ…」

「起きたらどう説明するんだ…」

「説明もなにも、だいたい夫婦の部屋に邪魔しに来る方が悪いんだよ」

「それは…そうだけど」


アキラと素っ裸で抱き合って、オレはようやく満足してまた身体を動かし出した。


「――…ん……」


声をキスで殺して、最後は音とか全く気にせず欲望のままに彼女を突き上げた――



「――…はぁ…は…ぁ…」

「はぁ…アキラ……」

「ふふ…なにしてるんだろうね、僕ら…」

「たまにはいいかもな…新鮮で」



そのあと緒方先生が少し動いたもんだから。

オレとアキラは慌てて再び浴衣を着て、抱き締め合って眠りについたのだった――











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