●TIME LIMIT〜母親編〜 2●





10代の頃、オレは女には相当モテた。

塔矢への想いを消化する為に…塔矢の代わりを探す為に、色んな女と付き合った。

でも千明が出来てからは、そういうことからは逃げてたし…縁遠かった。

ぶっちゃけもう女は必要ない。

千明さえいればもう何もいらない。

そう思ってた。

…でも、その千明の為に…このままでいいのか?ってたまに思う。

母親が必要なんじゃ…?

今でも塔矢への気持ちは変わらない。

好きで好きで堪らない。

でも、今のオレは千明が一番大事なんだ。

千明に必要なものは全部与えてやりたい。

だからもし母親が必要というのなら、オレは…―――







「せんせぇパパよりじょうず〜」

「もうすぐ出来るからね」

「うん!」


お迎えの時間になって、保育所で千明と優子先生と合流したオレは、一緒に優子先生の家にお邪魔することになった。

普通の23歳の女の部屋だった。

可愛くて掃除されてて、冷蔵庫の中から想像するに結構料理も上手なのかも?

出来上がったオムライスはふわふわのトロトロで…主夫としてちょっと悔しい。


「おいしいねーパパ」

「うん…そうだな」

「ありがとう」


優子先生が恥ずかしそうに頬を赤めた。

可愛い。

ああ…確かにすっげー可愛い。

普通の男ならイチコロだろう。

でもあいにくオレは普通の男じゃないんでね。

女は全て塔矢が基準。

塔矢が100なら、今のは…50点ぐらいの可愛さだ。



「ゆーこせんせぇ、パパのこと、すきでしょ?」

「え?あ………うん」


彼女の顔がまた赤くなる。

オレの顔をチラッと見て、目を逸らして。


「ちあきもね〜パパのことだぁいすき」

「千明…」



ご飯を食べ終わると、千明はウトウトとオレの膝を枕にしてきた。

実質先生と二人きりになってちょっと困る。


「…進藤さんは、奥さんいらっしゃらないって聞いたんですが…本当ですか?」

「…うん」

「じゃあ千明ちゃんのお母さんは…」

「千明を産んで…すぐ逃げられたっていうか……ごめん、あんまり話したくない」

「そうですか…」


またしばらく沈黙が続く。

オレはひたすら眠った千明の髪の毛を撫でて、先生はひたすらお茶の入ったマグカップを口に付けたり離したりしていた。


「今……好きな人とか、いますか?」

「……うん」

「え…」

「千明の母親のことが…今でも好きだ。きっと一生……死ぬまで」

「一途なんですね…」

「いい言い方をすればね…」

「……」


またまた沈黙が続いて、そろそろ帰ろうかと思い出した時だった。

意を決したように、優子先生がオレのすぐ側に寄ってきた。

告られる?


「私…進藤さんのこと…好きです。千明ちゃんのお母さんの代わりに…なれませんか?」


告られた。

なれるわけない。

塔矢の代わりには誰もなれない。

誰もなれなかった。

でも、代わりじゃなくても……千明の母親にはなれるかもしれない………



「返事…少し待ってもらってもいい?考えてみる」

「あ…はい、いつでもいいです」











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