●LOVE GAME 1●





**********SIDE:AKIRA**********




昨夜はどうかしていた。

仕事のし過ぎで鬱だったのかもしれない。

精神的に参っていた。

いや、ただ酔っていただけ?

ううん、僕は正気だった。

同意の上だった。

ずっと独り身だから、実は人肌が恋しかったのかも。

誰かと経験してみたかった?

いやいや、分かってる。

こんなの、本当に好きな人としかしてはいけないってこと。

結婚を考えるぐらいの人でないと。

いや、むしろ結婚まで経験しないのが理想というものだろう。

もうお嫁に行けない?

そんなことないよね?

でも、反省。

単にショック。






「…何をやってるんだ…僕は…」







目が覚めると知らない部屋にいた。

たぶん先頭にラブが付くだろうそれ専用のホテルだ。

シーツ一枚に包まった状態の素っ裸で、昨夜何があったのかなんて思い出すまでもない。

生まれて初めて性交というやつを経験したんだ。

で、肝心の相手は―――



「あ、塔矢起きたのか。おはよー」


バスタオルだけを腰に巻いた状態の進藤がバスルームから出てきた。

いつもの笑顔で、おはよー。

何がおはよーだ!

ギッと睨みつけた。


「怖っ。何怒ってんだよ」

「別に?よりにもよってこんな女の子を取っ替え引っ替えする女の敵に僕の初めてをあげてしまったのかと思うと、自分が情け過ぎて泣けてくるだけだ」

「ひっでー。オマエに負担がかからないよう目一杯優しくしてやったのに酷い言われ様」

「そんな優しさなんかいらない。そんなに気を使われたら、まるで…合意の上みたいじゃないかっ」

「合意の上だろ。オマエの方からキスしてきたじゃん」

「ぎゃー!そんなこと思い出させないでくれっ!」



慌てて耳を塞いだ。

大大大失態だ。

僕の方からキスだなんて。

まるで僕が彼を誘ったみたいじゃないか。



「なー塔矢ぁーアキラちゃーん」

「下の名前で呼ぶな!」

「…オレら、まぁ酒の勢いかもしれないけど、こういう結果になったわけじゃん。…どうする?」

「どう…って」

「このまま付き合う?」

「は?」

「いや、嫌なら別に…いいんだけどさ。オマエ初めてだったみたいだし、責任とった方がいいのかな〜なんて、ちょっと真面目に考えてみました」

「………」

「塔矢が決めていいよ。何もなかったことにしてこのままライバルだけの関係を続けてもいいし、これを機に付き合ってもいいし」

「…馬鹿にするな。子供が出来たのならまだしも、たかが処女を失ったぐらいで責任取れなんて言わないよ」

「ふぅん…」

「でも…悔しい」

「何が?」

「このまま何もなかったことにしたら、単に僕もキミの餌食になっただけになる」

「はは」



かと言って、別に付き合いたいわけではない。

僕だって付き合うならやっぱり好きな人がいい。

…でも23年生きてきたけど、今まで一度も恋なんてしたことないし。

ずっと碁だけだった。

そしてこれからも碁だけな気がする。

ということは僕は一生誰とも付き合わないのかもしれない。

結婚は…適当にお見合いさせられてすることになりそうだけど……




「結論が出た」

「教えて?」

「僕は今は別にキミのことなんか何とも思ってない」

「ストレートに言われると傷付くなぁ」

「でも僕は好きな人がいたことがないんだ」

「…悲しい奴だなオマエ」

「煩い。だから恋というものがしてみたい。キミが責任とってもいいというのなら、それに協力するべきだ」

「は?えーと?つまり…オレはオマエが惚れるぐらいのイイ男を紹介すればいいのか?」

「違う。キミがそのイイ男になるんだ」

「へ?」

「僕は好きな人と付き合いたい。だから、キミを好きにならせて?僕を惚れさせてみせてよ」


一瞬ポカンと目が点になった進藤は、すぐに吹き出してきた。


「は…はは。オマエって…」

「無理なら他の考えるけど?」

「いや、上等じゃん。オレに惚れさせてやるよ」



意外に自信満々な進藤。

でも、キミが相手なら僕は恋が出来るかもしれないと思った。

付き合えるかもしれない。



その先に何があるのかなんて知るよしもなく―――









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