●LOVE FORTUNE 2●




親が決めた婚約者―――それが緒方さんだった。



でも、大好きだった。

緒方さんの顔も、性格も、碁の強さも、ちょっと女ったらしで…キザで、カッコつけ屋で、お節介で、でもどこか抜けてて…実は寂しがり屋な所も……全部。

本気で結婚するつもりだった。




……進藤を好きでも……





12歳の時――初めて会った時から気になっていた彼。

それが具体的に恋心に変わったのはいつ頃からだろう。

でも、僕には緒方さんがいたし…進藤とはずっとライバルの関係を続けたかったから……その気持ちを今まで握りつぶしてきた。


だけど一年前……僕は進藤が女性と歩いている所を見てしまったんだ。



「アキラ君?!大丈夫か?」


ショックで思わず倒れそうになった僕を…隣りにいた緒方さんが支えてくれた。

鋭い緒方さんは僕の気持ちを一瞬で見抜いてきた。


その晩が運命の分け目になる――






「――アキラ君、いつまで自分の気持ちに嘘をつく気だ?」

「………」

「好きなんだろう?進藤のことが」

「………」

「今決断しないと、間に合わなくなるぞ」


…分かってる。

分かってます。

進藤が女性と付き合いだした。

それはつまり…この先…ずっとそれが続くってことで…

いつかは…進藤も誰かと結婚してしまう…ってことだ…。



僕にそれが耐えられる?



そう自分に問い掛けると……あっさり答えが出た。


「……ごめんなさい」


謝る僕に、緒方さんは優しく手を頭に置いてくれた。


「どうして俺が今までお前に手を出さなかったか…分かるか?」

「…え?」

「こうなることが分かってたからだ」

「緒方さん…」

「頑張れよ」

「…はい」



その婚約破棄が表沙汰になったのはそれから一週間後のことだ。

破棄の理由は緒方さんの女性問題にあるとたちまち嘘の噂が流れた。

否定もせず、笑い流す緒方さんは大人だと思う。


そして進藤は……――
















「塔矢?来てるのか?」


――約束の月曜日。

進藤が仕事で留守の間に、僕は合鍵を使って勝手に上がり込んだ。

リビングの机に寝そべって…狸寝入りをしてみる。


「…なんだ、寝ちまったのか…。暖房もつけないで…風邪ひくぜ?」

進藤が僕に何やら上着を被せてくれた。


「塔矢〜、塔矢って。起きろよ。一局打とうぜ」

「………」

「…起きないとチューするからな」


それを聞いてたちまち僕の心臓は鼓動を早める。

進藤に気付かれるんじゃ…てぐらいにドキドキと大きな音が鳴ってる。



「…塔矢…―」



う…わ…。



彼の暖かな唇が本当に僕の頬に触れた―。

途端に顔の温度が上がってくる。


「塔矢…―」


何度も押しつけられて、それが徐々に耳に瞼に移動していく―。


耐えられなくなってうっすらと目を開けると―――進藤と目が合ってしまった。


「…おはよ」

「………」


彼の顔を改めて目の当たりにすると……ますます真っ赤になってしまう。

そんな僕を見て、進藤の方も気まずそうに顔を向こうに向けてしまった。


「えーっと…、なにか飲むか?」

「え?あ、ううん。大丈夫。それより一局打とう」

「あ…ああ、そうだな」















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