●LOST LOVE 6●






「明日…家に戻るから」

「え?」

「門下で緒方さんの結婚祝いするんだって…。父も帰ってくるみたい…」

「そうなんだ。でも、また帰ってくるよな?まだ緒方さんのこと、忘れてないんだろ?」

「……たぶん」


たぶん、帰ってくる?

それともたぶん、忘れてない?

何だか曖昧だけど、どっちにしろ塔矢の中でだいぶ緒方さんへの想いが薄れてきてるような気がした。

オレのこと…少しは気になってくれてる?



「――…ん…」


再び彼女に跨がって―――上から優しいキスを落とした。

今夜もう一度求めるオレを、何も言わずに受け止めてくれる。


「…は…、塔…矢…」

「進藤…」

「好きだ…」

「……ありがとう」


お礼より、『僕も』と言ってほしい。

塔矢と体が繋がってる喜びを感じながらも、心はまだ遠い気がした――












翌日――塔矢は言ってた通り、家に戻っていった。

オレの部屋を出る時…すげぇ暗い顔をしていた。

結婚祝いってことは、たぶん緒方さんの婚約者も来るんだろう。

そりゃ行きたくないよな。

早く帰ってこいよ?

また慰めてやるから……






が、






夜の12時を過ぎて日が変わっても、塔矢は帰って来なかった。

今夜は実家に泊まることにしたのかな…と思い、とりあえず

『おやすみ』

とだけメールをして、オレも寝ることにした。


そして翌日――起きるとメールが一件来てたことに気が付いた。

もちろん塔矢から。

塔矢の方も『おやすみ』メールくれたんだ…と開けると――




『今までありがとう。もう大丈夫そう』




え……?



これってつまり…緒方さんのことを忘れられたってことなのか?

それには万歳!だけど……それはつまり、塔矢はもうここには戻ってこないってこと…か?


慌てて部屋を飛び出した。

もちろん向かった先は塔矢の家。

ピンポーンとチャイムを鳴らすと、塔矢のお母さんが出てきた。



「あら、進藤さん」

「あの、塔矢…アキラさん、いますか?」

「ええ。でもごめんなさいね…昨日遅くまで門下の集まりがあったから、まだ寝てるのよ。すぐ起こしてくるからちょっと待ってて下さる?」

「上がってもいいですか?オレが起こします」

「え?」



無礼なのを承知で、ずかずか上がりこんだ。

一直線に塔矢の部屋に向かって――障子を開けながら

「塔矢!!」

と叫んだ。


「…ん、進藤…?」

まだ眠そうな塔矢が、けだるそうに体を起こした。

「どうしてここに…」

「どーしたもこーしたもねぇよ!何なんだよあのメールは!」

「……」

「緒方さんのこと、忘れられたのか?」

「…ううん。でももう大丈夫な気がしたから…」

「オレは全然大丈夫じゃねーよ!!オレの気持ち、言ったよな?!好きだって…」

「…うん」

「じゃあ何で帰っちまうんだよ!」

「だってそういう約束だっただろう?」

「だからっていきなり帰るなよ!!」



ぎゅっと塔矢の体を抱きしめた――


嫌だ。

塔矢と離れたくない。

もう誰にも渡さない。


コイツはオレだけのものだ――










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