●LOST LOVE 5●






「ただいまー」

「お帰り、進藤」



イベントを終えて家に帰ると、塔矢が出迎えてくれた。

夕飯を作っていたのか、そのエプロン姿の可愛さにドキッとなる。


「もうすぐ出来るから。先にお風呂でも入ってきて」

「ああ、サンキュー…と言いたい所だけど、オマエここに泊まってること親に言ってたのか!?」

「え?もちろんだよ。僕は無断外泊はしない」

「だからって…オレ男なんだぞ?先生達何も言わなかったのかよ」

「父は韓国だから。言ったのは母にだけだ」


明子さんにだけ?

それってセーフ?

いやいや緒方さんが知ってたぐらいなんだ、絶対先生の耳にも入ってるはず……


「碁聖戦に向けて進藤の家で合宿してくるって言っただけから、別に何の心配もいらないと思うけど?」

「はぁ…そうですか。実は打った数よりエッチした回数の方が多いけどな」

「じゃあもうしない?」

「するに決まってるだろ。もうやけくそだ。その前に風呂とメシだけど」



今日の塔矢の夕飯は珍しいことに和食じゃなかった。

オレの好み覚えてきたのかな?

味付けもオレ好みの濃さ。

いつもより数段に箸が進んだ。


「お腹すいてたの?」

「いや…単に美味いから」

「本当!?」


ぱぁあ…とものすんごい笑顔で喜んできた。


「緒方さん…僕の料理なんて一度も褒めてくれたことなかったから…すごく嬉しい」

「ふーん…でも緒方さん、オマエのこと『いい女』って言ってたぜ」

「頭に『都合の』がつく?」

「んな言い方じゃなかったけど…」

「……」



全部食べ終わって、塔矢が片付けをしてる間、オレはリビングでテレビを見る振りをしながら彼女の様子を伺っていた。

塔矢は意外にも男に尽くすタイプなんだって改めて思う。

あの母親の娘だから当然と言えば当然か?



「………」



というか、エプロンをしてる後ろ姿が妙に……そそる。


そ〜っと近付いて―――後ろから抱きしめた。


「っわ……え、なに?」

「別に?皿洗い続けていいよ」

「て言われても…」


エプロンの上から胸やら尻やら揉んで、熱い息を彼女の耳に吹きかけた。


「…ぁ……」

「手が止まってるぜ?」

「キミが…邪魔するから…っ」


服の隙間から手を入れて、直に胸を弄った。


何とか片付けを終わらした塔矢が、真っ赤な顔でキッと睨んでくる。


「今度さー…裸でエプロンしてよ」

「冗談…」

「似合うぜ、きっと」

「……」



腕を解いて、改めて向かい合ったオレら。

徐々に顔を傾けて―――唇を合わせた。


「…んっ……ん…」



もう塔矢と何回キスしたんだろう。

何回セックスしたんだろう。

ほんの数日前のことなのに、絶対にしないって決めてた頃が懐かしい。

いつまで続くんだろう。

一生続いて欲しいと思うのは…オレだけなのかな――



「塔矢……好きだ」

「進藤…」

「オレじゃ…ダメか?緒方さんの代わりになれない?」

「…口説いてるの?」

「本気だって言ったら…どうする?」

「………考えておく」

「…分かった」



重要なことには触れないで、取りあえず先に…いつも通りエッチするオレら。

順番が逆。

まるでただのセフレ。


何だか寂しいと思う今夜の情事だった―――














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