●LITTLE BOY FRIEND 5●





●○●○● 本番  ヒカル ●○●○●



「今だけアキラ…って、呼んでもいい?」

「え…?別に構わないけど…」



夢にまでみたアキラさんとの初体験。

予定より一週間早まっちゃったけど、約束結局守れなかったけど、とにかくとにかく嬉しい。

押し入れから出した布団を敷いただけで、心臓の音がバクバク鳴ってしまった。

アキラさんに向かい合って座って……手を彼女の頬に添えた。


「アキラ……」

「……ん」


ゆっくりと唇を重ねる。

付き合い始めてから今まで、何度もキスはしてる。

今まではキスだけで終わっていた。

デートの最後にキス、のパターンが多かった。

でも今日はこのキスから全てが始まるんだ。

彼女にやっと一歩近付けるんだ。


「…んん…ふ、…ん…―」


舌を挿入して絡めて、大人のキスをした。

今はもう積極的にアキラさんも返してくれるけど、最初の頃はただ驚いて真っ赤になってたよなぁ…。

今思えば、あんなアキラさんを知っていたのに、どうしてオレは彼女が経験者だって思っちゃったんだろう。

馬鹿だオレ。

オレと付き合うまでアキラさんが囲碁一筋だったってのは誰よりも知ってたのに。

(今も一筋だけど…)

一人焦って、あかりなんかと練習しようとして、本当に大馬鹿だ。



「…あ……」


唇を離して、彼女の体を布団に倒した。

おお…やっべぇ、めちゃくちゃ緊張する。

でも、アキラさんの緊張具合もまた凄くて。

彼女を見てると少し落ち着けた。


「…怖い?」

「…少しね。キミは…?」

「オレも怖いよ。でもそれ以上に嬉しい」

「…僕も」


ホント?!

アキラさんも嬉しいんだ?!

そんなこと言われると、よーし頑張るぞって、めちゃくちゃ気合いが入った。

もう一度キスしながら…胸に手をあててみた。


「んん……」


比べちゃ悪いんだろうけど、あかりより小さい?B?C?

でも小さくても、これがアキラさんの胸なんだって思ったら、愛おしくてたまらなかった。

ブラウスのボタンを一つずつ外して…徐々に現れてきた白い肌に唇をずらしていった。

ちょっと舐めてみたり。

ちょっと痕を付けてみたり。


「…んっ、進…ど…」

「えへへ、オレのものだっていう印♪大丈夫だよ、見える所には付けないし」

「…うん」


現れたブラはフロントホック。

ラッキー、と直ぐさまパチンと外して、今度は直に揉んだ。

赤ちゃんみたいに先端も吸い始めてみる。

うう…美味しい。

もちろん何も出てこないけど。

でも、いつかはオレの手で出るようにしたいなぁ…なんて思ったりする。

それはつまり、アキラさんと正式に結婚して、子供を作るってことだ。




―――って!やべっ!




「……?進藤?どうした?急に離れて…」

「あああ…アキラ…さん。どうしよオレ…忘れてきた…」

「…何を?」

「…ゴ、ゴム…」

「……」


具体的に名前を言ってしまったからか、アキラさんの頬が赤くなる。


「ちゃ、ちゃんと来週の為に用意してたんだ。でも、今日することになるなんて思ってもなかったから…」

「…そう」

「アキラさん持ってない…よね?薬飲んでるなんてことも…ないよね?どうしよ…ちょっとコンビニ行ってきてもいい…?」

「……」


アキラさんの顔が素に戻り始めている。

やば、冷めちゃった?

これだから年下は、とか呆れちゃってる?

うう…馬鹿だオレ、一個や二個常備しておくぐらい男として常識なのに……


「も、もちろんアキラさんが許してくれるなら……そのまま挿れるけど、ダメ…だよね?」

「…え?」

「あ、もちろん、もしものことになっても、オレちゃんと責任取るよ?…アキラさんとの子供だったら…すっげぇ欲しいし」

「…まだ17歳のくせに何が責任だ」

「で、でも来週18になるし。18になったら結婚だって出来るんでしょ?」

「……はぁ」


アキラさんが体を起こした。

え?やめちゃうの?そんなぁ…


「今日はもう帰れ。やっぱり来週にしよう。僕はどうかしてたよ…、17歳のキミと一線を越えそうになるなんて…」

「アキラさ…ん…」


いつの間にか、呼び方もいつも通り「アキラさん」に戻ってしまっていた。

Hの時ぐらい、同等になりたくて呼び捨てしたかった。

また来週も呼ばせてくれるかなぁ?と不安になりながら、オレはしぶしぶ立ち上がった。

アキラさんも乱れた服を直し、玄関まで見送りに来てくれる。


「…今日は色々ホントごめん…」

「もう外暗いから気をつけて」

「……うん」

「じゃあまた来週」



ピシャリッ



お別れのキスも何もないまま、冷たく玄関の扉を閉められてしまった。

はぁ…、と溜め息をつきながらとぼとぼ駅に向かった。



…ちぇっ、ゴムがないなんて言わなきゃよかった。

黙ってたら分かんなかったかもしれないのに。

そのまま生ですればよかった。


…そう思ってしまうのは、やっぱオレがまだガキだから?

目先のことしか考えてないから?

そうだよな…、今子供なんか出来たらアキラさん困るよな…。

アキラさんはタイトルホルダーだし…。

世間の目があるし…。

そもそも塔矢家って固そうだもんな…。

オレ、塔矢先生に殴られる?



「はぁー…」ともう一度深い溜め息をつきながら、オレは駅に急いだ――








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