●LITTLE BOY FRIEND 2●





●○●○● 不安  ヒカル ●○●○●



「いよいよ来週か〜♪」



アキラさんと付き合い始めてから早二年。

やっとこの時が来た。

やっと18歳になる。

うきうきワクワクそわそわしながら、オレはまだ終わっていない引っ越しの片付けに今日も勤しんでいた。

渋るお母さんを何とか口説き落とし、今月から念願の一人暮らしを始めたオレ。

全ては今度の誕生日の為、アキラさんと一晩中いちゃいちゃする為だ。

もちろんホテルでも出来ないことはないし、塔矢先生は相変わらず中国だから…アキラさんの家でも出来ないことはない。

でも、親元を離れて一人暮らしを始めたっていう、少しは成長した姿を彼女に見せたいんだ。

その為に何ヶ月も前から、母親に料理・洗濯、その他家事全般を教わったんだからな。

アキラさんが罪悪感なしに、純粋に、大人になったオレに身も心も預けてくれるように。

あわよくば結婚…とかも考えてくれるように。

(18歳は結婚だって出来る歳だもんな!)






「んー、だいたいこんなもんか?」


一通り片付けが終わったオレは、新しく買ったセミダブルサイズのベッドにゴロンと横になった。

来週の今頃には、オレも大人の男になってるのかな〜とニマニマしながら。

でも、もちろん不安もある。

15の時からアキラさんと付き合ってるオレは(というか付き合うもっともっと前からアキラさん一筋なオレは)、当然女性経験がない。

イメージトレーニングはもちろんバッチリだが、最初からそんなに上手くいくはずはない。

下手過ぎて呆れられたらどうしよう。

なんせ相手はもう24歳の大人なんだ。

今まで怖くて聞いたことなかったけど、過去に恋愛の一つや二つもちろん経験して…る…はず…だよな……



「………」



想像すると、ズーンと落ち込んできた。

アキラさんが他の男と経験済みだなんて嫌だ。

絶対に嫌だ!我慢出来ない!

でも…その可能性は十分にある…んだよな……








ピンポーン


玄関のチャイムが鳴ったので、考えれば考えるほど落ち込む体を何とか起こして、フラフラと向かった。

宅急便かなぁ…



「――え?なんで…」

「えへへ、おばさんにヒカルが一人暮らし始めたって聞いて、来ちゃった♪」


ドアの向こうにいたのは、幼なじみの藤崎あかりだった。

来ちゃった、じゃねーよ!


「はい、引っ越し祝い」

「あ。悪いな」

「上がってもいい?」

「……いいけど」


いいけど……良くない。

この部屋にはアキラさんを一番に招きたかったのに。

和谷にだってまだ引っ越したこと言ってねーのに。


「片付けもう終わったんだ?」

「さっき終わったところ」

「ふーん、思ったより広いね。私の彼の部屋より全然広いや」

「…一応社会人だからな。学生とは収入が違うし」


そういえばこのあかりに告られたのも、オレがアキラさんに告白したのと同じ二年前だ。

高校の先輩に告られたあかりは、オレに告白してきた。

オレにフラれたら…その先輩と付き合うつもりだって。

そういうオレはアキラさんに告白した。

もしアキラさんにあの時フラれていたら…このあかりと付き合っていたのかもしれない。



「わ、大きなベッド。ヒカルってばイヤラシ〜」

「な、なんでだよっ」


ベッドに腰掛けたあかりがクスクス笑った。


「ね、塔矢さんってHの時どんな感じなの?大人だもんね〜、やっぱりすごいの?」

「し、知るか…よ」

「え?」

「……」


黙り込んだオレを見て、あかりが信じられないという顔をしてきた。


「まさか…まだ?だって塔矢さんとはもう二年も付き合ってるんでしょ?ヒカルって奥手?」

「な、仕方ねーじゃん!アイツが嫌がるんだから!18にならないと犯罪だとか何とか…」

「ふーん…じゃあヒカルってまだ童貞なんだ?」

「…うるせーよ。いいんだよ、来週18になったらしまくる予定だし」

「あんまりガッツクと呆れられるよ〜?ただでさえ向こうは大人なんだからさぁ」

「………」


痛いところを突かれて、オレはまた黙り込んだ。

お前に言われなくたって…分かってるさ。

普通に考えて…24歳のアキラさんは経験者だろう。

オレは初めて。

ガッツいて、呆れられて、やっぱり年下はって…見下されるんだ。

すっげー悔しい。


「…じゃあさ、ヒカル。練習しておけば?私が相手になってあげる♪」

「……は?」

「アキラさんに子供扱いされたくないでしょ?呆れられたくないんでしょ?予習しておけばさ、ちょっとは余裕出来るだろうし、アキラさんを最初から満足させてあげれるかもよ?」

「………」


なに言ってんだコイツ…と耳を疑った。

でも、いい案かも…と思ってしまうオレもいた。

何事も最初が肝心だ。

もしアキラさんを満足させれたら、カッコイイとこを見せれたら、彼女の中のオレの評価が上がるかもしれない。

もっとオレのことを好きになってくれるかも。

何年経っても付き纏ってくる年の差の壁を、少しは破ることが出来るかもしれない。


「あ…でも、お前彼氏いるじゃん。いいのかよ?」

「いーよ。アイツが大学に入ってから何か距離出来たし。半分自然消滅みたいなものだもん」

「そっか…」

「じゃ、時間ないし今から始めよっか。練習♪」

「………」


練習と割り切ると、コクンと自然に頷けた。

アキラさんの為だから―――と覚悟を決めて、あかりと一緒にベッドに上がった。









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