●LITTLE GIRL FRIEND 9●
『いつも彼女と出かけてるようなコースにして下さい』
と言われたアキラちゃんとの初デート。
って言われてもなぁ…。
彼女との今までのデートを振り返ると、とてもじゃないけど小学生の子とするような内容じゃないことに気付いた。
不健全過ぎる。
だから、今日はオレが碁以外で好きなことに付き合ってもらうことにした。
まずはドライブ。
一人で目的なんか考えずにひたすら走るのが好き。
綺麗な海が遠くに見えたから、そこに立ち寄ってみることにした。
こういう冬の海って好きだ。
佐為との思い出に浸るのにちょうどいいから。
いつか…アキラちゃんにも佐為のこと…話したいな。
アキラちゃんならきっと分かってくれる気がする――
「…くしゅん」
「あ、ごめん!寒くなってきた?」
「大丈夫…です」
波打際を歩くこと一時間。
さすがに寒かったみたいで、アキラちゃんがくしゃみをし出した。
やべ、風邪なんかひかせたら後で緒方先生に何を言われることか。
慌ててオレの上着を脱いで、彼女に被せてやった。
でもって急いで車に戻る。
「大丈夫?」
「平気です…」
ちょっと顔が赤い?
「熱は…」
オレのおでこをアキラちゃんのおでこに重ねてみた。
そんなに変わらない…か?
でもアキラちゃんの顔は更に真っ赤になってしまった気がする。
「んー…もう帰ろうか」
「え?!」
「…いや?」
「嫌です。まだお昼過ぎなのに…」
「そうだな…じゃあとりあえず昼飯でも食べに行くか」
国道に戻って、適当な定食屋に入ってみた。
美味しかったけど、お洒落とは程遠い店。
あ…そういえば今日ってアキラちゃんの誕生日祝いだったんだ…と後で思い出してちょっと後悔した。
「えっと、夕飯は東京に戻ってからにしような。向こうならいい店知ってるんだ」
「あの…夕ご飯は…進藤さんの部屋で食べたいです」
「オレの部屋?オレが作るの?」
「僕が作ってもテイクアウトでも何でもいいですけど…あの…」
…ははーん。
つまり、オレの部屋に来たいわけか。
まぁ…この前別れた彼女が片付けてくれたし、あれからそんなに汚れてないし…大丈夫かな。
「いいよ。じゃあ夕飯はオレの部屋で食べようか。でも、テイクアウトな」
「はい!」
一気に笑顔になったアキラちゃん。
やっべぇ…超可愛い。
部屋なんかに連れ込んで、本当に大丈夫かな…オレ。
ま、別に泊まるわけじゃないし……何とかなるよな??
「ただいまー」
「…お邪魔します」
あれから再びドライブを続けること3時間。
陽が落ちかけた時間にオレの部屋に帰ってきた。
緊張気味のアキラちゃん。
そんなに緊張されると、オレまで何だか緊張するんだけど…。
「適当に座って。コーヒーか紅茶かウーロン茶か水かコーラか…何がいい?」
「進藤さんと同じでいいです」
「コーヒーになるけど?」
「はい。大丈夫です」
ソファーの端にちょこんと座って。
オレが飲み物準備している間ずっとキョロキョロ部屋を見渡していた。
「…何か面白いものでもあった?」
「碁盤…いつもこれを使ってるんですか?」
「うん。じーちゃんが買ってくれたんだ。オレの宝物♪」
「後で打ってみてもいいですか?」
「もちろん。後と言わずに今から打とうか」
「はい!」
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