●LITTLE GIRL FRIEND 10●
初めて来た進藤さんの部屋。
緒方さんの部屋みたいに広くないけど、芦原さんの部屋みたいに汚くもなかった。
進藤さんの香りがする。
このソファーでいつもくつろいでるのかな?
このベッドでいつも寝てるのかな?
そしてこの碁盤で…いつも打ってるんだ―――
「お願いします」
「お願いします」
進藤さんの大事な碁盤で実際に打ってみることになった。
手加減無し、ハンデ無しの互い戦。
もちろん棋力は進藤さんの方が上だから、彼が本気になれば僕はまだ敵わない。
でも……今日の進藤さんの碁はちょっと変だった。
手を抜いてるわけではない。
真剣なのは伝わってくる…けど、気持ちが入ってないみたい。
心ここに在らずって感じの碁だった。
チラッと進藤さんの顔を見ると―――目が合った…
「…あのさ、途中だけどやっぱ暗くなってきたし…もう夕飯食べない?終わったら送っていくから」
「え…?」
「準備するな」
「……」
台所に戻って、テイクアウトしてきたお惣菜をお皿に盛り付け始めた。
まだ…中盤なのに。
さっき来たばかりなのに…。
きっと大人の彼女なら……こんな態度…取られないんだろう。
泊めてくれたり…夜遅くまで居させてくれるんだろう。
僕がまだ子供だから…
小学生だから……
ぎゅっと唇を噛み締めた――
「…アキラちゃん?食べよう?」
「……はい」
明らかにテンションが低くなった僕を見て、進藤さんも眉を傾けてくる。
「…美味しくない?」
「…美味しいです」
「……」
「……」
「やっぱ…最後まで打ちたかった?ごめんな」
「……」
「…アキラちゃん?」
僕はお箸を置いて、立ち上がった。
この際子供だって思われてもいい。
このまま家に帰されるよりずっとマシだ。
進藤さんのベッドに上がって、掛け布団を頭から被ってみた。
絶対に帰らないって、布団に丸まってふて腐れてみた。
「アキラ…ちゃん?」
「……帰りたくないです」
「気持ちは分かるけど…先生も奥さんも心配するから」
「そんなこと彼女には言わなかったんでしょう?今日は進藤さんがいつも彼女としてたデートにして下さいって…子供っぽいのは嫌って…言ったのに…」
「…出来るわけないだろ」
進藤さんが引きはがしに布団に手をかけてきた。
何が何でも家に連行する気だ。
「ほら、帰るぞ!」
「嫌だ!」
「子供だと思われたくないなら、それなりの行動をしろよ!これじゃあ本当のガキじゃん!」
「ガキで結構です!でも帰るのだけは絶対に嫌!」
「馬鹿言ってんじゃねーよ!男の部屋に泊まるって意味をまだ理解してないお子ちゃまは大人しく帰って寝るんだ!」
「そのくらい理解してます!」
「嘘つけ!ブラもしてない子供のくせに!」
「ブラはしてなくても生理は来てます!」
だからもう立派な大人の女だ!
子供だって産もうと思えば産めるんだから!!
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