●LITTLE GIRL FRIEND 7●






佐為が影響で始めた囲碁。

院生になって、プロになって、これからだって時にアイツはいなくなった。

でもオレの碁の中にアイツはちゃんといたんだ。

見つけた時はすごく嬉しかった。

オレが打ち続ければ佐為に会える。

だから何とかプロを続けることが出来た。



でも……なんか物足りない気がした。


だから、次第に適当になっていったのかも。

だから、いつも二次予選止まり。

起爆剤が欲しかったのかも。


プロになって6年。

ようやく見つけた起爆剤。



アキラちゃんの為にオレは打つ―――













「…ありませんっ」

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


今日も勝ち取った白星。

我ながらいい打ち回しだった。

これから囲碁サロンに行ってアキラちゃんと検討だ。







「こんちわー」

「いらっしゃい進藤君」


受付の市河さんとも気軽に挨拶出来るぐらいこの碁会所に慣れてきた。

アキラちゃんがいない時はお客さんと打って帰るだけの日もあるぐらい。

たまに緒方先生とか芦原先生とか、塔矢名人門下の先生達も現れるから面白い。

でも、オレにとってはやっぱり道玄坂の碁会所の方が落ち着くかな。

アキラちゃんと初めて会った場所だし。

今度また一緒に行こうっと♪





「アキラちゃんお待たせ」

「こんにちは。今日も勝ちましたか?」

「もっちろん。見る?並べるね」

「お願いします」



検討が始まって、すぐに彼女の手首の時計に目がとまった。

綺麗なシルバーと緑の文字盤の…たぶんルキア。

小学生にはちょっと不似合い。

(アキラちゃんには似合ってるけど)


「…珍しいね、時計してるの」

「え?」

「貰い物?」

「あ…これですか?はい、父からの誕生日プレゼントなんです」


―――え?


「た…誕生日?いつ?」

「昨日ですけど?」

「昨日!??」


ガーン…ショック。

全然知らなかった。

誕生日ぐらい聞いておけばよかった。

そしたら事前に色々計画して彼女を喜ばすことが出来たのに……くそ


「一日遅れになるけど、オレからも何か贈るよ。何がいい?」

「本当ですか?じゃあ…」




――デートして下さい――




周りに聞こえない小さな声で、頬を赤くしてそう言ってきた。


「は?デート?」

「はい」

「…遊園地とか?」

「進藤さんにお任せします。でも、あんまり子供扱いなデートは嫌です。進藤さんがいつも彼女と出かけてるようなコースにして下さい」

「そんなのでいいの?」

「はい。だって…ずっと碁会所でしか会ってないし…。もちろん進藤さんと打つのは一番楽しいですけど、誕生日ぐらいはちょっと違うこともしてみたいんです」

「一つ大人になったからね」

「はい、やっと12才です」

「分かった。じゃあ今度の休みに一緒にドライブ行こうか」

「はい!」


やっと12才…か。

先は長いな―――














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