●LITTLE GIRL FRIEND 6●
「そろそろ『進藤プロ』って呼ぶのやめない?」
「じゃあ…進藤五段?」
「ソレもっとやだな…」
「じゃあ進藤先生?進藤さん?ヒカルさん?」
「んーー、名前で呼んでほしいとこだけど、譲歩して『進藤さん』で」
「分かりました」
碁会所から帰る途中、進藤さんが言い出した呼び名。
僕のことも『アキラ』って呼んでほしい…と一瞬思ったけど、口に出せなかった。
アキラ、アキラさん、アキラ君。
親しい人は僕のことをそう呼ぶ。
でもちゃん付けされたのは始めてだから、これでもいいかな。
「進藤さんの彼女さん……喜んでくれました?」
「え?」
「誕生日だったんですよね?祝ってあげました?」
「んー…実はフラれた」
「…え?」
「私のこと好きじゃないでしょ?って聞かれて答えられなかった。図星だったのかも」
「でも、好きだから付き合ってたんですよね?」
「んー…ちょっと違うな」
「……?」
「でも、次付き合う子は好きな子にするよ」
「また誰かと付き合うんですか?」
「…まだまだ先になると思うけどね」
じっと優しい瞳で僕を見つめてくる。
何だか恥ずかしくて下を向いてしまった。
……いいな。
僕、進藤さんの彼女に立候補したいな。
でも9つも年下だし、まだまだ子供扱い。
対象外なのかも。
早く大人になりたいな。
「……予約してもいいかな」
「え…?」
「アキラちゃんが18歳になるまでに、オレ頑張ってタイトルホルダーになるよ。塔矢先生に認めてもらえるぐらいの棋士になる。だから……そしたら……」
――オレと付き合ってくれる?――
真っ赤な顔して耳元でそう告白されて、僕の頬も途端に赤く染まった。
僕?
僕と?
本当に?
「でも!悪魔で予約!18歳になるまでは今の言葉忘れててほしい」
「…え?」
「言いたくないけど、今オレがアキラちゃんを好きになることは犯罪なんだ」
「犯…罪」
「18になったら改めて言うから、それまで今のままの関係でいよう」
「………はい」
少し不服だけど…仕方ない。
進藤さんを犯罪者にしたくないし、困らせたくない。
今のまま…7年我慢しよう。
7年って長すぎるけど……
「こそっと付き合ったりは……ダメですか?」
「ダメダメダメ!無理無理無理!んなことしたら絶対抑えきかなくなるしっ!」
「そうなんですか?」
「うん!よし、じゃあこう言おう。アキラちゃんはまだ子供だからオレには物足りないんです。だから7年かけてじっくり成熟させて大人の女になって下さいっ」
「………はい」
進藤さんの言ってる意味がよく分からない。
抑えがきかないのに…物足りない?
意味が理解出来ないのは子供の証拠なのかな。
でも、どっちにしろいずれは僕と付き合ってくれるって言ってくれた。
すごく嬉しい!
18歳までに僕も頑張って大人の女に、そして一人前の棋士になろう―――
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