●LITTLE GIRL FRIEND 51●
こんなに幸せな朝は初めてだった――
まだ6時前だってのに、外が少し薄明るい6月の朝。暑くもなく寒くもない、過ごしやすいこの季節。
もちろん、梅雨に入るまでの僅かな間だけだけど。
でも例え梅雨が来ても夏が来ても…秋が来ても冬が来ても、ずっと一緒にいたいと思える女の子に、オレはようやく会えたんだ。
塔矢アキラ。
塔矢名人の一人娘。
囲碁界期待の星のプリンセス。
綺麗で美人で可愛くて頭もよくて、オレには勿体ないぐらいの女の子。
まだ13歳だ。
まだ13歳なのに…オレは本気で彼女に恋をしていた。
本気で好きだった。
出来ることなら今すぐにでも結婚したいぐらい。
でも、本当に結婚まで考えているのなら……まだ手を出すべきじゃなかった。
シーツについた赤い血が…オレの良心にズキッと痛みを走らせる。
まだ13歳の子の処女を奪ってしまったという現実が……オレを地獄へと突き落とす―――
「ん……進藤さん…?」
アキラちゃんが目を覚ました。
オレの部屋、オレのベッドにいること再確認した後、昨夜のことを思い出したのか…ポッと頬を赤く染めてきた。
「おはよ…アキラちゃん」
「おはよう…ございます」
「よく眠れた?」
「はい…すごく。疲れてたのかな…」
「………」
そりゃあ……疲れただろう。
初めてのエッチを終えた後だからというのはもちろんなんだけど……実はあの後の方が問題だった。
オレの性格上、ああなることは分かっていた。
アキラちゃんを一度でも抱いてしまったら……もう抑えが効かなくなるだろうって。
実際、効かなかった。
アキラちゃんが拒否しないのをいいことに、オレは二回目・三回目を彼女に求めてしまったんだ。
結局何回したんだろう。
結局何時頃までしてたんだろう。
うあああああ!!
何やってんだよオレ〜??!
「ごめんな…」
「え…?」
「一回だけだって自分から言ったくせに…オレ…」
「どうして謝るんですか?僕…すごく嬉しかったです。進藤さんにすごく愛されてる気がして…」
「愛してるよ、当たり前じゃん!でないと13歳の中学生になんか、間違ってもプロポーズなんかしないって!」
普通は常識で考えて…愛しててもしないと思うけど……
「…セックスって、僕の想像以上でした。やっと進藤さんの近くに来れた感じがして。やっと本当の彼女になれた気がして…すごく嬉しかった」
「アキラちゃん…」
「後悔なんてしないで下さい。今まで13年間生きてきて…僕、今が一番幸せです」
アキラちゃんが顔を近付けてきて、そっと…キスされた。
彼女の顔は本当に幸せそうだった。
そんな顔をされると…オレも嬉しくなる。
アキラちゃんがこんなに喜んでくれてるのなら、昨日したことは間違いじゃなかったのかもって、明るく思えてくる。
「オレも…幸せだよ」
オレの方からも、チュッとキスをしてみた――
「今日は学校だよな?家まで送るよ」
「ありがとうございます」
お互いシャワーを浴びた後、アキラちゃんを家まで送って行った。
もちろん、玄関前に堂々と車なんかつけれるわけないから、一つ角を曲がった所で車を停める。
「進藤さん、今日は対局なんですよね?終わったらまた囲碁サロンで並べてくれますか?」
「うん、分かった。絶対勝つから楽しみにしてて♪」
アキラちゃんが車から降りる前に、別れを惜しむようにもう一度キスをした。
また夕方には会えるのに…離れてる僅かな時間がすごく寂しく感じて。
きっとこの気持ちは結婚するまで続くんだと思う。
アキラちゃん…早く18歳にならないかなぁ―――
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