●LITTLE GIRL FRIEND 5●
「送って下さってありがとうございました」
「またね。おやすみ」
「はい。お休みなさい」
アキラちゃんを家まで送り届けた後、オレも家に帰った。
楽しかったさっきのひと時を思い返すと自然と顔が緩む。
はー…満足。
でも、不満。
本当はもっともっと打ちたかったし、もっともっと一緒にいたかった。
18時なんて早過ぎる。
まだ外明るいじゃん。
緒方先生の意地悪。
「…あーあ、次はいつ会えるんだろ…」
ホントに再来週?
ていうか携帯持ってないらしいから連絡手段ないし。
自宅にかけるのは絶対に無理だしなぁ…。
運がよければ碁会所に行けば会えるかも?
いや、絶対に会える気がする。
アキラちゃんはオレが来るのを待っていてくれるはず。
そう思うと何だか待ち遠しくて楽しみで、面倒臭い遠征も頑張れた。
週末のイベントの手伝いもそつなくこなして、彼女の誕生日も「おめでとう」とだけ言ってご飯食べたりエッチしたり半日一緒にいたら、はい終了。
「次、いつ会える?」
「えっと……」
別れ際の彼女のこの言葉にオレは言葉を詰まらせた。
「今週末は無理?」
「うん…仕事だから」
「仕事がお休みなのっていつ?」
「……ほとんどない。研究会とかもあるし」
遠回しに会いたくないと言ったようなものかもしれない。
本当は取ろうと思えば休みなんていくらでも取れる仕事。
でもこの彼女の為に取ろうとは思えなかった。
「…ヒカルって私のこと好きじゃないでしょ?」
「………」
「確かに告ったのは私からだけど、一年ぐらい付き合ったし、少しぐらい…好きになってくれたかなって今まで思ってたけど……」
「………」
「もう…終わりにしようか。さようなら」
あっさりとした最後。
確かに好きかもしれないと思った時もあった。
でも、恋とか言う言葉とは掛け離れた気持ちだったって今は分かる。
だって………アキラちゃんに感じる気持ちと全然違うし。
会いたいと思う度合いが違いすぎる。
もちろん、小学生に恋だなんて認めちゃ終わりだけど。
アキラちゃんが高校を卒業するまでは我慢しよう。
それまで碁に集中しよう。
今までただの食いつなぎの為に適当にやってたけど、それももう今日で終わりだ。
犯罪にならない歳になって、晴れて塔矢先生にアキラちゃんを貰いに行く時、渋られる程度の棋士じゃダメだ。
タイトルの一つや二つ、余裕で持ってる一流の棋士になろう。
「あ……進藤プロ」
「久しぶりアキラちゃん」
次の日―――碁会所に行くと、やっぱり待っていてくれた。
この笑顔を見ると、胸が異様にドキドキして緊張する。
これが恋なんだな〜なんて認めちゃいけないけど実感した。
「打とうか」
「はい!」
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