●LITTLE GIRL FRIEND 43●





「え?帰った…?」

「ええ。もうずいぶん前に」


指導碁を終えた後六階に行くと、既にアキラちゃんの姿はなかった――


今日の彼女の相手は去年入段したばかりの計盛二段。

まぁ…確かにアキラちゃんの相手になるような奴じゃないからな。

残念、とオレも棋院を出ることにした。


時計を見るともう3時半。

例の世界棋王戦もそろそろ終局してくる頃だろう。

永夏と緒方先生の検討でも覗いてくるか、と品川に向かうことにした。








「お、進藤だ」

「倉田先生、こんにちはー。勝ちました?」

「……」


ギロッと睨まれた。

あっちゃ〜〜安太善に軍配が上がったのか。

これ以上ふれないようにしよう…。


「えっと…永夏ももう終わりました?」

「ああ。永夏が勝ったみたいだな」

「へー」


でも、見渡したところ会場に永夏はいなかった。

緒方さんはいるけど。

検討…もう終わっちゃったのかな?





「緒方先生、こんにちは〜」

「よう、進藤」

「永夏との一局、どうでした?」

「ふん、さすが韓国の三冠ってとこだな」

「あはは…お疲れ様でした。ところで、永夏どこにいるか知りません?」

「さぁな。さっきアキラ君に対局を申し込んでたから、どこかで打ってるんじゃないか?」




え……?




「アキラちゃ…あ、いや、アキラさん来てたんですか?」

「ああ」

「分かりました、ありがとうございます。オレその辺探してきます」


でもこの会場にはいないし、横の大盤解説の会場にももちろん二人の姿はなかった。

棋士の控え室にもいないし……ホテルのカフェとかロビー・ラウンジ・バー・レストランも全部空振り。

うーん…ホテルの外に出たのかな。

でも打つだけなのにわざわざ出るか?


まさか……客室?

永夏の部屋?

はは、まさか。



「………」



でも何か胸騒ぎがする…。

すっげー嫌な予感がする。

アキラちゃんに限って心配ないとは思うけど、相手はあの永夏だしなぁ……




プルルルル
プルルルル
プルルルル…

取り合えず永夏の携帯にかけながら、最初の会場に戻ってみた。

くそっ…出ねぇし!



「進藤、永夏探してるんだって?見つかったか?」

「倉田さん…、いえ…。今携帯にかけてるんですけど全然出なくて…」


永夏は携帯をいつも胸ポケットに入れている。

鳴ってたら気付かないはずはないのに…。


「高永夏、今確か塔矢さんと一緒ですよ。さっき二人で打ちに出て行ったから。塔矢さんの携帯の方にかけてみましょうか?」

「え…?」


倉田さんの横にいた海王の制服を着た女の子が提案してきた。

て、あれ?

この子…前のイベントにいた子だ。

確かアキラちゃんが倉田さんとか言ってた子。

んん?

倉田さんと…倉田さん?

ああ…親戚か何かか。


「アキラちゃんは携帯持ってないはずだけど…」

「あ、昨日買ったんですよ。学校帰りに」

「え、マジで?番号教えてくれる?かけてみる」


080−1524−……

へー、これがアキラちゃんの携帯番号かぁ〜。

やった、これからはいつでも声聞けるし♪

メルアドも後で教えて貰おうっと♪

て、んな呑気に喜んでる場合じゃねーし!

電話電話…と。



プルルルル
プルルルル
プルッ…


『はい…』


お、繋がった。

本当にアキラちゃんの声だ♪


「アキラちゃん?進藤だけど」

『進藤さん?どう…して…』

「ごめん、番号倉田さんに聞いた。それより今永夏といるのか?どこで打ってるんだよ?」

『え?どこって…、…ぁっ』



??!



な、なんだ今の声?!

『ぁっ』って何??!

アキラちゃん??!












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